くらもち ふさこ いつもポケットにショパン (3)

登場人物たちはみな誤解に縛られている。


ラスト近く、「麻子はシチューが得意です」
そう語る母親の得意そうな笑顔。
とても印象に残っている。


母親は本当に自分を愛しているんだろうか。
そんな母親への斜めな気持ちや誤解が
だんだんと氷解していく過程が、見事に描かれた。
読むほうでも、初めは鬼のように思えた母親が、いとおしい存在に変わる。


本題は、麻子とおさななじみのきしんちゃんとの再会ラブストーリー。
ひとの心の暗闇と光。

ふたりを結ぶ音楽が脇役ではなく丁寧に扱われていることに好感が持てる。
今にもピアノやオーケストラの音が聴こえてきそう。


シリアスなテーマだけど、笑える小ネタも満載。

私は、あの頃のくらもちふさこが大好きだった。


050806

 吉田 秋生 きつねのよめいり

敬愛する友人にいただいた本。

夏休みのお楽しみになれば、との心づかい。バカンスに持っていきたい一冊。

海辺の木陰で、のんびり寝ころんで読みふけりたい。


吉田秋生の初期の短編集。
表題作は比較的新しいかな(それでも昭和57年の作品)。


■きつねのよめいり
「みにくいあひるのこ」のようなお話。
でも狐らしくない狐のオジロは、心優しき仲間に囲まれ暮らしている。
彼は、自分は本当に狐なのかと悩み続けている。
ある日彼の正体がわかるときが来た。(しかし本人は知らない)
オジロを天涯孤独にさせたのも、
動物たちののんびり楽しい生活を奪ってしまったのも、
他ならぬ人間なのだなぁ、と少しばかり心が痛む。
ただ穏やかな明るいトーンで描かれているのが救い。
この作品は自然保護が主題ではないけれど、
少しだけ、同じ地球の仲間に思いをはせることができたのが収穫。


■風の歌うたい
・・・泣きました。
この作品も「みにくいあひるのこ」的ではあります。
みにくい幼虫は、実は美しい虫のこどもだったのです。
延々とくりかえされていく生命の営み。
でも自然の摂理など、難しいことは抜きで、読みました。
とてもすてきなファンタジーです。


■ざしきわらし
吉田秋生版、「座敷童」。
座敷童の童話は数あれど、その中でも、とても心にしみました。
大人になっても子どものころの心を忘れないって難しい。
大人になっても子どものままじゃ、それもおかしいし。
少年のようなおじさん、それは変(汗)。
だから、たまに、少年の頃の心を思い出す程度がいいのだと思います。
バランスのとれたこの主人公が理想ですね。


■十三夜荘奇談
吉田秋生さんは人間以外のものの気持ちがわかるのでしょうか。
五木くんの人間への憧れがよく表現されていると思いました。
主人公、大野くんの優しい心は、小さい頃の悲しい体験に基づくのですが、
トラウマは昇華させて、優しさはそのまま持ち続けてほしいと願います。

_________


他、9作品収録。


050806

  吉田 秋生 ラヴァーズ・キス (2)


実は吉田作品の有名なBANANA FISHにハマれなかったので、
この作品にも少し敬遠していたところがある。

でも読んでみたらどんどん引きこまれた。
画風も昔の細目とは違い、今風の顔つきになっている。
それで読みやすかったというのは大きな要因だ。


登場人物がとても魅力的だ。
表情がとてもいい。感情があざやかに細やかに伝わってくる。
特に藤井くんは私のいとこ(今度結婚するらしい)に似ている!
クールなハンサムボーイ。思い入れをこめて読み進めてしまった(笑)。


序盤は主人公・里伽子と藤井くんの恋がメインだったが、
読み進めると実はみなそれぞれが恋をしていることがわかる。

そしてみんな、心になにかしらの傷や痛みを抱えて生きている。
愛するひとの抱えるものを受け入れ、または無理に心を開けない思いやりで
恋を育んでいく。強くなっていく。


私は同性愛について否定も肯定もしない。
(昔から読んでいる少女マンガにはつきものなので)
だから彼らのそれぞれの恋心を、とてもいじらしくいとおしいと思った。


里伽子の妹、依里子の目を通して見た、
里伽子と藤井くんのキス(これがいわゆるLOVER'S KISS)が、
とても素敵で、こんな恋をしたいと思わされる。
このシーンを読んだひとは、きっとみとれてしまうと思う。

はい、みとれてしまいました(笑)


050803

 萩尾 望都 11人いる!

天才、萩尾望都。
このひとはどんなジャンルでも下調べを怠らないで描くようで、

設定に揺らぎがなく、納得させられる。
現在も作品を生み出しつづけているが、古臭さを感じさせない。
中古屋に出したくない作品を描ける、稀有な存在だと思う。


「11人いる!」はSFもの。
宇宙大学の試験で宇宙船に乗り込むメンバー。
しかし10人のはずがなぜか11人乗っている。 なぜ!?

そんな11人を待ちかまえるさまざまなトラブル。
時には反目しながらも、力を合わせて困難を乗り越えていく。


謎が解けた時、思わず膝を叩いてしまった。

様々な星から集まったメンバーは、個性あふれる魅力的な人物ぞろい。
その中でもやはりフロル(性別未分化!)が可愛らしかった。


続編はせつなくて哀しい物語。 泣けます。


20050606

萩尾 望都 あぶない丘の家

萩尾望都の比較的新しい作品。絵柄もポーの頃とは全然違う。
でもさすが萩尾望都とうならずにはいられない。

オカルトあり、歴史物あり、SFあり・・・よくぞアイデアが浮かぶものだ。
このテンションを枯らすことなくよく持続できるなあ。


義経と頼朝が登場する「あぶない壇ノ浦」が非常に面白かった。
私は日本史にはあまり興味がないのだが、これには引きこまれた。
子供向けの「マンガ日本の歴史」シリーズではなくて、
現代を生きる主人公の生活に歴史上の人物が登場するようなマンガは好きだ。
(この作品では、主人公が「どこでもドア+タイムマシン」もどきを使って過去に遡るのだが)


歴史は変えられない。
主人公がたとえ結果を知っていて、それを過去の人に告げたとしても。
だからこそ、現代の私達がこうして暮らしているのだけど。
絶えゆく源氏の二人が切なかった。


今年のNHK大河ドラマは「義経」だ。
大河アレルギーの私だけど、これも縁かもしれないので見てみようと思っている。


20050206