東京新聞で、目黒区虐待死(虐待殺人)事件を詳しく伝えています。記事では「児相間の引き継ぎや、児相と警察の連携の不足などが、痛ましい結果を招いた。今回の事件で浮かんだ課題に、国や自治体の検証が続く」と伝えています。いったい、どうすれば防げたのかの検証は丁寧にしてほしいものです。

 

 この記事で気になるのは、結愛ちゃんを一時保護したあと、<雄大被告が「もうたたかない」と約束したため、一七年二月、一時保護を解除>したという部分です。これは、今盛んに言われている児相と警察の連携強化でも、同じようになるのではないかと思えます。本来、ここは児相そのものの機能強化が必要です。<約束をした>という形式的なことで、一時保護を解除するのはいかがなものでしょうか。

 

 虐待は、ある意味で嗜癖です。虐待をしてしまう行動パターンを習得しているのです。そのくらい、児相は理解しているはずです。ならば、加害行為=虐待をしないような行動を身につけたり、怒りなどの感情をコントロールさせる方向に指導しなければならないでしょう。それなのに形式的な約束をしただけで、一時保護をしてしまう。これは、虐待が止まないどころか、かえって、虐待を悪化させてしまうでしょう。

 

 香川県の児相の対応は検証されるべきでしょう。多くのニュースでは東京に引っ越してからの児相の対応が問題視され、警察との連携強化が叫ばれました。しかし、香川県での対応は問題視されるべきです。もちろん、現状の体制でできるのか?と言われれば、人員不足がそれを許さないでしょう。人員を増やすばかりでなく、虐待という加害行為をさせないためのプログラムを実施するための環境整備も充実させなければなりません。それがなければ、警察の機能強化の意味は半減してしまうことでしょう。

 

 一般予防的なプログラムは、NPO法人・CAPセンター・JAPANが行なっています。

 

 http://cap-j.net/program/approach

 

 こうした虐待の前段としてのプログラムを、保健所などで行われるべきでしょう。加えて、虐待の加害者になったときに、児相内で、個別の虐待防止プログラムをしていくことが求められているのではないでしょうか。

 

「パパにやられた」届かず 目黒女児虐待死 両親起訴

06.28 11:12東京新聞

 

東京都目黒区のアパートで今年三月、虐待を受けた船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5つ)が死亡した事件で、東京地検は二十七日、保護責任者遺棄致死罪で、父親の無職雄大容疑者(33)と母親の無職優里容疑者(26)を起訴した。

 

 起訴状によると、一月下旬ごろから、結愛ちゃんに十分な食事を与えず、二月下旬ごろには雄大被告の暴行で極度に衰弱していたのに、虐待の事実が発覚するのを恐れ、病院に連れて行かずに放置。三月二日、肺炎による敗血症で死亡させたとしている。

 

 結愛ちゃんは栄養失調になり、死亡時は五歳児の平均体重を七キロも下回る一二・二キロしかなかった。搬送された際、おむつをはいた状態でトイレに行けないほど衰弱していたとみられる。

 

 自宅からは、「もうおねがい ゆるしてください」「あそぶってあほみたいだからやめる ぜったいやらないからね」などと結愛ちゃんが鉛筆で書いたノートが見つかっていた。

 

 結愛ちゃんは雄大被告の実子ではなかった。雄大被告は三月三日、傷害容疑で逮捕され、その後、起訴された。二人は今月六日、保護責任者遺棄致死容疑で逮捕されていた。

 

◆児相・警察 情報共有拡大へ

 「パパにやられた。ママもいた」。船戸結愛ちゃんは生前、香川県の児童相談所や病院で両親からの虐待を訴えていた。児相間の引き継ぎや、児相と警察の連携の不足などが、痛ましい結果を招いた。今回の事件で浮かんだ課題に、国や自治体の検証が続く。

 

 二〇一六年、クリスマスの深夜、結愛ちゃんはパジャマ姿ではだしのまま、家の外に放置されていた。近所の女性が「おうちに帰ろうか」と聞くと、「お父さんが怖いから嫌だ」。「パパにたたかれた」と訴え、児相が一時保護した。

 

 雄大被告が「もうたたかない」と約束したため、一七年二月、一時保護を解除。だが、虐待は止まらなかった。三月、再び家の外に出され、二度目の一時保護。ひざなどに傷があったが、結愛ちゃんは「おうちに帰りたい。おもちゃがあるし」と話す一方、「パパ大好き」「パパ怒るから嫌い」と職員に揺れる気持ちを漏らしていた。

 

 両親への指導措置を取ることで、二度目の一時保護を解除。しかし、八月には病院から「あざがある」と通報が。結愛ちゃんは「パパにやられた。ママもいた」と話したが、優里被告は「私は知らない」と答え、一時保護に至らなかった。

 

 香川の児相は今年一月、東京都目黒区への転居などを理由に、指導措置を解除。情報を引き継いだ品川児相の職員が二月に家庭訪問し、優里被告と話をしたが、結愛ちゃんには会えなかった。

 

 転居以来、結愛ちゃんの訴えは、外に伝わらなくなった。ひらがなを練習するためのノートに「パパ、ママ。もうおねがい ゆるして」などとつづったが、外部の目に触れることはなかった。

 

 事件は、児相間や、児相と警察の連携に課題を残した。香川県と都は、それぞれ転居前後の対応を検証。一方、政府も虐待防止の緊急対策を取りまとめるとした。厚生労働省は小児科医、大学教授らの専門委員会で検証を始める。

 

 都内の児相は、これまで身体的虐待を受けた子どもの一時保護を解除した場合などに限り、警察に家庭の情報を伝えていた。今後、児相職員と子どもが面会するのを保護者が拒むケースなどでも、家庭の情報を伝えるように改める。

 

 結愛ちゃんが住んでいた目黒区のアパート前は、二十七日も花を手向ける人たちの姿があった。福島県白河市の男性(44)は妻、二人の娘と訪れ、「手を合わせに来たかった。結愛ちゃんに『天国でいっぱい食べてね』と語りかけました」と涙ながらに話した。(木原育子、加藤健太)