前回まで、クロミフェンレトロゾールといった飲むタイプの排卵誘発剤についてお話してきました。

 

次回は注射するタイプの排卵誘発剤についてお話しする予定ですが、その前に番外編として、お薬の剤型(投与経路)についてのお話をさせていただこうと思います。

 

不妊治療に限らず、お薬にはいろいろな剤型(投与経路)があります。

 

代表的なものに

内服薬(錠剤やカプセル、粉薬など)

外用剤(貼り薬や塗り薬、座薬など)

注射剤(皮下注射、筋肉注射、静脈注射など)

があります。

 

 

ほとんどの方はひと通り使用された経験があるのではないでしょうか。

お薬はもちろん使わないで済むに越したことはありませんが、避けて通れないこともあるかと思います。

先に挙げた剤型の中には、好みや苦手なものがある方もおられると思います。

 

好みもあるかと思いますので一概には言えませんが、飲み薬だと手軽でいいなとか、注射は痛いからできれば避けたいなとか思ってしまいます。

 

ではなぜいろいろな剤型があるのでしょうか。

 

薬を使う目的は、病気や好ましくない症状を治療したり予防したりするためなのですが、薬が効果を発揮するためには目的の場所に必要な量を届ける必要があります。

 

投与した薬が体の中でどのようになっていくのかということを、薬物動態といいます。

そして、投与した薬がどれだけの割合で血中に入り全身循環するかをバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)という指標で表します。

 

 

(図は平田純生先生の薬剤師塾より引用させていただきました)

 

 

たとえば内服薬(飲み薬)の場合は一般的に胃腸などの消化管から吸収され、血液の中に入ります。

その後門脈という血管を通って肝臓に運ばれ、そこで最初の代謝(体に害のないものや排せつしやすい形に変えること)を受けます。

その後血液によって全身に運ばれて薬が働く場所まで届けられます。

 

そのような過程で内服薬には主に2つのハードルがあります。

 

ひとつめは、消化管からの吸収です。

そもそも、タンパク(ペプチド)構造の薬だと、そのものが消化されて分解されてしまいます。

水に溶けやすいもの、溶けにくいものなどの性質によっても吸収が変わってきます。

 

ふたつめは肝臓です。

全身へ行く前に肝臓を通って代謝されることを初回通過効果といい、これが大きなものは、全身に運ばれる頃には有効成分が形を変えられてしまうことになり、そのままでは飲み薬には向かないということになります。

 

これらのハードルの影響の少ないものが内服薬となります。

 

そのままでは飲み薬には向かない成分は、影響を受けにくい形に少し構造を変える工夫をする、内服以外の方法で投与することになります。

 

 

次回は、外用剤や注射剤など飲み薬以外の投与経路の薬物動態についてお話してみたいと思います。

 

 

 

以前の記事はこちらからお読みいただけます。

 

 

 

 

 

(文責:[生殖医療薬剤部門] 山本 健児 [理事長] 塩谷 雅英)

 

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