霧をはらう

雫井脩介 幻冬舎 2021年7月






 

 病院で起きた点滴死傷事件。 入院中の4人の幼い子どもたちにインスリンが混入され、2人が殺された。 逮捕されたのは、生き残った女児の母親。 人権派の大物弁護士らと共に、若手弁護士の伊豆原は勝算のない裁判に挑む!



弁護士の伊豆原が病院関係者に事情を聞いていくくだりは、同じような話が続くので、ちょっと退屈に感じた。

しかし、その地道な聞き取りの中から、ひとすじの光を求めて真実を見いだしていく作業がどれだけ根気がいることかを実感させられた部分でもある。

伊豆原は、野々花の娘、由惟、紗奈のことも気にかけ、家を訪問したりしている。心配りのできる人だ。



無実を証明することは難しい。

伊豆原が弁護士としての信念を持って行動している姿がよかった。




そして、野々花の長女由惟の気持ちの変化・・・

妹の紗奈の体を傷つけようとしたことに母親を許せない。

世間からの嫌がらせを受ける日々。

紗奈は不登校となる。

伊豆原が手をさしのべてきても、壁を作る。

紗奈を守るのは自分しかないとひとりがんばる姿は痛々しい。


進学をあきらめ、働き始めた職場でのトラブル。

アイス事件(?)から、自分が無実でも自白してしまうことがあること。それを覆すことが難しいことを身をもって知る。

それから、母親の無実を信じるようになる。

そして、痴漢事件の目撃者として証言することを決意。


由惟が伊豆原に心を開き、こんな風に変われてよかったと思った。




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