1月29日 アンデルセン童話・馬車で来た十二人のお客さま | ☆かおりキャンドル®☆CANDLE ARTIST☆手作りキャンドルのお花のお部屋☆ フラワーキャンドルアーティスト☆きょうちゃんのブログ☆

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蝋で花の芯から作り、花びら一枚一枚全て手作業でお花のキャンドルに仕上げていく工房での出来事を綴ったブログです(*^。^*)  

むかしむかしの、風一つないしずかな夜です。
 美しい星たちもこおってしまいそうな、さむいさむい夜です。
♪キンコンカンコーン
 十二時を告げる鐘(かね)が町中になりひびくと、
 バーン! バーン!
と、いきなり花火が打ち上げられました。
 誰かが、まどを開けてさけびました。
「新しい一年よ。ようこそ!」
 すると、つぎつぎにまどが開き、大人も子供もほほえみあって、新年のあいさつをかわしました。
 さあ、それからは乾杯(かんぱい)をくりかえす声や笑い声や歌声、それにダンスの音楽が町中にあふれました。
 新しい一年が始まったばかりのこの町へ、馬車がやって来ます。
 乗っているのは、全部で十二人でした。
 馬車は、町の門の前で止まります。
「やあ、おはよう」
 馬車の中から紳士(しんし)が、町の番人に声をかけました。
「おはようございます。みなさん、旅券(りょけん)をお持ちですか? 町に入るには、旅券を見せていただく決まりになっています」
 番兵がそう言って馬車のドアを開けると、皮のコートを着た紳士がおりて来ました。
「もちろん持っていますよ。ぼくはあなたに新しい朝をあげましょう。ぼくはね、金貨や銀貨、ダンスバーティーやおくり物を人にあげるのが好きなんです。でも、あげられるのは三十一回だけですよ。だって、ぼくにはそれしか夜がないのです。あ、失礼。もうしおくれました、ぼくは一月という者です」
 次に、大きなタルを持った男がおりました。
「わたしゃ、みんなを喜ばせるのがとくいでして。カーニバルを開いてにぎやかにやりましようぜ。なんてったって、わたしの月は二十八日、まあ、一日おまけしてもらう年もありますがね。短い月日はうんと楽しく! わたしはカーニバルの二月でさあ」
 三番目におりてきたのは、やせた男の人です。
 ボタンの穴に小さなスミレをかざり、だまってうつむいています。
 その後から、
「おいおい。三月くん、さっさと行ってくれよ。でないと、君の大好きなお酒が逃げちまうぜ」
 そう言って、三月の背中を押して出て来たのは四月でした。
「いやあ、今のはウソだよ。エイプリルフールだよ。ぼくの月は雨降りだったり、お日さまがごきげんだったりと、へんてこな月でね。結婚式やらお祝いごともたくさんあって、あっという問に過ぎてしまうんだよ」
 おしゃべりな四月を横目で見ながら、緑のドレスをきた美しい女の人がおりて来ました。
「番人さんにも、どうぞ神さまのおめぐみがありますように」
 そう言われて番人は、思わずほほを赤くしました。
 この女の人は、五月の歌姫(うたひめ)です。
 緑の森の小道を歩きながら、やさしい声で歌うことを仕事にしていました。
 次におりてきだのは若い奥さんで、弟の七月をつれていました。
 姉の六月は、ごちそうを作ってみんなを楽しませます。
 弟の七月は、荷物といったら海水ボウシと水泳パンツ。
 たったのそれだけです。
 見るからに元気そうな男の子でした。
 そして、六月と七月のお母さんの、八月婦人もおりて来ました。
 八月夫人はあつがりで、太っていて汗ばかりかいていますが、とても働き者です。
 その後から出て来たのは、絵かきさん。
 この人が絵の具箱を持って森へ行くと、たちまち木々の葉っぱは、赤や黄色に変わってしまいます。
 絵かきさんは九月でした。
 続いておりて来たのは、十月の地主(じぬし)さん。
 地主さんの考えていることは、畑の作物のことだけです。
 番人にも、さっそく畑仕事のことを話し始めましたが、
「エヘン! エヘン!」
 十一月のうるさいせきに、じゃまをされてしまいました。
 十一月はひどい鼻かぜで、ハンカチではたりないので、なんとシーツを持っておりて来ました。
「木を切りゃ、かぜなんてなおっちまうんだがね。俺はいつも、木を相手にしていたいのさ。そうそう、早くかぜをなおして、みんなにスケートグツを作らなきゃなんねえんだ。おれのあとの月は、スケートが楽しいからね」
 最後に、火ばちと小さなモミの木をかかえた、十二月のおばあさんがおりて来ました。
「クリスマスまでには、このモミの木も天井までとどくほど大きくなるでしょうよ。そうしたらあかりのついたローソクや、金色のリンゴやおもちゃをかざってやりますよ。それにね、そのモミの木のてっぺんにかざった天使の人形が、金紙のつばさをヒラヒラさせながら、みんなにキスをしてまわるんですよ」
 番人は新しい馬車をよんで、十二人のお客に言いました。
「旅券はおあずかりしておきます。一人ずつ新しい馬車にお乗りください。ただし、この町にいられるのは、一人一月だけの約束です。一月たったら、みなさんがどんなことをしたのか、わたしにどうぞ話して聞かせてください。では、一月さんからどうぞ馬車へ」
 一月はかるく頭をさげて、新しい馬車に乗り込みました。
 さて、一年たったら、十二ヶ月のお客からどんな物語を聞かせてもらえるのでしょうか、たのしみですね。

おしまい

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