6月14日 東京地裁722

平成28年合(わ)1号
準強姦致傷(裁判員裁判)

裁判長 斉藤啓昭
裁判官 大川隆男
裁判官 中村光一

検察官 岡本貴幸
検察官 木ノ内希
検察官 大本貴文    

 被告人は飲食店で睡眠薬入りのお酒を被害女性に飲ませて、ホテルに連れ込み強姦をした。その際、陰部を傷つけた、という準強姦致傷に問われている裁判

(被告人質問)
弁護人 睡眠薬入りのお酒を飲ませた後、被害女性は?

被告人 ぼーっとしていました。ささやく感じで話をしていました。自分が情けない。

弁護人 その後は?

被告人 髪を軽くなでて、頭を触った。服の上から体を触った。その時点では抵抗はありませんでした。

弁護人 どう思ったのか?

被告人 当時は受け入れられていると思った。

弁護人 女性はどんな様子?

被告人 意識が朦朧としていた。

裁判長 弁護人、もう少し大きな声で。

弁護人 その後、ホテルでどうした?

被告人 膣に指を入れた。そして、(性器の)先端だけ入れた。

弁護人 女性の反応は?

被告人 「初めてだから痛い」と言いました。びっくりして、その行為をやめました。

弁護人 どうしてやめた?

被告人 初めてのことだから受け入れられないという意思表示があったため

弁護人 挿入したのはどのくらいの長さ?

被告人 1秒なかった。

弁護人 なぜ、そんなことをした?

被告人 被害女性はそれまで拒否することはなかったので、応じてくれていると思った。睡眠薬で考える時間がなかっただけ。

弁護人 なぜ、画像を撮ったのか?

被告人 携帯で画像を撮るのは、かつて恋人だった人たちとはしていた。結果的に、被害女性を傷つけてしまいました。

弁護人 画像をインターネットにはアップした?

被告人 していません。

弁護人 業者に売ったことは?

被告人 決して、ありません。

弁護人 ホテル内でその後はどうした?

被告人 結局、射精せずに、ベッドで横になりました。午前6時半ごろ、被害女性は「仕事がある」と帰り支度をしました。ホテルを出てタクシーを捕まえようと、探しました。しかし、探せませんでした。ホテルのフロントに戻り、タクシーをお願い、被害女性はタクシーで帰りました。その後は、吐き気があったので、ホテルの部屋に戻り、横になりました。朝起きで仕事へ向かいました。

弁護人 知人から連絡がありましたね?

被告人 「本日、時間がありますか?」と連絡がありました。そして、被害女性と、女性の母親、知人でファミリーレストランで話し合うことになりました。
 母「娘に何をしたのか?」
 自分のしたことをすべて話をし、謝罪をしました。被害女性は自分を見ていました。昨日の被害女性とは別人だと思いました。本当に傷つけてしまったんだと痛感しました。被害女性はショックを受けて、ファミリーレストランの外へ行きました。知人も追いかけていきました。
 母「警察に行きましょう」
 そして出頭しました。その夜、警察が家に来て、逮捕されたました。

弁護人 被害女性への謝罪は?

被告人 何度もしていますが、受け入れてもらえていません。

弁護人 睡眠薬はなぜ持っていた?

被告人 自分が服用するため。以前に川崎市の栗田病院にいき、処方されていた。
 当時、仕事がきつくて、ストレスが溜まっていた。今は通っていません。

弁護人 なぜ通ってない?

被告人 心療内科に通うのは抵抗があった。会社にはよく見られないとの話を聞いていたので、怖くなったのです。

弁護人 今回はどこで入手?

被告人 インターネットです。

弁護人 どんな?

被告人 ロピプノールとハルシオンです。

弁護人 なぜ二種類?

被告人 睡眠できる時間の長さが違うため。

弁護人 どのくらいの頻度で飲んでいた?

被告人 週に一度ほど

弁護人 犯行の直前はどうして持っていた?

被告人 離婚と仕事のストレスです。

弁護人 最初から被害女性に飲ませるためではない?

被告人 違います。被害女性と出会ったのも偶然です。

弁護人 当時は何錠もっていた?

被告人 2錠です

弁護人 どうして?

被告人 お酒と一緒にハルシオンを飲むと、睡眠時間が長くなると聞いていた。しかし、中途覚醒してしまうためです。

弁護人 被害女性はあなたに好意的と感じた?

被告人 はい。一緒にカラオケをしたり、バーで話をしたいたので。

弁護人 ならば、自然と仲良くなるのでは?

被告人 その可能性はありましたが、「自分に好意があれば何をしても構わない」と思ってしまったのです。

弁護人 今はどう思っている?

被告人 自分の誤った考えが引き起こした。被害女性は私を信頼していた。それを卑劣な方法で裏切った。何とお詫びしてよいかわからない。睡眠薬を所持すること自体、よくないと思った。被害女性の気持ちを考えて、もう所持しない。

弁護人 以前にもありましたね?

被告人 出張先で仲良くなった女性のお酒に睡眠薬を入れて成功をした。バレてしまって、謝罪をした。その女性は許してくれた。これで絶対やってはいけないと思った。

弁護人 どうして1年半前はした?

