『理想が高すぎる!!』
それがトラウマの一つになってたのはいつ頃からだろうか…。
男女数人いつも集まる友達もいた。
仲良くは出来ててもただの友人でしかみれない女友達も…。
自分が好きだと思える女性は、尊敬心が胸に芽生えるタイプ。
同情しても、恋人になんかなれるもんじゃい。
同情されるのも同じ…。
女らの裏話は関屋から聞こえた。
東京にいるあたりの二十代前半
もちろん結婚前の事
友人である関屋が、会社の寮としているアパートの一室での話である
その頃は、裕臣のファンでもある一人の子に冗談で裕臣の真似をしてみせた。
『明日、僕と結婚しうよ~』
冗談と分かっているのに
『誰があんたみたいな人に声かけられなきゃなんないのよ~バカにしないでよ!』
『冗談言ってんの、分かんねーのかよっ!!見た目可愛いと思いやがって!』
『鏡と中身と相談して冗談言いなっ!!
理想が高いって自慢して女が喜ぶとでも思ってるのか?
理想より女を低く見るお前なんか、みんな嫌ってるよっ!!』
レスカの会の半分ぐらい十人近くが周りに集まって見守る中…。
その子の手が僕の頬に飛んで来た。
鞭で打たれたような鋭い痛みと痺れ…
関屋が心配して近づき、そのままヤツのアパートに二人で帰って来てた。
訳分からずふさぎ込んでる僕に、関屋がい声をかけてきた。
『お前の噂話知ってるか?』
『えっ?』
『…佳代子(仮名)って女が、お前の事をさぁレスカの女らにしゃべってたみたいでさぁ。』
『何を?』
『あの女と最近付き合ってたんだって?』
『うん、すぐ振られたけどね…』
笑いながら、何の気無しに答えた。
『お前が即、振られたのは噂で聞いてたんだが…、恋人の前なのに理想の女を並べて頭に来たから彼女からお前を振ったとか。
子供が出来たのに知らん顔でレスカに来てるとか、自分の理想と合わないから付き合えないから別れるとか、なにやらたくさん並べられてさぁ~。
レスカ①のひどい男みたいな糞悪い噂になってたぜよ…。』
冤罪どころか、こっちが替え玉にされた被害者である。
僕は呆れ、腰が抜けたような気持ちになってしまった…。
『まぁいいよっ!
原因分かってしまったなら~』
笑って答えるしかなかった僕は、糞面白くもないながら何となく理由が分かった。
二十一になったばかりの短大卒、通信教育で〇〇大入学してた浮かない表情の佳代子が妊娠してる噂はあった。
先々週、話を聞いた時は嘘だと言う。
軽く『今日から恋人になって~』と言われ
裕臣直伝の冗談かと
『ほいよ~』
と軽く返した。
結局、お互いの理想の異性を話すぐらいでレスカの会は解散の時間を迎えた。
数年後テレビでみる【ねるとん紅鯨団】みたいな告白して振られ、噴水に飛び込むような事をやってる男もいたっけ。
確かにキャンパスじゃないが青春だった!
電話さえ無くて、公衆電話と歩くと電車でしか通信手段ない僕。
佳代子は自宅の電話さえ教えてくれなかったから、連絡なんか勿論取れない。
僕にしたって、佳代子の裕臣の冗談言葉なんか本気にしてないし。
土曜夜勤だったので翌週のレスカの会はお休みして寝てた。
明けて関屋に電話したとき翌々週の会場は練馬の豊島園に決定してるとか。
井の頭線の電車に揺られ着いた先に待っていたのは悪夢であった。
何ヶ月か前に佳代子がよく口に出してた言葉…
『初体験は裕臣君じゃなきゃ嫌ぁ~♪』
その言葉を思い出したが、裕臣に聞くのは疑いを向ける事…多分違うと思ってた。
関屋も
『お前と佳代子としたのか?』
なんて聞いて来るわけがない。
僕も童貞ではないが、アパート引っ越しの時の初体験の彼女以外は知らなかった。
しかし、先週レスカで誰の子か知らないが
僕をダシにして可哀ぶってカンパ集めてたらしい佳代子には…全く。
怒るより呆れた!!
