モミの木がイバラにいばっていましたが、でも・・・。
大きくて立派なモミの木が、足元のイバラを見下して言いました。
「おほん。わたしは世の中の色々に役に立つ。
例えば、神殿の屋根や大きな船を作ったり。
それに、すらっと背が高くて、実に美しい。
全く、偉大なモミの木さまだ。
・・・おや?
私の足元に生えているお前は、全身がトゲトゲで、みんなから嫌われているイバラだな。
お前に一つ聞くが、お前には一体、何の取り柄があるのだ?」
するとイバラが、こう言いました。
「確かに、私には何の取り柄もありません。でも・・・」
「・・・でも、なんだ?」
「あっ 、ほら、ほら。
オノを持った木こりがやって来ましたよ。
真っ直ぐこっちへ向かってきますね。
わたしたちに、何か用でしょうか?
いや、私はトゲトゲの嫌われ者ですから、きっと、あなたに用でしょう。
人気者は、大変ですね。
・・・あれ?
どうしました?
風もないのに急に震え出したりして」
おしまい