無理

奥田英朗 文藝春秋 2009年9月

無理/奥田 英朗
¥1,995
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合併でできた地方都市、ゆめので暮らす5人。相原友則―弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしているケースワーカー。久保史恵―東京の大学に進学し、この町を出ようと心に決めている高校2年生。加藤裕也―暴走族上がりで詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン。堀部妙子―スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる、孤独な48歳。山本順一―もっと大きな仕事がしたいと、県議会に打って出る腹づもりの市議会議員。出口のないこの社会で、彼らに未来は開けるのか。

商店街はさびれ、大型ショッピングモールだけが繁盛している。歩けば誰かの知り合いに会う。夢も働く場所もない地方都市。「ジーニョ」と呼ばれるブラジル人の出稼ぎ労働者が増え犯罪も多くなっている。ゆめの市は、どこにでもありそうな場所だ。

そこで暮らす人々・・・・・・・・・・
生活保護を受けぬくぬくと暮らすシングルマザー。万引きをする人。新興宗教に頼ってしまう人。詐欺まがいのセールスをして生計を立てている人。県庁に戻るまでのつなぎだと時間をつぶす人。家庭内暴力を振るう人。息子に暴力を振るわれおかしいと気づきながらも息子の言いなりになっている親。売春をする主婦。浪費癖のある妻。昔の暴力団との付き合いを切れない政治家・・・・さまざまな人が登場するが、現在社会を反映しているといえよう。実際にこういう人はいそうだ。今の世の中の膿みを描き出している。

人それぞれの人生が浮かび上がり、誰もが、“もうこれ以上無理”という最悪状態に陥っていく。そして、これらの人たちが、ある事件で遭遇するのだ。こういう群像劇は好き。おもしろかった。


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