早いもので、PW装備777の運航再開から1年になるんだそうです。

さて、飛行停止になる前から、どの機体がどのエンジンを装備しているかについて資料によって情報が違います。外見上の識別が困難なので(そもそもどの機体がどのエンジンなのかわからない時点で識別はできませんが)今回は数ある情報の中から、正しい情報へと絞り込んでいこうというわけです。

 

まずは資料により記述が異なる一例を。

777-246 JA8983

こちらの機体は資料によってPW4077だったり4074だったりします。

777-281 JA711A

こちらの機体はネットでのみPW4084という記述が見られます。

 

主に4074,4084,4077の間で取り違えが起こるようです。

今回は雑誌に依拠、ネットを参考(確認用素材としても使用)に調査してみました。

 

 

 

・そもそもPW4084という型はあるのか

個人的な話、4084という型に聞き覚えはなかったのですが、ちゃんと存在はすることがわかりました。VNの772から発煙した際、その報告書に記載されていたので間違いはないと仮定します。

まずは音を聞いてみます。

https://www.youtube.com/watch?v=3wL4y0-n4K8

スプールアップのときに「ポーン」という燃焼器に起因する(確証はありません。そういう説を見ただけですのでその点ご留意願います)音が聞こえるので、4074/77とは別系統と判断しました。ちなみにこの音が発生するのは4084以上の出力を持つエンジンで、4090シリーズ(4074D含む)が該当します。

なので、JA711A〜714Aが4084であることは音から判断して違いそうです。

 

・日航,JAS

最新3機がPW4077である以外は4074であるといのが最も多く見られる傾向です。

ただし「日本の旅客機2018-19(イカロス出版)」巻末フリートリストではJA007D〜010D,771J〜773Jが4077ということになっています。

念のため外見を比較してみます。

↑JA8985

↑JA8978

上の写真はいずれもPW4074(と思われる)ですが、機体によって排気口付近のパイロンパネルの塗り分けが異なります。

↑JA771J

この機体はJA8978と同じ塗り分けですがPW4077を装備しているはずです。

 

 

・全日空の初期機

全日空の場合、日航と比べてややこしい側面があります。その混乱の原因はER/非ERを問わないエンジン混在とインター機のドメ転です。とりあえずは最も正確と思われる定説に基づき各型式をピックアップします。

↑JA744A,PW4074D

↑JA702A,PW4077

↑JA8969,PW4074

↑JA709A,PW4090

 

ざっとあげただけでも4種が運用されており(一部は運用終了)、日航よりも混乱を極めます。

まずJA8197〜701AがPW4074,JA702A~JA706AがPW4077,JA707A〜710Aが4090である点は記述(「日本の旅客機」ほか)と音源を照らし合わせても、事情を鑑みても合理的です。

続いて773を挟んで導入されたJA711A〜714Aについてエンジンに言及する資料を見つけられていません。主にPW4074/77/84という説を目にしましたが4084説はさきほど否定した通りなので、4074または4077に絞り込めます。

一旦ここは未解決として、続く715A〜717AはPW4090でありこれは音源からも間違いないと考えられます。ただしこの3機についてはドメ転に際し音が変化していることから、4074または4077に換装されたことが推測されます。707A〜710Aはドメ転後もエンジン音に変化がないのでPW4090がそのまま、または4074Dへの換装が考えられます(それこそ音だけで言えば4084の可能性もありますがわざわざここで運用歴のないエンジンに替える目的はよくわからないので除外しておきます)。

 

ただし4077と4074の識別はできるのかという点ですが、コレは非常に困難です。何しろどの機体がなんのエンジンなのかはっきりしていない時点で

それが難しいのは明らかです。

 

まずは先ほどのパネル塗り分けパターンから規則性があるか判定していきます。参照写真はエンジン交換の可能性を考慮して就航から数年内を目安にしました。

 

<パネルパターン凡例>

A,全塗装

B,前部のみ塗装

C,後部のみ塗装

D,全無塗装

 

おおむねPW4074はA、PW4077はDという規則性がありそうです。ただしJA701Aと702Aだけはコレが反転しています。

ただし月間エアラインや航空ファンなどではJA702Aからは国際線仕様であり…という記述があった(航空ファンの方は記憶ですが)ので、JA702A~706AがPW4077であったことは別間違いとは思えません。となると、エンジンではなく製造時期的な違いが考えられます。

JA701AのLNは77、702Aは75でした。コレほど番号が近いとレジが製造番号順序と逆転してしまうことはあります(787は大混乱過ぎでした)から、周辺の機体を含めてLN順に並べ替えると…

 

JA8968/38

JA8969/50

JA702A/55

JA701A/57

JA703A/81

JA704A/131

 

なるほど、コレならAからDにデザインが切り替えられたことは十分にあり得ます。たまたまエンジンに切り替え時期が近かっただけ、なんですかね。

念の為日航も比較しましょう。

 

<パネルパターン凡例>

A,全塗装

B,前部のみ塗装

C,後部のみ塗装

D,全無塗装

 

 

旧JAS導入分のうちJA8978からはDであることがわかりました。JA8978のLNは79なので製造順はJA701Aの直後ということになります。

ですからDであることは全くおかしくありません。JA8977は45なので当然Aですね。ここからもパイロンパネルはエンジン型式との関連性はないことがわかります。ちなみにJA010Dでは左右でコレが異なり、左がD、右がBというパターンもありました。

 

海外の機体を調べてみると初期のUAの777はPW4077ながらAでした。

海外に目を向ければ、初期のPW4090装備機だっているはずです。Dパターンに切り替わる前のPW4090がKEにいたので見てみましょう。

Aですね。この時点でパネルタイプAにPW4074,77,90が合致してしまったので、結論としては

 

「パイロンからエンジン型式は特定できない」

 

ということです。ちなみにPW4074Dで見られたCの塗り分けについては、LN247(JA707A)からはこちらに変更されていたのでこれも型式判定には使えません。なおこの仕様の初期の機体は既に煤けてしまってDと見分けがつかなくなってしまっています。

 

これだけ調べた挙句に残円ながらパイロンではエンジンの型式が判定できませんでした。また何か思いついたら試してみたいところです。