チュニジアの「ジャスミン革命」から飛び火するように、北アフリカで広がっている民主化を求めるデモについて、様々な報道がされています。しかしながら、日本のテレビはニュース番組で触れるくらいで、現段階で特番を組むことはしていません。

 そのため、私はエジプトの情勢がどうなっているのかを知るために、中東のテレビ「アルジャジーラ」の「Watch Live」を見たりしています。英語放送なので、すべてを聞き取ることができないのですが、見ていると、91年にあったイラク湾岸戦争を思い出しました。

 91年1月17日にイラク湾岸戦争が起きたとき、私はテレビに釘付けでした。CNNが現地で送り続ける映像が中心でしたが、戦争がテレビで見れる時代になったのだ、と思ったほどです。と同時に、これから世界はどうなってしまうのか?と思ったほどです。もしかすると、第3次世界大戦になるのか?とも、思ったくらい、少なくとも私の中では緊迫していたのです。

 この時期、大学では試験期間になっていたと思います。でも、私は大学に行っても戦争が気になっており、テレビが置かれている大学生協に向かいました。すでに人集りができていました。ふと気がつくと、そこにいたのは留学生や在日韓国人ばかりで、日本人は私しかいなかったように見えました。生協でテレビを見ない=戦争に関心がない、というわけではないでしょう。しかし、なぜ、試験期間中、あの瞬間に、生協のテレビを見ていた日本人がいなかったのかを考えたのでした。あの情景は、今でも忘れることができません。

 その状況と、今回のエジプトでの民主化デモの状況は似ている気がしています。イラク湾岸戦争はテレビで映像を伝えましたが、エジプトでの民主化デモは、インターネットのライブ動画で見ることができます。テレビが伝えた戦争も衝撃的ですが、インターネットが伝える戦争もまた、時代の変化を感じさせます。そして、イラク湾岸戦争当時は、どのくらいの日本人が気にしているのか分からず、知る手段の一つとして反戦デモに出かけたりしていました。いまは亡き作家・小田実さんが関わっていた「日本はこれでいいのか!市民連合」や「市民の意見30の会」の隊列でデモしたのを記憶しています。

 チュニジアの「ジャスミン革命」は、1人の青年の焼身自殺をきっかけに始まったとされています。また、TwitterやFacebook、ウィキリークスが果たした役割が大きいともされています。http://www.internetworldstats.com/によると、2010年6月現在で、チュニジアのインターネット普及率は34%です。3割くらいで、これほどの革命が起きてしまうということは、それだけ不満が蓄積していたのだろうと思われます。

 エジプトのインターネット普及率は21.2%ですから、チュニジアよりも普及していない。ということは、TwitterやFacebookでつながった市民は、革命を起こすほどの規模だったのだろうか、と思うと疑問になりますが、もしかすると、首都カイロにユーザーが集中的にいたとすれば、それも分からなくもないでしょう。

 チュニジアにせよ、エジプトにせよ、ソーシャルメディア革命と言われているが、それほどの多くのインターネット・ユーザー数がいたわけではない、ということがわかります。ただ、Facebookのユーザー(2010年8月31日現在)は、チュニジアで15.8%で、エジプトでは5.1%です。想像すると、革命のリーダー、もしくはリーダーに近い人物がソーシャルメディアでつながったということなのでしょう。



エジプト軍「実力行使せず」 デモ拡大で声明
副大統領は野党と交渉表明

2011/2/1 10:27

 【カイロ=花房良祐】ムバラク大統領に対する退陣要求デモが続くエジプトで31日、政権存続を左右する存在として注目されていた軍がデモ隊への実力行使をしないとの声明を発表。スレイマン副大統領は同日「憲法改正も含めた交渉を野党と直ちに開始する」と表明した。一方、反政権側は、野党各勢力が同日の会合で現政権に代わる“受け皿”作りについて議論したほか、1日にはカイロ市内で100万人規模のデモを計画している。

 エジプト情勢は、政権と野党勢力による話し合いで米欧などが期待する「秩序ある移行」に向かうか、デモに伴う混乱拡大で政権が短期間に崩壊し権力の空白が生じるかどうかの瀬戸際の局面に入ってきた。

 エジプト軍は31日、「平和的な表現の自由を保障する。軍は民衆に武力を行使しない」との声明を発表した。軍は従来、ムバラク大統領に絶対の忠誠を誓っているとされ、30日には空軍機がカイロ上空を低空飛行するなど、政権側は軍を完全に掌握していることをデモ隊に誇示していた。

 1日の100万人デモの直前になって軍がデモ隊への実力行使をしないと表明したことで、ムバラク政権を取り巻く情勢は厳しい方向に傾いた。

 スレイマン副大統領は31日のテレビ演説で、将来の憲法改正などに向け、野党との話し合いを開始すると表明した。現憲法によると、大統領選の無所属候補の出馬は人民議会(国会)などの議員計250人以上の推薦が必要で、野党勢力の代表格になりつつあるエルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長の立候補は事実上不可能だ。副大統領はこうした民主化を阻害する条文の改正を野党側と議論することを示唆した。

 一方、AP通信によると野党勢力は31日、各勢力の代表者ら30~40人が集まり“ムバラク後”をにらんだエジプトについて話し合った。現時点でイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」以外の野党勢力は基盤が弱いため、政権側との折衝前に各勢力が意見を擦り合わせ交渉力を高める狙いがある。

 その際、ムスリム同胞団は主導権を握らない方針だ。同胞団は穏健派を自称しているが、欧米諸国が同胞団に強い警戒感を持っていることを踏まえ、存在感を薄めることでエジプトでの政権移行への欧米の支援を得たい考えとみられる。

 カイロ中心部では31日夜もデモ隊が夜間外出禁止令を無視してムバラク大統領の退陣を求めた。1日の100万人規模のデモなどを控え、米欧アジアなど各国はエジプトにいる自国民の待避を続けたり、自国大使館の警備を強化するなど、不測の事態への備えを急いでいる。