妊活中にコーヒーはダメという話を聞かれた事はありますでしょうか?

ネットを調べると色々な情報があって書いてあることは結構バラバラだったりします。

結局何を信じたらいいのか分からなくなってしまいますが、そんな時はどんな根拠を持って書かれた文章であるかを考えてみるのがお勧めです。

ネットではどうしても個人的な感想や体験談、あるいは商品の宣伝が多くなりがちですので、それが科学的に検証された結果かどうか判断する必要があります。
 

前置きが長くなりましたが、本日は妊娠とコーヒーについて科学的に調査した論文を紹介したいと思います。
Caffeine Intake and Delayed Conception: A European Multicenter Study on Infertility and Subfecundity (カフェイン摂取による妊娠の遅れ:ヨーロッパ不妊施設による他施設研究)
これはスペイン、デンマーク、イタリア、フランスなど多国籍の研究者達がデータを解析し、1997年にAmerican Journal of Epidemiology誌に報告した論文です。20年以上前のデータにはなりますが、未だに引用され続けている論文ですのでご紹介したいと思います。


この研究では25~44歳の女性3187人を調査して妊活を始めてから自然妊娠するまでの期間をコーヒー摂取量と共に調べています。

ちなみに、この調査には紅茶やコーラなどカフェインを含む他の飲料も同様に調査されていますが、コーヒーが圧倒的に多いため代表してコーヒーと表記されています。体外受精などのデータは含まれていません。


 

上の表はコーヒーの摂取量と妊娠までの期間を調査した結果になります。

これを見ると、全くコーヒーを飲まない群で妊娠まで6.5カ月かかったのに対して1日5杯以上コーヒーを飲む群では8.2カ月と1.7カ月ほど延長しているのが分かります。さらにコーヒーの種類やカップの大きさなどから推定したカフェイン含有量と妊娠までの期間を調べたのが下段の結果になります。こちらでは、さらに顕著に妊娠までの期間との相関が認められており、1日501mg以上摂取する群では8.9カ月摂取しない群に比べて2.4カ月延長しているという結果でした。

 

 

続いて、妊活を始めてからの期間ごとに妊娠していない方の割合を時系列でまとめたグラフが示されています。

これを見ると、時間の経過とともに妊娠していない方の割合は減っていますが、カフェイン摂取量が1日500mg以上の群では、妊娠していない方の割合がやや高い事がわかります。一方300~500mgの群では、300mg以下の群とほとんど差がなさそうです。


ということで結論としては、


カフェインの取り過ぎは妊娠までの期間を延長させる


でした。とはいえ、カフェイン500mgといったらコーヒー6,7杯ほどです。

日本人でそこまでコーヒーを飲まれている方はあまりいないのではないでしょうか。

ということで、そこまで神経質にならなくても良さそうでもありますが、客観的なデータとして参考にしていただければと思います。
ところで、カフェインは妊娠前よりもむしろ妊娠初期に影響があるという話もあります。

次回はカフェインが妊娠初期に与える影響についてお話ししたいと思います。


(文責:医師部門 江夏徳寿、理事長 塩谷雅英)

 

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