学校での事件被害者・いじめによる自死遺族が望む現場対応とは何か 「学校事故・事件を語る会」大集会(上)

 

16年に市立中学3年の女子生徒が自殺をしたことをめぐり、神戸市教育委員会が、いじめ等の内容を聞き取ったメモを隠蔽していたことが発覚した事件で、6月3日、同委員会は記者会見を開き、謝罪した。メモは首席指導主事の指示で隠蔽されたといい、学校のずさんな対応が明らかになった。

同日、第89回の「全国学校事故・事件を語る会」の大集会が兵庫県神戸市内で開かれ、学校事故・事件の当事者や遺族、研究者、弁護士、報道関係者ら120人以上が参加した。今回のテーマは「被害者・遺族が望む現場対応(学校・教委・調査委員会)=現状と課題=」。「真相を知りたい」と、事故や自殺で亡くなった子どもの遺族が報告をおこなった。

息子が亡くなった原因は組体操事故として提訴 広島大付属三原中

2016年6月20日、広島大学附属三原中学校の3年生(当時)の男子生徒が小脳出血と急性肺水腫で死亡した。遺族は運動会の組体操での事故を原因として、広島大学を相手に約9600万円の損害賠償を求めている。大学側は「事故はなかった」として棄却を求めている。父親が報告をした。

父親は当初、生徒が前々日の運動会まで1日も休むことなく通っていたことから、「病気になるはずがない」と死因がわからないでいた。葬儀の2日後、知人から「亡くなった原因は運動会じゃないか?」「(組体操の)ピラミッドが崩れたところを見た人がいる」と聞かされた。

父親は運動会後、生徒が「頭が当たって痛かった」「頭がクラクラする」と言っていたのを思い出した。救急車で運ばれ時も、医師が「頭を打ちませんでしたか?」「どこからか落ちませんでしたか?」と聞かれたという。母親は、組体操で上にいた生徒が謝りにきており、不思議に感じていた。

「次第に(組体操の)ピラミッドが原因ではないかと思うようになりました」

「退場時に先生たちは見守りをやめています」


父親は謝りに来た生徒を訪ねた。話を聞くと、「退場のときに、騎馬で退場するんですが、崩れたんです。そのとき左膝が頭に当たった」と話した。どこに当たったのか?と聞くと、後頭部を押さえた。ちょうど、出血した部分だったという。 

「私はそれを聞いて、力が抜けました。あー、これだったのか。そんなことがあったのか、と思ったんです。これがすべてなんです」

運動会では組体操が終わる際に3段騎馬(移動ピラミッド)で退場する。直立して肩を組んだ6人の上に2人が四つんばいになる。最上段には1人が膝立ちになる。亡くなった生徒は二段目。退場門近くで騎馬のバランスが崩れ、その直後、最上段の生徒が落下した際に、膝が当たって、後頭部を強打した。入手したビデオを解析に回して、確認もした。 

「(ビデオを見ると)退場時に先生たちは見守りをやめています。明らかに、終了モードです」

学校側は「組体操は崩れていない」「完璧だった」と主張

しかし、学校側は「組体操は崩れていない」「ビデオでもあるんですか?」「おかしいですね、最初と言っていることが違うじゃないですか」などと反論したという。「運動会は完璧でした。問題はありませんでした」とも主張した。

学校の説明では事実が分からないでいたために、父親は同級生や保護者に聞いて回った。そのためか、「もういいんじゃないですか?」「うちの子は傷ついている」「思い出させないで」などと言われるようになったという。


「私は真相を知りたい。それだけのことなんです。聞いて回っていると、非難を浴びるようになりました。孤立したために、自分一人でするしかないと決心しました。その結果、今の弁護士さんに出会えました」

学校側は「三段騎馬は、節度を持ってやれば、危険なものではない」「組体操は10分間。体力を消耗するものではない」とも主張している、という。

息子のために真実を明らかにしたい

「体力を消耗するから10分しかできないんですよ。弁護士に言いたい。『あなたはやったことがあるんですか?』と。中3生は自分たちの種目だけでなく、下級生の世話をしたり、各種目の準備もしている。組体操の二つ前の競技にはリレーがありました。息子は思い切り駆けていました。ただでさえ、暑い日でした。体力は相当、消耗しているはずです。特に息子は白組の代表。動き回っていました」

父親は息子を亡くしたことで傷ついた。さらに学校の対応によって追い討ちをかけたれたのだ。学校側の“事故がなかった”という言葉からすべてが始まっている。その言葉に組織全体が忖度しているようだ。 

「息子のために真実を明らかにしたい。そして、同じ事故が起きないようにしたい」

自殺をしたのはいじめが原因ではないかと調査要望 山口県立高校

16年7月26日、山口県立高校の2年(当時)の男子生徒がJR櫛ヶ浜駅で貨物列車と衝突。死亡した。いじめ防止対策推進法による調査委員会の報告書によると、生徒が同級生から日常的に「いじり」を受け、その中にはいじめに該当するものがあった。生徒の「いじり」に教員が合わせることもあった。いわば、教員もいじめに加わったことになる。無料通信アプリLINEで、部活仲間で作っていたグループを退会させられたこともいじめに認定した。しかし、自殺との因果関係については「一つの要因だけで説明できるほど単純ではない」と認めていない。母親が報告した。 

「息子に何があったのか。息子がいなくなってしまった現実を、自ら命を絶ってしまったという事実を、どうしても受け入れることができませんでした。決して埋まることのない深い喪失感と向き合う日々が始まりました。もう一つ向き合わされたものがあります。それが教育現場の不誠実さです」

「公平性や透明性が担保されていない」調査委

両親は息子が亡くなった後、彼がSNSを通じて友人関係で悩みを抱えていたことを把握した。スマートフォンの中にメッセージが残っていたからだ。学校を訪れ、そのことを担任に伝えると、「全く気が付きませんでした」との回答だった。母親は「全く」という表現に違和感を持ったという。部活動での指導やいじめが自殺の原因ではないかと疑い、学校側に真相解明を要望した。

8月、県教委は常設している「いじめ問題調査委員会」の調査部会を設置した。しかし、両親は調査部会の設置を知らされておらず、ニュースで知ったという。その上、人選についても疑問に感じたところがあった。 

「最も重視すべき公平性、透明性が担保されていませんでした。調査部会が設置されたこともテレビのニュースで知りました。委員には、設置者の県と雇用関係のある人物が複数いました。委員長は、県内で中学校の校長を勤めていました。その中学校に加害生徒が在籍していたのです」 
 

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