吉田 秋生 きつねのよめいり
敬愛する友人にいただいた本。
夏休みのお楽しみになれば、との心づかい。バカンスに持っていきたい一冊。
海辺の木陰で、のんびり寝ころんで読みふけりたい。
吉田秋生の初期の短編集。
表題作は比較的新しいかな(それでも昭和57年の作品)。
■きつねのよめいり
「みにくいあひるのこ」のようなお話。
でも狐らしくない狐のオジロは、心優しき仲間に囲まれ暮らしている。
彼は、自分は本当に狐なのかと悩み続けている。
ある日彼の正体がわかるときが来た。(しかし本人は知らない)
オジロを天涯孤独にさせたのも、
動物たちののんびり楽しい生活を奪ってしまったのも、
他ならぬ人間なのだなぁ、と少しばかり心が痛む。
ただ穏やかな明るいトーンで描かれているのが救い。
この作品は自然保護が主題ではないけれど、
少しだけ、同じ地球の仲間に思いをはせることができたのが収穫。
■風の歌うたい
・・・泣きました。
この作品も「みにくいあひるのこ」的ではあります。
みにくい幼虫は、実は美しい虫のこどもだったのです。
延々とくりかえされていく生命の営み。
でも自然の摂理など、難しいことは抜きで、読みました。
とてもすてきなファンタジーです。
■ざしきわらし
吉田秋生版、「座敷童」。
座敷童の童話は数あれど、その中でも、とても心にしみました。
大人になっても子どものころの心を忘れないって難しい。
大人になっても子どものままじゃ、それもおかしいし。
少年のようなおじさん、それは変(汗)。
だから、たまに、少年の頃の心を思い出す程度がいいのだと思います。
バランスのとれたこの主人公が理想ですね。
■十三夜荘奇談
吉田秋生さんは人間以外のものの気持ちがわかるのでしょうか。
五木くんの人間への憧れがよく表現されていると思いました。
主人公、大野くんの優しい心は、小さい頃の悲しい体験に基づくのですが、
トラウマは昇華させて、優しさはそのまま持ち続けてほしいと願います。
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他、9作品収録。
050806