むかしむかし、あるところに、クマとオオカミが森にいました。
どこからか、美しい鳥の歌声が聞こえてきます。
「あれは鳥の王さま、みそさざい(→スズメ目ミソサザイ科の鳥。非常に小さく、翼長約5センチ)だよ」
オオカミが言いました。
「へぇ、鳥の王さまのお城ってどんなだろう。見てみたいな」
オオカミがとめるのも聞かず、クマはみそさざいの巣(す)をのぞき込みました。
ちょうど、王さまの鳥もおきさきさまの鳥も、出かけていていませんでした。
クマは、るすばんをしている子どもの鳥を見てわらいました。
「アハハハ。ずいぶんとみすぼらしいお城だな。それに、王さまの子どももさえない子どもだよ」
みそさざいの子どもたちはおこって、王さま鳥にそのことをいいました。
王さま鳥は、すぐにクマをよびだして言いました。
「よくもわたしの子どもたちをバカにしてくれたな。たたかって決着(けっちゃく)をつけよう」
それで、クマとみそさざいは、たたかうことになりました。
クマは、ウシやウマやロバやシカなど、森の動物を味方につけました。
みそさざいは、鳥やアブやハチやハエなど、空を飛ぶもの味方につけました。
たたかいの前の日、アブはキツネがクマにこんな話をしているのを聞きました。
「ぼくのこのフサフサしたしっぽを立てたら、みんなドンドンすすんでたたかうことにしよう。でも、しっぽを下げたら急いで逃げる合図だよ」
アブはすぐに、みそそざいのところに飛んでいって、今の話をみんなに話しました。
さて、たたかいの日が来ました。
スズメバチはみそそざいに言われたとおり、キツネのしっぽをねらいました。
ハチに思いっきりさされて、キツネはビクッとしましたが、しっぽを下げてしまったら、なかまが逃げてしまうので、痛いのをがまんしてしっぽを立てていました。
でも、二度目にさされたときには、少しだけしっぽをおろしてしまいました。
三度目にさされたときは、もうがまんできずに、キツネはしっぽを巻いて逃げ出しました。
これを見て、動物たちもみんな逃げ出しました。
こうして、鳥のなかまはたたかいに勝ったのです。
クマは、みそそざいの親子にあやまりました。
みそさざいの親子はそれでやっと気分がよくなって、クマをゆるしてあげました。
おしまい