当院では診療とともに、生殖医療の発展に向けてさまざまな研究にも取り組んでいます。
今回は、当院の胚培養士の塚本らが執筆した研究論文が今年4月にReproductive Medicine and Biology (RMB)に掲載されましたのでご紹介したいと思います。
タイトルは「Differences in clinical outcomes between men with mosaic Klinefelter syndrome and those with non- mosaic Klinefelter syndrome」
「モザイク型クラインフェルター症候群の男性と非モザイク型クラインフェルター症候群の男性の間の臨床転帰の違い」
というものです。
デンマークにおける研究では、クラインフェルター症候群の発生率は出生男子500 ~ 1,000 人に約 1 人であると報告されています。
クラインフェルター症候群は、無精子症の一般的な原因のひとつです。
クラインフェルター症候群における染色体異常の約90% は、一般的な核型 (47、XXY)で、残りの 10% は、正常な核型とのモザイク (46、XY/47、XXY)、またはまれに高次の異数性のモザイク (48、XXXY; 49、XXXXY) を示します。
顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)は現在、クラインフェルター症候群に関連する無精子症に対して一般的に行われています。
いくつかの研究では、クラインフェルター症候群患者におけるマイクロ TESE の精子回収率は約 30% ~ 70% であると報告されています。
最近の 2つの系統的レビューでは、クラインフェルター症候群患者の精子回収率は 44% と 43% であり、 出生率は 43% と 47% でした。
しかし、核型に基づくクラインフェルター症候群患者におけるマイクロ TESE の臨床転帰はまだ報告がありませんでした。
そこで、今回の研究では、非モザイククラインフェルター症候群の男性とモザイククラインフェルター症候群の男性の臨床転記を比較することを目的としました。
その結果は、モザイクなしのクラインフェルター症候群グループと比較して、モザイク型ククラインフェルター症候群グループ(46、XY/47、XXY)は ICSI の結果が有意に良好でした(受精率72.2% vs. 96.2%、胚盤胞発生率 30.5% vs. 44.7%)。
これは、モザイク群において運動精子を獲得できる割合が高かった事が影響していると考えられました。
なお、精子回収群における出産率はモザイクなし群で58.8%、モザイク群で57.1%であり、従来報告されていたクラインフェルター症候群における出産率(35.9%)より高く、顕微授精の技術向上が現在の妊娠率向上に寄与したと考えられました。
この研究論文はインターネット上でも全文が公開されていますので、このような疾患をもつ患者さんの治療に役立つことを願っています。
論文の全文はこちらまたは下記からお読みいただけます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11097125/
これからも不妊治療に関するさまざまクエスチョンに対して研究発表を行っていきたいと考えています。
英ウィメンズクリニックのアプリ(記録道アプリ)ができました
英ウィメンズクリニックのインスタグラム公式アカウントはこちらから
アメンバー募集中です。アメンバーの申請はこちらから
メッセージはこちらからお送りいただけます。ご質問等もお待ちしております