滅私 羽田圭介 新潮社 2021年11月






 

 物を捨てよ、心も捨てよ。ミニマリストの男が直面するSDGs時代の悲喜劇。必要最低限の物だけで暮らすライターの男。物だけでなく人間関係にも淡泊で、同志が集うサイトの運営と投資で生計を立て、裕福ではないが自由でスマートな生活を手に入れた。だがある日、その人生に影が差す。自分の昔の所業を知る人物が現れたのだ。過去は物ほど簡単には捨てられないのか。更新される煩悩の現在を鋭く描く。



冴津は、物を捨て、心も捨て、必要最小限の物で暮らしている。

物欲から解放された自由を描いているのかと思って読んでいたが、冴津は、この生活に疑問を持ち始める。


冴津は、もらったものを中も見ないで捨てる。その行為に唖然とした。

送り主のことは考えないのか?


物を極力持たない母親の子どもが夏休みに昆虫の標本を作っても、夏休みが終わると捨てられてしまうという。

一生懸命作った子どもにとって大切なものではないのか?

この母親は、物を持たないことの欲求が強すぎて、一種の病気のようにさえ感じた。


SDGSの今、考えるべきことが凝縮された本だと思う。


ずっと真面目な内容だったのに、

ラストの現実感のない展開には、ついていけなかった。



お気に入り度★★★★