4月21日 大分県の民話☆馬の友だち☆ | ☆かおりキャンドル®☆CANDLE ARTIST☆手作りキャンドルのお花のお部屋☆ フラワーキャンドルアーティスト☆きょうちゃんのブログ☆

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蝋で花の芯から作り、花びら一枚一枚全て手作業でお花のキャンドルに仕上げていく工房での出来事を綴ったブログです(*^。^*)  

むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。

 ある日の事、きっちょむさんは馬にたきぎを積んで、町へ売りに行きました。
「たきぎ! たきぎはいりませんか」
 こう言いながら町を歩いていると、欲張りで有名な風呂屋の主人が、きっちょむさんを呼び止めました。
 ちなみにこの風呂屋は、以前、きっちょむさんをだまして馬ごとたきぎを手に入れた、『餅屋の値段』の餅屋の友だちです。
 もっとも、その餅屋は、後できっちょむさんに、痛い目にあわされましたが。
「おい、そのたきぎは、一わ、いくらだ?」
「はい、一わ、十文でございます」
「そうか。では、その馬に乗せてあるのを全部買ってやろう。みんなでいくらになる?」
「はい、全部買ってくださるなら、五十文にしておきましょう」
「よしよし。では、五十文を受け取れ」
「ありがとうございます」
 値切りもしないで買ってくれたので、きっちょむさんは、ほくほくして馬の背からたきぎを降ろしました。
「では、みんなで、六ぱでございます」
 すると風呂屋の主人は、怖い目をギロリとむいて、口をとがらせました。
「なんだこら、まだ残っているではないか!」
「えっ? そんなはずはありません」
「馬の背に、くらが残っているじゃないか!」
「えっ?」
「おれは、馬に乗せてある物を全部買う約束をした。だから、馬の背に乗っているくらも買った事になる。どうだ、文句があるか!」
「あっ、これは、しまった!」
 きっちょむさんは、思わず叫びました。
「どうだ、きっちょむさん、おれは餅屋とはひと味違うぞ。わはははははは」
 風呂屋の主人は、餅屋の仇討ちをしてやったと、手を叩いて大喜びです。
(そうか、あの餅屋と風呂屋は友だちだったんだ。これは油断したな)
 さすがのきっちょむさんも、素直に馬からくらを下ろして、こそこそと帰って行きました。

 でも、これで引き下がるきっちょむさんではありません。
 その翌日、きっちょむさんがひょっこり風呂屋ののれんから首を出しました。
「おお、きっちょむさん! なんだ、また、たきぎを売りにきたのか」
 主人は勝ち誇った顔で、番台の上から声をかけました。
 するときっちょむさんは、にっこりして、
「いや、今日は別の用事で町へ来たのだが、あまりにも寒いので風呂に入りたいと思ってね。風呂賃は、いくらだい?」
「風呂賃は、十文だよ」
「そうか。しかし、おれだけじゃなくて、友だちも入りたいと、外で待っているんだ」
「じゃ、二人で二十文だ」
「でも、その友だちは、とても大きい奴で」
「はっはっはっ。いくら大きくたって、風呂賃に違いはないよ」
「そうか。じゃあ、友だちを連れてくる」
 そう言ってきっちょむさんは、風呂賃の二十文払って外に出て行きましたが、やがて、パカパカと大きな足音がしたかと思うと、番台の前に馬の顔が現れて、
「 ヒィーーン」
と、いななきました。
 風呂屋の主人は、飛び上がって驚きました。
「うあっ! きっちょむさん、乱暴をするな。馬は外につないでおきな」
「なに、この馬も一緒に湯に入るんだよ」
「ば、馬鹿な」
「だって、風呂賃は、ちゃんと払ってあるだろう」
「では、きっちょむさんが言っていた、大きな友だちとは、この馬の事か?」
「そうさ。この馬が、おれの大きな友だちさ。では友だち、一緒に入ろうか」
「ま、ま、待ってくれ!」
 風呂屋の主人は、すぐに番台から飛び降りると、
「きっちょむさん、おれが悪かった。風呂賃もくらも返すから、どうかそれだけは、かんべんしてくれ」
と、平謝りに謝ったそうです。

おしまい

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