LINEが始めた「オープンチャット」というサービスがあります。LINEのアプリ内で誰もが自由にチャットルームが作れます。テーマは当初は自由ですが、現在では、出会い系になるものや自殺系は制限されているようです。

 

 私が作ったチャットルームは、「いばしょ、生きづらさ、いじめ、不登校、虐待、自殺」というものです。はっきりとしたコンセプトがあるわけではないのですが、これらに関して、自由に発言をしたり、やりとりをしようとするものです。ただし、一つだけルールを設けましたが、「他人を傷つける内容は書き込まない」ということです。これを作ったのは理由があります。

 

 気になったチャットルームをウォッチしていんですが、そのなかで、フレーミングが起きました。簡単に言えば、喧嘩です。チャット内の喧嘩でも生産性のあるものの場合は、見ている側もエンタメとして機能することがあります。しかし、そうではないものは、不快なだけです。そのチャットルームの喧嘩は、言った・言わない、謝った・謝らないというものに終始していました。そのため、どのようになってしまうのだろうか、と思っていたのですが、結局、チャットルームがなくなってしまいました。

 

 チャットルームがなぜ亡くなったのかはわかりません。考えらるものは、管理人自身がチャットルームを閉鎖したということです。チャットルームを作った人や、その人に共同管理をまかされた人だけが閉鎖する権限があります。しかし、仮に自分で閉鎖をするのなら、一度ぐらいは、チャットルーム内で「閉鎖します」と書き込んだりするものですが、一度も管理者はそんな発言をしていません。

 

 もう一つ考えられるのは、LINE側から制限がかったということ。そのチャットルームは「心中」という言葉が付いていました。初日から「自殺」や「心中」の名前がついたチャットルームがいくつかありました。私のチェットルームもその一つです。そのため、それらのチャットルームをウォッチしようと参加していました。すると、「自殺募集」などのあからさま名前のチャットルームはすぐに運営側は削除されました。

 

出会い系投稿だらけ… LINEオープンチャット即制限

 LINEが不特定多数とやりとりできる新機能「オープンチャット」を始めたところ、不適切な投稿が相次ぎ、すぐに大幅な利用制限に追い込まれた。わいせつな内容やがわ売春を疑わせる内容の投稿も多く、LINEは一部の機能を停止。現在は新規の利用が難しくなっている状態だ。

 オープンチャットは、LINEのアプリ内で「トークルーム」というグループを作り、最大5千人とメッセージを送受信できる機能。これまでもグループトークの機能があったが、電話番号にひもづけて登録したIDを使って非公開でやりとりするもので、オープンチャットは公開されたトークルームに匿名で参加できる点が大きく異なる。

 19日の開始直後から、わいせつな内容の投稿や「エッチ」「出会い」「自殺」といった言葉を含むタイトルのトークルームが作られるなど不適切な行為が相次いだ。SNSでは「犯罪の温床になりかねない」「無法地帯」といった懸念の声も出ている。

 

https://digital.asahi.com/articles/ASM8Q5RJ1M8QULFA00R.html

 

 もう一つ、このLINEオープンチャットの特徴としては、NGワードが設定されていることです。何がNGワードなのか、運営側は明らかにしていません。そのため、何がダメなのか試していまっした。Twitterでも話題になっていたので、その言葉を含めて、試したのです。例えば、「ちんちん」「チンチン」はNGです。数秒で消されてしまいます。「沈沈」と漢字にすると、書き込めました。また、私が管理するチャットルームに関係のあるものとしては「自殺」や「死にたい」もNGです。書き込むとすぐに削除されます。そのため、人によっては「自✖️」や「✖️にたい」とか書いていました。

 

 さらに、連絡先交換がダメのようで、アルファベットでIDを打ち込むのは禁止のようで、そもそも、書き込めません。ならば、IDを一文字ずつ打ち込めばどうか?と考えたのですが、アルファベット一文字も書き込めません。ならば、Twitterアカウントを教えたらどうか?と思ったのですが、TwitterのURLを打ち込むことはできません。URLを打ち込むことが制限されているようです。

 

 これらの機能制限は日によって違っていますので、運営スタンスがまだ確立されていないようです。

 

 そもそも、LINEがチャットを開設すれば、このような混乱があるのは想定されるはずです。もちろん、LINEは、それを想定しているためか、チャットルーム内で、特定の個人にメッセージを送ることができません。これは、タイムラインでのやりとりで、自分が登録してないユーザーにメッセージを送れないのと同じです。カカオトークはこれができてしまうので、出会いツールになるはずですが、なぜか、そこまで日本では普及しませんでした。

 

 しかし、これまでyahoo!チャットやMSNチャットが閉鎖れたり、サービス終了になった歴史を振り返れば、LINEのようにユーザーが多いところがチャットを開設すれば、同じような道をたどることは想定できるはず。LINEには、そうしたチャットの過去を知っている人がいなかったのでしょうか?ちなみに、9月5日に発売予定の拙著「ルポ 平成ネット犯罪」(ちくま新書)では、若干、チャットの過去が書かれています。

 

 

 

 チャットのことは、過去に拙著「チャット依存症候群」でも、書いています。yahoo!チャット全盛期のメンタルヘルス系のチャットに入り浸ったときに書いたものです。

 

 

 平成の終わりの、東日本大震災をきっかっけに、電話回線がパンクしても、家族や友人と連絡が取れるようにと開発されたLINEですが、平成初期に問題視されたチャットの運営をしてしまうとは、歴史を学んでいないというなのかもしれません。

 

 もし、LINEオープンチャットに未来があるとすれば、過去のチャットの失敗をどのように反映するか?という視点がなければいけません。一方で、やはり、楽しいということがなるべく制限されないものにならないといけません。たしかに、LINE内では、知らない相手とは知り会えませんが、LINEID交換掲示板もあるように、他のサービスを利用して、出会うこともできてしまっています。どこまでゆるくするのか?という視点がなければ、どんどん地下に潜るだけです。もし、これが運営として許容できるスタンスがなければ、未来はないのではないかと思えます。