芦沢央 文藝春秋 2020年9月

 

 

平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。元不倫相手を見返したい料理研究家…始まりは、ささやかな秘密。気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。取り扱い注意!研ぎ澄まされたミステリ5篇。


ただ、運が悪かっただけ
病床の妻に、夫は、今まで心に秘めていた大工見習いとして働いていた時のことを話す。

埋め合わせ
教員の千葉は、学校のプールの排水バルブを閉め忘れ、プールの水が、抜けてしまっていることに気づく。

この話が一番気にいった。
プールの水を入れるのに、どれくらい時間がかかるのか、水道料金はいくらかかるのか、
必死に計算している様子が面白かった。
「埋め合わせ」という題名、なるほど、よくできている。

忘却
となりの老人が、熱中症で孤独死する。

老人がクーラーの電気代をケチったからなのか?


お蔵入り
映画を撮り終えた時、映画の主人公の岸野に薬物使用疑惑があるという。
このことが発覚すれば、映画が公開できなくなる。

映画の公開を願い行動する監督の大崎。それが、自分の首を絞めることになるとは!


ミモザ
自分の本のサイン会に元彼がくる。向かいバーで待っているというメモを見つけ会いにいくと、
お金を貸してほしいという。

元彼に浮かれている場合ではない。
相手は、用意周到に・・・・・・・・
何も言わない夫も怖い。



都合の悪いことを隠そうとしたことから、だんだん深みにはまっていき、どうしようもなくなり、身動きができなくなっていく。
怖~い話で、ゾクゾクする。

どれもオチが秀逸。


お気に入り度★★★★