京都へ商売に行く江戸の男に、物知りの男が注意をしました。
「京へ商いに行くそうだが、くれぐれも油断するなよ。京の商人はみんな曲者で、とんでもない値段をふっかけてくるからな。だから京では、何でも値切ったほうが良いぞ。例えば二両の値段なら、本当は一両の品だと思え」
「おお、では、その通りにしよう」
男は喜んで、京都へ出かけて行きました。
さて京都に着くと、やっぱり教えられた通り、何でもかんでも、とんでもなく高い値段です。
「なるほど、言われた通り、ここは恐ろしいところだ。でもこれはみな、半分ずつに聞いておけばよいのだな」
それからしばらく立つと、男にも京都の友だちが出来ました。
「お前さんの名前は、何と申す」
江戸の男が聞くと、京の男は、
「六兵衛(ろくべえ)と、言いまする」
それを聞いた男は、こう思いました。
(さてさて、京の人は、かけ値をするから、これはさしづめ三兵衛だろう)
「して、お家は、どのぐらいの広さでございます?」
「五間(→一間は、1.8メートル)の間口(まぐち→家の正面の長さ)の家でございます」
(よしよし、ならば本当は、二間半の間口の家だな)
「して、何人で暮らしておいでですかな?」
「ただいまは、わたし一人でございます」
(よしよし、これも半分か。・・・おや?)
江戸の男は、京の男をじろじろながめまわしました。
(はて、どう見ても半分には見えぬが)
江戸の男は、思わず首を傾げて尋ねました。
「して、もう半分は、どなたでございます?」
♪ちゃんちゃん
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