当院の江夏イーシェン医師の作成した臨床論文が生殖医療の国際誌Reproductive Medicine and Biologyに掲載されました。


Effectiveness of high-dose transvaginal progesterone supplementation for women who are undergoing a frozen-thawed embryo transfer. (凍結胚移植における高用量経腟プロゲステロン製剤の有用性)
オープンアクセス誌なのでこちらから誰でも全文確認できます。

 


https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/rmb2.12096

 

この論文では、経腟のプロゲステロン製剤を体外受精の融解胚移植時に使用する事に対する有効性を検証しています。プロゲステロン製剤は体外受精の際に黄体ホルモンの補充を目的として広く用いられています。製剤としては注射、経腟投与製剤、経口投与製剤の3種類がありますが、最も簡便な経口投与は吸収が悪く単独での効果は悪い事が知られています。注射は痛いので、経腟投与が最も広く用いられているのですが、その用量や効果については現在までしっかりとした報告がされていませんでした。

 

本検討では、経腟プロゲステロン製剤1200mg投与群と900mg投与群に分けて検討しています。海外の報告では600mg投与や300mg投与の報告が多いのですが、筋肉注射と併用している報告が多く、注射をできるだけ減らすためにやや高用量の設定となっています。

 

本検討では純粋な黄体補充療法の効能を見るため、良好胚盤胞(3BB)以上の移植症例を対象としています。表は結果を示していますが、妊娠率は1200mg群63.2%、900mg群57.5%出産率はそれぞれ40.4%、34.8%でした。意外な事に血中のプロゲステロン濃度は12.6μg/ml、13.4μg/mlと900mg群の方がやや高いという結果でした。

 

 

本検討では、さらに出産時の赤ちゃんの週数や出生時体重についても検討していますが、900mg群、1200mg群の間に差はなく、自然妊娠の一般データと比較しても、早産率や出生時体重に差は認めないという結果でした。


これらの事から、高用量経腟プロゲステロン製剤の有効性と安全性が確認されたという結論となっています。


生殖医療の現場は日進月歩で、次々と新しい知見が出てきます。当院も新しい知識を吸収しながら行ってきた治療を振り返り、結果を報告していく事によって、生殖医療の進歩に貢献したいものです。


(文責:医師部門 江夏徳寿、理事長 塩谷雅英)