自殺幇助は、自殺しようとした人が未遂に終わったとしても、幇助そのものが罪なのか。私の中ではまだ答えがない。朝日新聞は「母親と海に入り、自殺を手助けした疑い 30歳の男逮捕」という記事を配信した。以下が内容だ。
2016年9月26日00時25分
母親の自殺を手助けしたとして、愛知県警半田署は25日、住居不定、無職川原隼人容疑者(30)を自殺幇助(ほうじょ)の疑いで逮捕し、発表した。容疑を認めているという。
署によると、川原容疑者は25日午前1時20分ごろ、愛知県南知多町内海の内海海水浴場で、母かつ子さん(58)と一緒に海に入り、かつ子さんの自殺を手助けした疑いがある。かつ子さんに目立った外傷はなく、川原容疑者は調べに対し、「死にきれず浜辺に戻った」と話しているという。川原容疑者は約20分後、第一発見者を装い、浜辺の釣り人を通じて110番通報していた。
自殺幇助は、刑法202条で定められている。
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
自殺それ自体は刑法上、罪としての構成要件がない。なぜ、罪ではない自殺を幇助するのは罪なのか。仮に自殺が罪なら、幇助は、共犯関係とも言えなくもない。しかし、刑法ではその規定がない。罪ではないが、違法性があると考えるか。難しい問題だな。
たとえば、いのちは本人のものであるので、そのいのちを処分するのは、本人の自由という立場があったとする。そうなった場合、他人が関与してしまうと、当人のいのちを他人が処分をしてしまうことになる。たしかにこれは所有権を他人に委ねるようなものだが、いのちの処分は他人にはできない不可侵なものと考えれば、自殺関与罪が成り立つのかもしれない。
また、自殺は違法であるが、自殺をする場合、当人が亡くなった場合、違法性が阻却されるという考えもあるだろう。そもそも、罪を犯しても、当人がいなければ、逮捕も起訴もできない。ただ、自殺未遂の場合はどうなるのか。傷害罪のようなものだが、障害の対象が他人なのか、自分なのか。自殺未遂はその対象が自分。これも被害感情がないために、罪に問いにくい。
しかし、関与罪どうか。やはり、いのちの処分権は自分にしかない不可侵なものとして考えないと、関与罪は成立しない。なんだか、堂々巡りになってしまうけど、自殺が罪じゃないのに、自殺関与が罪になる不思議の謎解きは興味深いものがある。
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