NHKスペシャル「若者たちに死を選ばせない」を視聴した。
 

 

「若者たちに死を選ばせない」ってタイトル。なんだか違和感。若者たちが積極的に“選んでいる”わけではないと思うし、“選んだ”若者たちについての思いがどこか感じない。見る前から嫌なイメージだった。一言で言えば「選ばせない」ってやっぱり「上から」な感じがする。でも、若者の自殺について20年くらい取材してきたので見てみたんです。


早朝や夕方、夜に自殺を試みていることがデータでわかる。相談窓口について。夜、特に深夜の相談がないのは以前から言われているが、なぜ広がらないのか。できないのか。するとしたらどんな工夫をすればいいのか。ヒントは24時間対応のSNS相談「あなたのいばしょ」だろうと思います。


データは、警察庁の自殺統計原票をもとに分析している。たしかに、時間帯や場所、手段は客観的なものですから、警察が調べても、どこが調べても同じだと思いますが、理由については、どのくらい調べたのか、誰に聞いたのかでも変わってくる。


子どもの自殺の場合は遺書の有無、遺書ありの場合、なにが書かれているか、他には遺族や学校からの聞き取りだろう。通院している場合、精神科医に聴取する場合もある。友人や恋人まで聞き取るのは少ない。ちなみに、仮に不適切な指導があったとしても、直後の学校対応としては「指導は適切だった」あるいは「調査中」とすることが一般的な対応。そのため、警察データには上がってこない。


私が取材で「理由がわからない自殺はあるのか?」と聞かれたことがあった。思い当たる理由がなく、一年間かけて、友人や家族に聞き取りに行っても分からず、訪ねてきたことがあった。話を聞いてもやはりわからない。ネットにもヒントはなかった。


「自殺統計原票」を元にした分析も一定の成果はあるが、あくまでも警察の捜査によるもの。警察は自殺となると深い捜査はしない。自殺とわかった場合は、警察内部でチームを作るか、一定の捜査権限をもつ別の公的組織を作るしかない。でもそこまで予算かけられるか。原因を知るにはちゃんとしたシステムに乗せないといけない。どこまで予算をかけられるか。


番組は謎な終わり方をした。もやもやする感じで終わった。なぜ高校生の親への研修を取り上げたのか。もちろん研修はしないよりしたほうがいい。しかし高校生はむしろ親から自立していく時期だ。むしろ秘密を持つことのほうが成長している。


そんな時期になって、話を聞こうというスタンスになっても遅すぎる。登下校中に自殺が多いとなれば、親が接触していない時間帯だし、早朝は、通勤通学の時間プレッシャーがあるのが一般的。誰もが話を聞く余裕がない。そんな早朝や登下校の時間帯に親ができることはあるのか。


SNS相談を含む、窓口の有効性について検証はしないのかな。厚労省がSNS相談を推進し始めたのは、座間市男女9人殺害事件後。しかし、その後も若者の自殺は減っていない。そろそろSNS相談の有効性をきちんと検証すべきではないか。そうした疑問を持っても不思議ではないが、番組ではそうした視点で取り上げてはいない。


10代の自殺のキーになるのは学校だろう。警察統計では自殺の原因・動機としては「学校問題」が多い。国組織では文科省だよね。「いじめ・自殺対策等専門官」を置いているが、なぜそこには踏み込まなかったのかな。進路や学業の悩みが多いとも言われていたが、そこへのアプローチは番組ではなかった。


ただ、カメラの前で子どもや友達をうしなったことについて話をしてくれたことは勇気がいることだろうし、内容的にももっと聞いてみたいと思わせた。また、長野県の大学生たちのグループトークがあったが、あそこから、あそこでは語れない内容を引き出してほしかったが、残念ながらそうしたアプローチをしたようには見えなかった。


なんかもやもやした。そのため、clubhouseで、もやもやした話をしてしまった。