
¥662
Amazon.co.jp
リンダとともに過ごした高校時代。
卒業式の翌日の記憶喪失。
そして大学での完璧な香子との出会い。
以来、笑ったり泣いたり悩んだりしながら、楽しく輝かしい大学生活を送ってきた万里。
季節は秋、おまけんの活動の集大成でもある学園祭が迫っていた。しかし、その一大イベントを前に万里の記憶に異変が起こり始め、それを目の当たりにした香子はある決意を固める。
変わってしまった日常の中で、柳澤や千波、二次元くん、そしてリンダはそれぞれの想いのもと、行動する。
みんなの関係と、香子と万里の輝かしくもままならない恋の行方は!?
―――――――――――――――――――――――――――――――
香子から突然別れを告げてしまった万里。その後、呆然として動けないでいた万里の元に現れたのはなんと香子の父で、車で自宅まで送られることに。ショックで立ち直れない万里の前に通りかかったNANA先輩は普通でない様子の万里を心配し、話を聞こうとする。「分かってないのは自分だった」と自己嫌悪に陥りつつも、万里を励まそうとNANA先輩は言葉を紡ぐ。その姿と内に込められた優しさに感動しました。
次の日、駅のいつも待ち合わせていた場所にいつもと変わらない様子で香子が待っていた。その事実に万里は心底安心し、喜びを噛みしめる。それが勘違いだと知らずに。昨日告げられた別れは何かの間違いだったんだ、と思いたい気持ちは分かるけど、現実はそう甘くない。香子、柳澤、二次元、千波の五人でお昼の学食を共にしていた最中。万里は香子から「私たち、別れたの」「これからは友達として付き合っていきましょう」と皆の前できっぱり言われてしまい……?
怒ったり、泣いたり、悩んだり、悲しんだり。まさしく情緒不安定だとしか思えない万里の姿は見るからに痛々しく、可哀想だった。でも、今の記憶が消えそうになっているのだからそれも仕方ないんだろうね。何気ない会話の途中やおまけんでの活動中、待ち合わせに待っている間など、前触れなく過去の記憶が蘇り、今の記憶はそれと入れ替わるように沈んでいく。何もかもが「分からない」と怯える、万里の感情はやけにリアルに伝わってきて、ちょっと怖くもあった。あと香子やリンダの、重病人に対するような優しい態度が見ていてなんだか辛かった。
過去の多田万里と今の多田万里。記憶が戻りそうになり、様々なことを忘れてしまいそうになりながら、万里はなんとか日常を過ごしていく。記憶が戻り何も分からなくなった時のために、記憶喪失になってから今まで生きてきた自分に関すること、家族や友人達のこと、文化祭でおまけんの部員として踊ること、などをメモに書き記していく。
恋人としての香子を失い、そこからようやく立ち直れそうだった。しかし悪いことは重なる。おまけんでも問題が起こり、次第に友人達との関係も危うくなっていく。そして香子は万里からの頼みに対して、付き合う以前のような友達関係に戻ることを条件として提案する。香子の真意を知ったとき、心にくるものがきっとあるはず。
万里の告白を聞き「自分はあいつにとって何だったのか」とショックも受けた。一度は友情というものを見失った。けれど、柳澤は再びおまけんの部室を訪れる。「お前が忘れても俺がここにいる。お前が帰る場所を俺は守り続けるから、安心して行ってこい」と万里を送り出すやなっさんのその言葉に自然と涙がこぼれた。なんだよこれ……こんなん反則だよぉ……(涙)
個人的に「こうなればいいなぁ」と思っていた結末に近いものだったので、すごく満足しています。一番最後のあれはどういうことかイマイチ分からなかったけども…(笑)
きっと二人はこの先何があっても乗り越えられる、そんな気がする。おまけんの活動、友人達やリンダ、香子との関係。どこを取っても良い終わりだったと思える素敵な最終巻でした。竹宮先生、こつえー先生、お疲れ様でした……!