3月28日のお話★バイオリン弾きのおじいさん★ | ☆かおりキャンドル®☆CANDLE ARTIST☆手作りキャンドルのお花のお部屋☆ フラワーキャンドルアーティスト☆きょうちゃんのブログ☆

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蝋で花の芯から作り、花びら一枚一枚全て手作業でお花のキャンドルに仕上げていく工房での出来事を綴ったブログです(*^。^*)  

むかしむかし、あるところに、貧しいバイオリンひきのおじいさんがいました。
 おじいさんが若い頃は、この町の人気者でした。
 バイオリンをひきながら美しい声で歌を歌うと、たちまち人が集まって来て、たくさんのお金を投げてくれたものです。
 でも今では、おじいさんのバイオリンを聞いてくれる人は誰一人いません。
 おじいさんはペコペコのお腹をかかえながら、町はずれの小さな教会へ行きました。
 おじいさんは中へ入ると、マリアさまに言いました。
「マリアさま、わたしのバイオリンを聞いてくれる人は、もう誰もいません。せめてマリアさまだけでも、お聞き下さい」
 おじいさんは心を込めてバイオリンをひき、歌を歌いました。
 むかしと少しも変わらない美しい声が、教会の中に響きます。
 するとおじいさんの目の前に、ポトリと、マリアさまの金のくつが片一方が落ちてきました。
「ああ、ありがとうございます。お優しいマリアさま」
 おじいさんは涙を流して喜ぶと、そのくつを近くの店へ売りに行きました。
 ところが店の人は、ボロボロの服を着たおじいさんを見て、このくつは盗んだ物に違いないと思いました。
 そしておじいさんは、役人のところへ連れて行かれました。
「わたしは盗んでいません。これは、マリアさまから頂いた物です」
 おじいさんがいくら言っても、役人は聞き入れてくれません。
「このうそつきめ!」
「よりにもよって、教会の物を盗むなんてとんでもない!」
 役人はそう言って、おじいさんに死刑を言い渡しました。

 次の日、おじいさんは町はずれの広場へ引かれて行きました。
 そして町はずれの小さな教会の前に来た時、おじいさんが言いました。
「最後のお願いです。もう一度だけ、マリアさまの前でバイオリンをひかせてください」
「いいだろう」
 おじいさんはマリアさまの前に行くと、ゆっくりとバイオリンをひき始めました。
 バイオリンの美しい音色が、教会に流れます。
 それに合わせて、おじいさんは心を込めて歌を歌いました。
「ああ、何てきれいな声だろう」
 町の人たちは、うっとりと耳を傾けました。
 すると、その時です。
 マリアさまの足が動いたかと思うと、残っていたもう一方の金のくつが、ポトリと、おじいさんの前に落ちたのです。
「あっ!」
 みんなは、いっせいにマリアさまを見上げました。
 マリアさまは、いつもと変わらないやさしい顔で立っていました。
 やがて町の人たちは、おじいさんのバイオリンに合わせてマリアさまの歌を歌いました。
 こうして、おじいさんは死刑にならず、町の人々からとても親切にされたそうです。


~オーストリアの昔話~


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