“あなたの奮闘を私は見ていますよ”
吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞など数多くの賞を受けたある作家は、福岡県でメンタルクリニックを開業する精神科医でもある。
診療所の看板には「心身の健康よろず相談引き受けます」とあるそうだ。
そのせいか、診療の場が身の上相談になることも多い。
生活のままならない状況を聞き続け、“困りましたね”と一緒に悩むことしかできない場合もある。
だが、「精神医療はこれが王道ではないか」と語る。
人の知らない所で苦労するのは誰もがつらいが、それを知っている人がいれば、耐えることができる。
患者も「あなたの苦労はこの私がちゃんと知っていますという主治医がいると、耐え続けられます」と(『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』朝日選書)。
友の悩みを聞く際、的確な助言や答えが見つからない場合がある。
すぐに解決できない問題であっても、じっくり耳を傾け、思いを知る努力を続けたい。
大切なのは“あなたの奮闘を私は見ていますよ”との聞く側の姿勢であろう。
「植えた木であっても、強い支柱で支えれば、大風が吹いても倒れない」。
同苦の心で寄り添い続ける“強い支え”でありたい。