被告人 カウンセリングでわかったことですが、「好意がある人には何をしても許されるという認知の歪みがあった。当時はそれに気がつかなかった。誤った思考が一番の原因です。酒を飲むと、善悪の判断がつかなくなる。薬も持ってはいけない。

弁護人 二度もしてしまったことには?

被告人 心より後悔している。二度と同じことはしない。

(反対尋問)
検察官 被害女性は警戒していた様子は?

被告人 ありません。

検察官 交際は申し入れた?

被告人 性交できれば、女性の心を奪えると思っていました。これも直さなければなたない。

検察官 なぜ交際を申し込まない?

被告人 ホテルの中で話をしたときに....

検察官 睡眠薬を入れる前は?

被告人 それはしなかった。

検察官 なぜ?

被告人 傷つくのが怖かった。

検察官 どうなってハルシオンを砕いた?

被告人 レシートを折って、ライターで砕いた。

検察官 なぜ砕いた?

被告人 錠剤だとバレてしまうから

検察官 早く溶けるようにでは?

被告人 いえ。バレてしまうからです

検察官 睡眠薬の二種類をビールに入れたのはなぜ?

被告人 一錠では変化がないと思って。被害女性は寝てしまうということはないと思っていた。

検察官 寝てしまうとは思っていない?

被告人 私の体験談になってしまいますが...

検察官 さらにお酒を勧めた。睡眠薬の効果が増すとは思わない?

被告人 覚えていない。

検察官 303号室、ベットに被害女性を寝かせた。どのように?

被告人 抱えて。

検察官 被害女性は「ここはどこ?」被告人「ルートインだよ」と。女性の様子は?

被告人 ぼーっとしていた状態。

検察官 その後、服を脱がせて、体を舐めた?

被告人 はい

検察官 避妊具は?

被告人 つけていない

検察官 手淫と性交をしている。制欲があったのでは?

被告人 そこまでとは思っていない

検察官 挿入は1秒以内と答えていたが

被告人 腰を動かして、被害女性が拒否をした。意志がないと思った。

検察官 動画撮影をした理由は?

被告人 あとで自分で見るため

検察官 なぜフリーメールに送っている?

被告人 携帯に残っているのが嫌だった。落としたとき拾われたときには嫌だ。

検察官 携帯にはない?

被告人 削除した。

検察官 いつ?

被告人 捜査のとき。逮捕後一週間後くらい。

検察官 被害女性は膣から出血している。最初あなたは否認している。手淫や性交をした後では?

被告人 だいたいわかるでしょ?と警察に聞かれて、答えた。


(被害女性の意見陳述)
 犯人から(性暴力を)受けた直後、何が起きたのかわからず、嘔吐やふらつきがありました。一旦、自宅に帰り、仕事に行くと、遅刻したことで会社の人になじられました。会社でも顔面蒼白で、ふらつきが続きました。トイレに行ったときに、下着を見ると、血が付いていることがわかりました。何が現実だったのか。
 知人を介して、犯人とファミリーレストランで会い、犯人の口から聞いたとき、すべてが現実だったのかと思いました。知人とファミリーレストランの外へ出て、大声で泣き叫んだりしました。その時の気持ちをどう表現していいのか、今でもわかりません。処女膜が無事でしたが、出血がひどくありました。(今回の犯行形態でも)病院では「稀に妊娠する」と言われました。「犯人の子どもを妊娠するのか?」と不安になりました。自分が悪いのではないかと思ったりしました。陰部に不快感を抱き、恐怖心や苦しみが出てきました。
 仕事に集中したほうがいいと思ったのですが、取り乱してしまいました。同僚が笑っていると、私のことなのかと思ったりもしました。事件後、あらゆる人が怖くなりました。すべてが恐怖となったのです。あんなに仕事をしていたのに、思うように体が動けませんでした。同僚との会話もジェスチャーと筆談になり、限られた仕事しかできなくなりました。
 外出するときも帽子をかぶり、マスクをつけ、ヘッドホンをすることで周囲から見られないようにしています。それが今でも続いています。ちょっとしたことで感情が抑えられません。私は汚れてしまったのではないかと思いました。クリニックに顔い、セラピストと話をすると、これまでの反応が当たり前の反応だとわかりました。
 家族や友人、先輩たちに助けられました。3月には同僚とも会話ができるようになりました。少しずつできる仕事も増えてきました。しかし、上司から「少し休んでほしい」と言われ、3月は10日間、休みました。その後、異動するか辞めるかの選択に迫られました。異動することになりましたが、私はキャリアを奪われました。夜遅く歩くこともできません。
 犯行時に動画が取られていました。そのため、誰かがそれを見ているのではないか。動画が流出しているんではないか。恐怖と苛立ちを感じました。犯人が謝罪を申し出ています。しかし、受けるつもりはありません。
 私は人間関係、仕事を奪われました。私の人生は変わってしまいました。私以外に、私の母親も傷つきました。犯人には実刑を望みます。執行猶予にはしてほしくありません。私がいる社会には出てきてほしくはないです。