警視庁は、飲食店やマッサージ店などで女子高生らに接客させる「JKビジネス」で働いた経験がある少女たちへのアンケート結果をまとめた。少年育成課では、昨年6〜7ガウに児童福祉法違反などで摘発した都内の2店舗に勤務していた15〜17歳の少女42人に聞き取りをした。約半数が、勤務を通じて、客との性行為の経験があると回答した。「場合によってはやむをえない」と回答した人は28%となっている。

 

 こうしたJKビジネスを規制しようと、警察庁は全国調査を実施する方針だ。全国的に規制条例が検討されている。また、アメリカの「2016年人身取引報告書」でも、「日本人児童の性的搾取を目的とした人身取引を依然として助長している」として、JKビジネスを取り上げた。そんな中で、「JKビジネスの逆襲」(一般社団法人ホワイトハンズ主催)というイベントが行われた。

 

警視庁のJKビジネス規制強化案

 

 JKリフレ、JK見学店、JK撮影会、JKお散歩....2000年代になって、女子高生とのコミュニケーションをメインにうたった店舗やサービスが増えてきた。しかし、「性的な被害」の危険性が指摘されている。そのため、規制強化は全国的な流れになってきている。東京都でも警視庁が「特定異性接客営業規制条例」案を公表した。それよると、規制対象は、以下の通り。

 

(1)いずれかに該当する営業で、青少年が接客することを明示・連想させるものとして公安員会で定める文字、衣服等を用いるもの
ア)もっぱら異性の客に接触し、または接触させる役務を提供する営業(例 リフレ)
イ)専ら異性の客に同伴する役務を提供する営業(例 散歩)
ウ)専ら客に異性の人の姿態を見せる役務を提供する営業(例 見学・撮影・作業所)
エ)専ら異性の客の接待をする役務を提供する営業(例 コミュ)
オ)喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、従業員が専ら異性の客に接するもの(例 カフェ)

(2)喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業のうち、水着、下着その他の公安委員会で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用するもの(例 ガールズバー・ガールズ居酒屋のうち、水着、下着その他の公安委員会で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用するもの)

 これらの営業形態では、18歳未満の青少年は保護される。また、(1)の場合は、東京都公安員会への届出義務を課す。また、公共施設周辺などでは営業を禁止し、広告の表示、広告物の配布も禁止する。

 

「アイドルはレッスンを積む。JKビジネスはそれを省いたもの」

 

 「JKビジネスの逆襲」は3月5日、同団体が開催している「セックスワークサミット」の一環で行われた。「女子高生ビジネスの内幕」(宝島社)の著者で、井川楊枝さん(ライター)は、'12年ごろから雑誌でJKビジネスを取り上げていた。男性客にも話を聞き、「センセーショナルに取り上げたこともある」という一方で、「書籍では、基本的には見たままを描きつつ、社会問題として捉えて、掘り下げていった」という。

 

「どんな女子高生がいるのか。個々によって違うが、こういう世界に入って心が傷ついた人もいる。一方で、お金を稼ぎたいので割り切っている子もいる。一概に言うのは難しい。女の子は基本的に稼ぎたい。ならば、おじさんからお金を取るしかない。アイドルとJKビジネスは何が違う?アイドルはCDを10枚とか、100枚買って、例えば、ハグができたりする。そのためにはアイドルはレッスンを積まないといけない。JKビジネスはそのレッスンを省いたもので、効率的に稼げる」

 

取材し始めた当時('12年)と今('17年)ではどのように違うのか。

 

 「'12年のころ、秋葉原では女子高生が街角に立っていて、チラシを配っていた。秋葉原であれだけ店があったのは、メイド喫茶があったからではないか。'17年はだいぶ、アンダーグラウンド化している。アンダー(18歳未満の女の子)は援助交際が増えてきた。女子高生とエッチができる店になってきてしまってういるので、批判的にしか書けない」

 

“そこに女子高生がいれば、ブレーキがきかない”

 

 「サラリーマンより稼ぐ女子高生たち」(コアマガジン)  の著者、高木瑞穂さん(ルポライター)は、写真週刊誌「フライデー」で、横浜市内の元祖・見学クラブを取材したり、ガールズ居酒屋に女子高生がいる店舗を取材していた。

 