冗談ではハンパな事出来ない僕を知ってる関屋は
僕の顔を覗き込んで、噂がデマだったと確信したに違いなく、気をきかせて湿っぽい話を他にズラした。
『うちのアパートに居る二人の上司でさぁ、一人ムショに先週入ったよ~♪
二人とも浮気相手居て別れたらしいが~♪
もう一人は噂だけどなっ♪』
性的な事よりムショに入った話の方が、男的に食いついた僕だった。
ムショに入った男は高卒だが体育会系。
その相手は今で言う帰国子女、営業先の課長の奥さんで一人子持ち。
学歴が高いからと課長を見下げるような、わがまま放題のせいかソリが合わないらしい。
それがどうしてくっ付いたのか知らないが、別れる切れるで男が復縁脅迫したらしいと。
男の言いなりになるもんかと、帰国子女の奥さん性格上いつものような高ビー言葉で反対に脅したらしい。
『取引も仕事も家庭もぶち壊されたくなかったら、おとなしくしやがれ!!』
と一喝されて男は激情したまま相手の家に乗り込んだそうな。
『そりゃあ間違いなくムショ行きだよなっ!!』
自分の糞面白くない気分など、すっかり忘れて聞き入ってた。
結局、家庭置いてムショに入った男は取引先から苦情行って会社もクビ。
奥さんと二人の子供は会社の温情でアパートに今は居るが、まもなく新潟の実家に帰るらしいと。
女も子供一人連れて離婚したが、離婚理由が離婚理由だからお得意の高ビーなんか通用しない。
関屋も会った事あるらしいが…
女一人で仕事しながら子育てするにしても、あの性格で仕事続くのだろうかとおそれいってた。
結婚前に翻訳の仕事してたらしいが…。
調停離婚なのか協議離婚になったか知らないが、関屋自身が別な上司から聞いた話では…
慰謝料の相場が何百万だとか裁判所の提示例を教えられたそうな。
取引先の課長さんは日頃から旦那としても男としてもボロクソにけなされてた、今まで溜まっていた不満から親権と慰謝料要求の他に
「養育費は受け取りません。生活出来ないと判断した時は養育権も放棄します。」
との一筆を裁判所に求めたらしい…
関屋自身は次男坊。
高崎市から家庭離散で親戚に世話されて中卒から会社入った。
長年働いているようでもまだ二十歳過ぎだったが、僕がお邪魔してると…隣の部屋の専務さんが機嫌良い時なんか赤提灯にたまに連れて行ってくれた。
じゃない時は関屋の部屋呑みで…大人っぽく酒持参。
決して自ら部屋には誘わない専務さん、実は恐妻家らしい。
酔うほどに蘊蓄述べる専務さんに教えられた【男の心得】の一つに
『女と付き合うなら、男としてのプライドを大切に出来る女かを両目開けて…結婚したら片目つぶる気持ちでなっ♪ わっはっは♪』
関屋には、家庭離散するような男じゃないと尊敬の念もあったが裏事情のダシにも使われてたらしい。
専務さんが出かける休日に、声かけられた関屋も外出してくれるように頼まれてた。
用事もないからブラブラ散歩するよりはと、いつものレスカのオフ会に参加してるんだとか。
ソルジャー関屋らしい生き方であった。
横浜緑区から千歳烏山に向かう電車に乗って、酔い気味な頭に微かに残ってた疑問が湧いていた。
世の中のそんな大人の世界を諭してくれた上司がマメな関屋に教えてくれた一言が理解出来ないでいたらしく、帰り際の僕に聞いてきた。
『大人の男と女のけじめ…ってさ、
本音を譲歩して相手を思いやれる相手じゃないと恨み辛みしか残さない。
だから、最初にルールを確認しとくんだ。
って言ってたんだけど…なぜ?』
『お互いの本音の譲歩?って何だろう…?』
安アパートに着くまでは電車が珍しくすいていた休日。
緑っぽい東横線電車の横長椅子に斜めになっていた。
『専務も都内をたまに女性と歩いてるの見かけたんだけど…いつも同じ女性で笑顔の可愛い清楚な感じだったなぁ~♪』
『清楚? それも理想の女性の話に出してたんだが胸糞悪いっ…!! もうレスカもトラウマっ…行かないっ!!』
『専務さぁ最近 家から出ないから終わったのかもなぁ…前は結構出かけてたのに。』
『んっ?』
『大人の男と女のけじめ…つけたって事かもな!?』
そう言いながら、関屋はニヤリと笑い、片目をつぶって唇に人差し指を当てた。
…【完】…
』
』
お願いします
貴女以外に考えらんない�』