萩尾 望都 A-A’―SF傑作選

「A-A'」
1981年の作品。
20年以上も前に描かれたとは思えないような内容だ。
もっとも萩尾望都の大抵のSF作品には、先進的な世界が広がっている。

これはクローン人間について描かれたもの。
オリジナルとクローンは似て異なもの、異ながら同じもの。
クローンにもオリジナルの記憶は移植されたのだが、
やはりAはA(オリジナル)しか愛せない。
そしてA'はA'(クローン)と恋に落ちる。
不思議なラブストーリー。


「4/4 カトルカース」
孤独なエスパーと、一角獣種の少女の魂の共鳴が、悲劇を引き起こす。
誰にでも感情は、あるのだ。
でも感情がなければ悲しみを感じないですむ。
どちらがよいのだろう。


「X+Y」
上記、4/4 の続編。
エスパーのモリは、亡くした愛する少女・トリルによく似たタクトと出会う。
モリは、タクトにトリルの面影を重ねて、恋をしてしまう。
しかしタクトは一角獣種。なかなかうまく感情の交流ができない。

モリが、タクトを過去の重い鎖から解き放ったとき、奇跡は起きる。

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他、7作品収録。


050803

萩尾 望都 スター・レッド

赤い星の光は悲しい予感。

未来の地球で、火星人ということを隠して生きる少女、星(セイ)。
赤い目、白い髪、強力な超能力。
いつかは火星に帰ることだけを切望するセイ。

そんなセイの前に運命の人物エルグが現れ、物語は急展開していく。
その迫力に息をのむ。

物語の先には悲しい運命が待っていた。

火星の最期。
エルグは永遠の年月を孤独に生き、セイへの愛を自分の生まれた「死んだ惑星」に刻み込む。
そしてセイは…


RPGの原案になりそうな壮大なSF。


 存在していれば なにかが見つかるかもと思った
 そして きみに出会った
 一つの星 一つの運命に 恋している少女
 …きみを 愛している

  (エルグの最期のことば)


20050606

萩尾 望都 半神

双子の姉妹、ユージーとユーシー。
ふたりは「ふたりでひとり」「ひとりでふたり」。

切り離されて新しい命を吹きこまれたユージー。
望んだ幸せの先にあったものは?
死んでいった妹に重なる自分の姿。

幸福とは何をもって定義されるのか。

光と闇、持つものと持たないもの。
裏と表があって世界は形成されている。

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文庫版の最後に収められている「金曜の夜の集会」。

この作品が私はとても好きです。
未来のない世界。選択肢はただひとつ。
残念ながら読者に救いはありません。
優しい絵柄にほっとするだけ。
ラストシーンにただただ号泣しました。


20050610

遠藤 浩輝 EDEN 5―It’s an Endless World (5)

EDENも何度かレビュー済み。
今回はソフィアについて。彼女のプロフは5巻で語られる。

ソフィアは天才ハッカー。
ハッキング時、顔の頬や頸の部分にワームをつなぐ。(最初、見てビビった)

見た目は美少女。しかし実年齢は41歳。
子どもを次々と産んでは捨てた後、サイボーグに転身。

自傷癖があり、自分だけで飽き足らず自分の子さえも切りつける。
痛みはあるが自分のものだと感じられない。

厳格な祖母、放蕩な母親、その二人の前では存在感のない父親。
機能しない家族の中で育ったソフィア。


IQテスト210、特に数学、物理は失点ゼロ。
授業態度、素行は悪い。奇声に奇行。
不特定多数の男性と性的関係を結ぶ。
数回の自殺未遂。傷害事件も多数。

自己抑制能力と情緒の欠落。社会生活不適格者。
これは発達障害関係者か?と思ったがそうでもないようだ。


 父は花の美しさを教えようとした。
 母は男との快楽を見せつけ続けた。
 祖母は老いのみじめさと病苦を植えつけようとした。
 三人とも傷つけあい否定しあった。


ソフィアは誰の側にもつくことはできなかった。
美しさも快楽も苦痛も、自分の子どもへの愛情すらわからなくなった。

ソフィアの才能は、ある組織に見出され、ハッカーとなる。
「これで私の未来が変わるかもしれない」と必死に取り組んだ。

そして母の最期に会いに行ったとき
死の寸前でも娘を愛そうとしない母と、同じことを繰り返している自分に気づく。
そして呪うのだ。


 誰も自分を愛さなかった。自分も誰のことをも愛さなかった。


何故か、サイボーグ化してから彼女は変わる。
関わった人間に、愛せなかった子どものかわりに母性愛を与える。


「実戦」の中で描かれる彼女の壮絶な頭脳戦は必見。(特に2巻)
鼻血を流し、電脳がシステムダウンする場面は、痛々しいが清々しい。
彼女は確実に、生きている。


050802

西原 理恵子 ゆんぼくん (2)


ゆんぼくんとかあちゃんののんびりした田舎の暮らし。

子供から次第に大人になるゆんぼくん。
見守り助言し、手を離していくかあちゃん。

読んでバカ笑いしてごうごう泣いた。


最初に読んだ時、私の子供はまだ小さかった。
今では反抗期のゆんぼくんと同じ年頃。

そのうち「うるせえ、ばばあ」と罵倒されるようになっても
ゆんぼかあちゃんのような、たじろがないばばあになりたい。
グレ息子を信じて何年も待っているような、強いばばあに。


そろそろ優しく温めるだけの時期は過ぎようとしている。
心の準備をしておこう。


041230