ある時アラジンのところに、あやしい男がやって来て言いました。
「ついて来い。いい所ヘ連れて行ってやる」
男は、悪い魔法使いです。
町から遠く離れた所まで来ると、男は呪文(じゅもん)をとなえました。
とたんに、地面に大きな穴が開いたのです。
「穴の奥にある、古いランプを持って来るのだ」
魔法使いはアラジンの指に、大きな指輪(ゆびわ)をはめました。
「怖がる事はない。これはお守りだ」
アラジンが穴の中へ降りて行くと美しい庭があり、木には色とりどりの実がなっています。
赤い木の実や、青い木の実や、白い木の実。
よく見るとそれらは全部宝石で、赤い木の実はルビー、青い木の実はサファイア、白い木の実はダイヤモンドです。
魔法使いに頼まれたランプは、簡単に見つかりました。
アラジンが戻って来ると、魔法使いはソワソワしながら待っていました。
「よし、ランプを寄こせ。早くしろ!」
怖くなったアラジンは、思わずあとずさりしました。
すると怒った魔法使いは、出口をふさいでしまいました。
「しまった、どうしよう」
アラジンは思わず、お守りの指輪をこすりました。
そのとたん指輪が太陽の様に輝いて、中から大男が現れたのです。
「わたしは指輪の魔神(まじん)です。ご主人さまが指輪をこすってくれたので現れました。ご用はなんでしょうか?」
「ああ、家に帰りたいんだ」
「お安いご用です」
そのとたん、アラジンは家に戻っており、アラジンに気がついたお母さんが言いました。
「おや、古いランプなんか持って、どうしたのだい?」
「あっ、これかい。拾ったんだよ。・・・うん? 何か書いてあるな」
アラジンが服のすそでランプを磨くと、ランプからもくもくと煙が出て来て、目の前に大男が現れました。
「わたしはランプの魔神です。どんなご用でもいたします」
「それなら、食べ物を持って来ておくれ」
「はい、かしこまりました」
ランプの魔神は、テーブルの上にごちそうを山盛りにしてくれました。
そのおいしい事といったらありません。
たとえ王さまでも、これだけのごちそうは食べた事がないでしょう。
ある日、アラジンは町でお姫さまを見かけました。
一目でそのお姫さまを好きになったアラジンは、そのお姫さまと結婚したいと思いました。
「お母さん、これを持ってお城に行ってよ」
アラジンは、穴の奥から持ち帰った宝石を出してきました。
アラジンのお母さんが持ってきた宝石を見て、王さまは驚いて言いました。
「これは素晴らしい。だが、この様な宝石を四十の皿に山盛りにして持って来れるかな? それが出来れば、姫をやろう」
お母さんからそれを聞いたアラジンは、ランプの魔神を呼び出しました。
「宝石を山盛りにした四十の皿を、出してくれ」
「かしこまりました。ご主人さま」
やがて宝石を山盛りにした四十のお皿の行列が、ご殿にやって来ました。
それが王さまのお気にめして、アラジンはお姫さまと結婚する事が出来ました。
アラジンは親切でしたから、国中の人から好かれました。
けれども、あの魔法使いだけは、アラジンを憎んでいました。
魔法使いはランプ売りに化けて、アラジンのご殿にやって来ました。
ちょうど、アラジンは留守です。
「古いランプと新しいランプを、取り替えませんか?」
何も知らないお姫さまは、魔法のランプを渡してしまいました。
魔法使いは、さっそくランプの魔神を呼び出して言いました。
「姫を、遠い国に運んで行け!」
次の日、王さまはご殿もろともお姫さまが消えていたのでビックリ。
アラジンはバツとして、首を切られる事になりました。
「お願いです。四十日ほど待ってください!」
許しをもらったアラジンは、お姫さまを探して歩き回りました。
ある日、疲れ果てて手を洗っていると、指輪の魔神が現れました。
手を洗う時に、知らず知らずに指輪をこすっていたのです。
「ご主人さま、お呼びですか」
「おおそうだ! お前の事をすっかり忘れていた。すぐに姫のところへ連れて行っておくれ」
「お安いご用です」
指輪の魔人は、すぐにアラジンをお姫さまの元へ連れて行ってくれました。
アラジンが現れると、お姫さまがかけ寄って来て言いました。
「あなた。古いランプは、魔法使いのふところにありますわ」
「そうか。では、魔法使いから取り返そう」
アラジンは魔法使いに眠り薬を飲ませてランプを取り返すと、ランプをこすってランプの魔神を呼び出しました。
「眠っている間に魔法使いを世界の果てへ追い出して、ぼくたちとご殿を元の所に運んでおくれ」
「かしこまりました。ご主人さま」
ランプの魔神に運ばれたご殿は、たちまち元の所に戻りました。
こうしてアラジンは、お姫さまと一緒に幸せに暮らしたのです。
そして世界の果てへ追い出された魔法使いは、二度と戻って来る事はありませんでした。
おしまい