今回はFertility and Sterility(2018年2月号)よりAMHに関する論文を紹介します。

Antimüllerian hormone as a predictor of live birth following assisted reproduction: an analysis of 85,062 fresh and thawed cycles from the Society for Assisted Reproductive Technology Clinic Outcome Reporting System database for 2012-2013.

Tal R, Seifer DB, Wantman E, Baker V, Tal O. Fertil Steril. 2018 Feb;109(2):258-265.

 

AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、顆粒膜細胞から産生され年齢とともに減少することが知られています。卵巣の予備能の指標となることが一般的に知られているため、当院でもAMHを測定し、治療方法の選択に役立てています。

 

AMH値と妊娠率との関連の報告は相反しており、凍結融解胚移植の結果とAMH値の報告が少ないことから、この論文ではSART CORS(アメリカ)という大きなデータベースを利用し、85,000件を超える新鮮胚移植と凍結融解胚移植について解析しています。

 

その結果、血中AMH値は新鮮胚移植、凍結融解胚移植のどちらにおいても出産率と有意に関連しており、多変量ロジスティック回帰分析にて年齢、BMI、種(白人・黒人)、移植日(Day3, Day5)、移植数をコントロールした解析を行ってもAMH値は出産の有無を予測する因子であることが示されています。ただし、ROC曲線解析によりAUC(下の説明参照)を算出し、AMH単独での出産有無の予測を数値で示した場合、予測の度合いは低いことが判明しました。さらに、このデータを単一胚移植に絞って解析した場合、凍結融解胚移植においては、AMH値単独では出産の有無を予測できないという結果でした。

 

AMHが低いと落胆される患者さんが多いと思いますが、低くても卵子が得られれば妊娠・出産出来ることがあります。とはいえ、もしもAMHが低いという結果が出た場合は出来る限り早くに不妊治療をスタートさせることをお勧めします。

 

【ROC曲線の見方とAUCについて】

出産群と非出産群の判別能力が高いほど、ROC曲線は左上に近づき、このROC曲線の下の面積( Area Under Curve : AUC )は1に近づきます。つまり、AUCが1に近いほど診断能力が高いことになります。

よって論文中のROC解析によるAUCは新鮮胚移植で0.631(単一胚移植で0.655)、凍結融解胚移植では0.540(単一胚移植で0.533)ですので、AMH値によって出産の有無を推測する精度は低いことになります。

 

Figure1:新鮮胚移植におけるROC曲線解析結果 (右側は単一胚移植)

Figure 2:凍結融解胚移植におけるROC曲線解析結果(右側は単一胚移植)

(文責:[研究開発部門]大月純子、[理事長]塩谷雅英)

 

にほんブログ村 赤ちゃん待ちブログ 妊活へ
にほんブログ村