私は、子ども・若者のインターネットにおける居場所について、関心を持って取材を続けてきている。インターネットは生きづらさを吐き吐き出せる居場所として機能する面がある一方で、そうした心情が犯罪と結びつく面もある。

 最近でも、無職の女性が池袋のホテルで殺害されたが、逮捕された男子大学生との出会いはツイッターだった。女性が自殺志願者を募集する投稿をした。それに大学生が「手伝う」と応じた、とされている。女性は、生きづらさの心情を露呈したことで、事件の被害者となった。

 こうした事件は稀に起きる。拙著『ルポ 平成ネット犯罪』(ちくま新書)は、「見える化」された数々の事件を振り返ったものだ。平成の終盤で、男女9人が殺害された座間事件が起きたが、前出の事件と地続きでもある。

 本書のサブテーマは、生きづらさのはけ口としてインターネットは成り立つのか、成り立つとすればどのような条件か、というものだ。単に規制しさえすればよし、ということでもない。今後も、急速に発展、変化していくインターネットとの付き合い方のヒントを考えたいとの思いで上梓した。

 以下、本書の一部を転載する。

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「監禁王子」と呼ばれた理由

 精神的に人を支配した事件としては監禁王子事件が忘れられない。次々と女性たちを監禁したとして、平成17年(2005年)5月、警視庁は札幌市南区の25歳、Aを逮捕した。被害者は兵庫県赤穂市の19歳、井上貴美(仮名)。Aが彼女を足立区のマンションに104日間にわたって監禁。心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、東京地検は監禁致傷罪で起訴した。平成14年(02年)に起こした同種の監禁事件(懲役3年、執行猶予5年の判決)での保護観察中だった。保護観察所が所在を把握してない不祥事だった。


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