清水杜氏彦 双葉社 2020年11月

 

 

1930年代のヨーロッパ。農家の娘モモは、中央政府の農業集団化政策や、大飢饉の発生によって故郷をあとにした。わずかな希望を持って都市に出るが、そこで待っていたのは、住民の相互監視と密告だった―。


過酷な人生。読むのもつらい。
でも、歴史の中で、こんな時代があったことを、忘れてはならないという意味でも、読む価値はある。

農家を
労働者たる「貧農」/中立的立場の「中農」/労働者の敵たる「富農」
という三つの階級にわける。

裕福でもないのに「富農」とされたモモ一家は、「貧農」たちから、憎まれるようになる。
憎まれるように青年同盟が、仕向けたのだ。
農業集団化に向けての卑怯なやり方。

姉は、密偵という罪をでっち上げられ捕まり、父は、匿ったという罪で捕らえられる。
弟は、飢饉のため、なくなる。
故郷に誰もいなくなったモモは、故郷の村を離れる。

食べるものを求めての毎日。
盗みをしないと生きられない生活。

その先に待っていたのは、隠れた敵を見つけて密告する役割を負う任務だった。
密告された人は、人民の敵として排除される。

食べるものがないということは、もちろん生死に関わることだけど、
それ以上に精神的につらかったのではないか。
モモに与えられた仕事は、心を無にしなければ、生きていけなかったのではないないかと思う。


モモは、弟に似た少年ユーリに一緒に来ると声をかけたり、なけなしの食糧を老いた女に分け与えていた青年グラヴを匿ったり・・・・・・・・
ひとりではないことが、モモの気持ちを和らげていたように思う。



モモの逃亡は、いつまで続くのだろう?
ただただ、痛い話の連続だった。

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