 「都内の店舗はほぼ取材した。広まったのは開店資金が安いから。エステ店は資格も、許可もいらない。その類似として、JKビジネスがあった。最初の頃は、300万あれば開業できたが、今は100万でもできる。'12年ごろになると、スカウト、ホスト、風俗業者が流入した。スカウトマンからすると、長年やっている人は18歳未満には手を出さないが、稼げない一部のスカウトがJKビジネスを紹介していた。それらが規制によっていっきになくなった」

 

男性客はどんな人が多いのだろう。

 

「会社員や生業がある人が多い。もっとお金を持っている会社経営者や役員もいる。そうじゃないと買えない。でも、どうしてブレーキがかからないのかが疑問だったが、“そこに女子高生がいれば、ブレーキがきかない”という。ブレーキのかけかたを教えないとダメだし、女子高生にはブレーキのかからない客がいることを知ることが大切だ」

 

「何があるのかわからないドキドキ感、ドラクエ的な冒険心」

 

 では、経営者はどういう人なのか。JKビジネスを紹介する「合法JKナビ」というサイトの管理人も登壇した。月間160万PVを稼ぎ出す。今年からは、派遣型リフレ店も開業している。風俗適正化法や労働派遣法に登録している、いわば、オーバー(18歳以上の女の子たち)専用の店舗だ。

 

 「最初は何がJKビジネスなのか知らなかった。'12年ごろに客として自分がハマっていった。付き合いたいと思った。実際に結婚までした。失敗しましたが....。それで自分がツイッターやブログで情報発信をするようになった。サイトでは、JKビジネスの店舗等を紹介したり、ニュースを載せたりしている。いろんなリフレ店から広告の掲載依頼がある」

 

 客はどんな人たちなのか。

 

 「メインは30代で、10代から70代まで。いかにも“女の子が好き!”という人もいるが、外からはそんな風には見えない人が多い。最初から結婚相手を探している人もいるが、店に実際来て、女の子と話をするなかで結婚を考える人がいる。僕もそうでした。リフレは風俗ではないので、性欲よりも、癒しや出会い。何があるのかわからないドキドキ感がある。ドラクエ的な冒険心を求めているのでしょう」

 

 どんな女の子を客は求めているのだろうか。また、店ではどんな方針なのか。

 

 「プロは求めていない。リフレでは、風俗嬢でも、キャバクラ嬢でもない子を求めている。JKリフレ店では、黒髪清楚系が王道だが、うちの店では金髪も多く、髪の色は自由だ。いろんな女の子がいていい。ただ、大前提として。女子高生っぽくないとダメ。一番は見た目の若さ。そして業界慣れてしていないこと。客は素人を求めている」

 

規制すれば、アングラ化する!?

 

 '15年、愛知県では、青少年保護育成条例を改正して、JKビジネスを初めて規制した。県は立ち入り調査をしたり、営業停止命令ができるようになった。また、警視庁は'13年、JKビジネスで働くことを「不良行為」として補導対象にした。'15年からは、18〜19歳の女子高生も補導対象に加えた。さらには、'16年、「特定異性接客営業規制条例」案を公表した。今年、都議会に上程しようとしている。

 

 「需要と供給がある限りなくならない。女の子も稼ぎたい。ならば、おじさんからお金を取るしかない。規制しすぎると、アングラになる。これくらいならいいのでは?というビジネスもあり、罰則強化もいいが、(買春をする店舗等と)すべて同じに見るのはどうか。たとえば、オセロをする店くらいは残していいのではないか。一律規制はよくない」(井川さん)

 

 「業者による抜け穴探しは続く。アンダーの子たちの買春を止めることを周知することが必要。その上で、買う側の罰則強化をする。そして買われた少女の罰則もあったほうがいい。いまは補導で終わるが、それではやめない。規制をすれば、地下に潜る。締め付けたら、ツイッターを使った援助交際に戻る。店の方が安心だ」(高木さん)

 

 「JKブランドの需要は下がらない。そのため、罰則強化が効果的なのではないか。JKビジネスの客が捕まったというニュースは聞かない。(ネットと違って)店では足がつかないし、証拠も残らない。アンダーとオーバーでは明確な違いがある。経営者としては雇いたくない」(「合法JKナビ」管理人)

 

 規制について3人は「罰則強化」を口にしたが、これまでテレクラ規制条例や児童買春・児童ポルノ禁止法、出会い系サイト規制法、青少年ネット規制法などでも見られたように、JKビジネスは新たな形になっていくのかもしれない。