現在、刑法改正議論で、「性同意年齢」という言葉で、「同意年齢」をどのように考えるのか。現在の刑法では、

第177条

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

 

という規定があります。ここでいう「十三歳未満の者」に対しては、同意があっても、犯罪になります。つまりは、「十三歳」になれば、同意があれば、罪にならないことになります。このところを「十六歳」にしてほしいという意見があります。

 

 この議論と同様なことは2004年の東京都の条例改正議論でも話題になっていました。もちろん、今の時点での関心とは違っていたはずです。当時は、刑法改正議論には発展していませんし、「Me Too」運動もありません。教師の生徒への性行為は単純に「性暴力」とみなされることもありませんでした。その意味では、時代によって、権利の視点が変わっていいのだろうとは思います。

 

 よく、現状のままであれば、「加害者の視点」ということが言われます。しかし、私の考えとしては、法律は、一般的に、加害者の視点でも、被害者の視点でもないと思います。通常の人が、何かしらの権利行使を行うことが前提です。被害論を語る場合は、例えば、刑法改正ではないのではないかと思っています。性犯罪被害者基本法のようなものを作ることがよいと思っています。

 

 もちろん、地位関係利用の問題とか、年齢差の問題は、刑法にあってもいいのではないかと思っています。通常の人を想定した場合、教師と生徒、特に評価権のある教師の場合は、地位関係利用になります。同じように、監督やコーチと選手も評価権があります。こうした関係性によって、「通常」を逸脱するという考えはあってもいいと思っています。

 

 年齢差の問題も同じことが言えます。「十三歳」が性行為をするような人との出会いを想定すると、少なくとも「二〇歳」の成人がすることは、「通常」を逸脱しているのではないかと思えます。何歳差までを許容するかの問題かなと思っています。しかし、「十三歳」同士、あるいは「十六歳」との性行為は「通常」の関係でもありえるのではないかと思えます。

 

 もちろん、この「通常」は、私の考えであり、議論はなされるべきだと思いますが、「十三歳」同士が性行為をした場合に、即、犯罪と見なす議論は、現実的ではないと思えます。仮に、いま議論されている「十六歳」まであげようとすると、それまでの「十六歳未満」で性行為をし、それに伴う性的なトラブルを抱えた場合、実際問題として、大人に相談しにくくなります。「同意年齢」を考える時、性的被害を前提として語るのはどうなのか、と今でも思っています。


 以下は、2004年9月23日当時のブログに書いたもの


です。



 

中学生はセックス禁止?

 中学生はセックスしないこと!
 東京都がこんなことを条例で規制しようとしている。いま、セックスに関する法律はどうなっているのでしょう。刑法では、13歳未満であれば、同意があっても強制わいせつ罪が成立します。ということは、13歳以上であれば、同意があればよしとする「性的自己決定権」があるわけです。
 ただ、各都道府県はさまざまな条例をつくり、未成年の性行為を制限しています。いわゆる「淫行規定」です。「淫らな性行為」を禁止したり、「買春」を禁止したりしています。なお、18未満の買春の場合は、「児童買春・児童ポルノ処罰法」の制定で、全国一律に禁止となっています。
 こうした性行為に関する規制があるにもかかわらず、さらに規制をするというのです。しかも、「中学卒業まではセックスをさせないように」と。こうした規制に意味があるとすれば、罰則を設定したときだけでしょうが、都庁内の「保護者に努力義務」という意見であれば、あまり意味をなさないでしょう。
 しかしながら、罰則があろうがなかろうが、この条例によって、委員会が考える性感染症や「望まない妊娠」が防げるのか。防げるとしたら、いかなる根拠なのか。
 たしかに、安易な性行為は、性感染症や「望まない妊娠」を増やす可能性は否定できません。しかし、その手立ては条例規制ではなく、性行為のあり方をどのように伝達すべきか、ということではないのか。「中学卒業まではセックスしない」となると、いまよりもさらに、中学段階でセックスを含めた性教育はタブー視されることでしょう。一方で、中学生の情報収集力は高まっていて、それこそ、どんな情報を得るかわからず、何が正しい情報なのかということを伝達する場でさえ、失うことになりかねない。
 都は、条例改正で有害情報規制を強化しました。今度はセックスの規制までしようとするのか。規制すれば、どんどんアンダーグラウンド化しないのか。規制だけで乗り切れると思うのは、どこからくる発想なのか。すごく疑問だ。


 中学卒業まで「性」規制を 都の委員会初会合で意見 [ 09月22日 19時54分 ] 
共同通信

 東京都の「青少年の性行動について考える委員会」(座長・加藤諦三早大教授)の初会合が22日、都庁で開かれ、中学卒業まではセックスをしないよう都条例で規制すべきだとの意見が委員の1人から出された。
 都庁内には、中学生以下が安易な性行動をしないよう保護者に努力義務を課すべきだとの意見もある。委員会は性感染症や「望まない妊娠」から青少年を守るため、年内をめどに対策を提言する予定で、規制の是非が焦点の一つになる。
 冒頭、都青少年総合対策推進本部長の竹花豊副知事は「この10年で中高生の性交経験率が急増、人工妊娠中絶などの問題が看過できなくなった。大人社会の真剣な取り組みが必要だ」と述べた。
 http://www.excite.co.jp/News/society/20040922195452/Kyodo_20040922a408010s20040922195459.html