あすの今頃は、比例代表の候補者もほぼ決まっている頃だろう。小選挙区は他の党や政治団体、無所属の候補者たちの争いだが、比例代表は党内の争いだ。

 今回の選挙は、衆議院議員選挙では初めてのネット選挙が解禁になった。ネット選挙というと、インターネットで投票ができると思っている人もいるようだが、それはまだできない。選挙活動が一定の制限のもとにできるというだけ。

 選挙を取材している知人の記者たちは、今回の選挙、まったく面白くなさそうだ。「風」が吹いていないからだ。おそらく、今回の最大の話題は史上最低の投票率になるかどうか。また、自民党が単独で300議席を確保するかどうか。あとは大物議員が落選するかどうかくらいだと思う。

 ところで、ネットでの論考を見ていると、いろんな論者が心配している。「こんな重要な選挙なのに、有権者は関心がない」として、もう日本を捨てようと思ってる人もいるようだ。たしかに、すでにインテリたちはもう日本にいなかったりする。かつて東大法学部の学生の就職先は国家公務員だと言われたけど、とくに上位層の人たちはそういう選択をしていないと言われたりする。インテリほど日本を捨てたいようだ。

 もちろん、国籍離脱の自由が憲法で保障されているので、日本を捨てようがどうでもいい。しかし投票率が低いとか、こんな状況でなぜ自民党が300議席を占めるのか?と、これは、この国の有権者がちゃんと考えていないからじゃないかと嘆いている。たしかに、そういう見方も成り立つ。実際、自民党に入れれば、その政策によってむしろ生活が苦しくなるような人さえも自民党を支持したりしている。

 しかし、日本を捨てようとしたり、現状を嘆いているたちは、いったい、現状を変えようと何をしてきたのか?たんに、情報を収集したり、どこかのメディアで現状を嘆いたりしているだけのように感じる。本気で変えたいのなら、むしろ、普段、そのようなメディアに接しない人たちに対して働きかければならないんじゃないかと思う。とくに「よりましな選択を」と言い、「自民党以外に投票を」というのなら、自分と違った現状認識や政治信条を持っている人に働きかけないと、票は動かない。同じ考えの人に発信し、「そうだね、そうだね」と言っていても、票の移動はない。とくに風がない中では、何も動かない。自身の言説や説得、提案によって、一人でも投票行動に影響を与えたのかを、自分自身の評価軸におく必要があるんじゃないかと思ったりする。

 そう思えば、旧来型の集票マシンとして組織選挙をしている政党ほど、有利になる。投票率が低くても、何かしらの利害関係を作れば、企業や団体の所蔵していたりすれば、票は動いていくだろう。労組の組織率が低下している中では、その影響力はそれほど多くはない。賃金が上がらないのであれば、せめて仕事を取りこぼさないように、「勝ち馬」に乗りたい心理も働くんだろうと思う。

 こういう私もここ社会人になってから、どこの政党や候補者の選挙の手伝いをしてない。報道の現場にいたからというのもあるが、社会党が社民党になり、民主党ができたことで、日本は保守二大政党の道を歩んだ形になっている。そして、社民主義的な人たちは、まとまって政党をするほど力を持てず、自民党や民主党、社民党などバラバラに所属しているように見える。社民主義的な思考を暫定的に持っている私は、保守政治の中で、より社民主義的な議員を選択するしかない。といっても、いつもこの人を応援したいという人が現れているわけではない。

 もちろん、私も日本を捨てる選択肢がゼロではないが、今回の選挙で有権者が関心がないとか、自民党が圧勝だからという理由では捨てないだろう。こうした絶望感は、今に始まったわけではない。ずっと以前からあったんだし、そして小選挙区制はそれをわかりやすくしているだけだろうなあ。もし、「今回の選挙は重要だ」と言っている人がいるとすれば、その人の言説はそれほどあてにならない。だって、いつの選挙も重要なんですよ。そして、政治は選挙だけで決まらない。自民党が300議席を占めるのなら、その対策をとることこそ、政治なんじゃないか。と。