耳かき店店員殺害事件で、東京地裁(若園敦雄裁判長)は11月1日、被告人・林貢二に対して、無期懲役の判決を言い渡した。検察側は死刑を求刑し、裁判員裁判では初めて、死刑か無期懲役という判断を迫られ、注目を浴びていた。裁判員や補充裁判員は、判決後、東京・霞ヶ関司法記者クラブ記者会見し、判断するまでの重圧や苦悩について語った。

 きょうは60の傍聴席をめぐって約590人が並んだ。私も並んでいたが、抽選には外れた。そのため、司法記者クラブで裁判員の記者会見に参加することにした。死刑か無期懲役か。その間で裁判はものすごく揺れ動いたと思われるが、最終的には、弁護側の主張を多く認めて、無期懲役の判決を下した。

 ーー死刑を求められていたが

 裁判員(男性)=1:非常に大きな事件。正直しんどかった。大変だった。

 裁判員(女性)=2:多く報道されていて、死刑求刑とわかっていた。普段あまり考えない問題だったので、正直、大変だった。

 裁判員(女性)=3:感想としては長い時間とても大変だった。

 裁判員(男性)=4:徐々にプレッシャーを感じた。責任感で大変だった。

 補充裁判員(男性)=5:絶対忘れてはいけない経験。判決が出てスッキリすると思っていたが、実際はそうじゃない。被害者遺族の心情を考えると重い。

 補充裁判員(男性)=6:2週間一日一日がとても思った。疲れた気持ちがある。これほど、他人の性格のことを考えたのは初めて。よい経験をさせてもらった。

 ーー遺族の心情に直面したと思うが

 1:2人が亡くなっているので、悲しい気持ち、かわいそうという気持ちがある。残念だ、と。うまく言えない。

 2:遺族の意見陳述や証拠を見ると涙する場面もあった。重く受け止めて、一生懸命に考えた。その上で公正な判断を下すのが大切。

 3:意見陳述や証拠の映像をみて心を痛めた。「自分の家族がそうなたら?」という感情もあった。

 4:想像しても想像しきれない思い事件。

 5:遺族の話は本当に胸が詰まった。ここにいる私たちはそれを受け止めて、一人ひとりが遺族の身になろうと努力したことは間違いない。遺族の方々には少しでも希望を持ってほしい。

 6:DVDを見て、意見陳述を聞いて、深く、重い事件だと思った。しっかり考えることはできた。たくさん話し合った中で、公正な判断ができたと思う。

 ーー 無期懲役か死刑か。何を重きにおいて判断したか?

 裁判所職員 具体的な内容についてはご遠慮お願いしたい

 ーー被告人のことをどう思った?

 2:遺族の意見に直視して、少し変化があったと感じた

 3:最初は検察と言い合い、反省していないのでは?と思ったが、遺族の心情を聞いて、反省したのかな?と思った。

 4:許しがやいと思う。真摯な反省をしてほしい

 5:最初から最後まで何かしら少しずつと変化していったと思う。これからも反省の気持ちを持ち続けてほしい。

 6:遺族の話を聞いて、徐々に変化していくのが見えた。

 1:身勝手さがあって、納得できないこともあった。しかし、被害者遺族や検察の話を聞きながら、変わってきたと思う。判決では、いつもと違う表情だった。

 ーー死刑求刑が出たときの感想は?

 1:以前から死刑求刑は耳にしていたので動揺はしなかった。

 2:報道で死刑求刑は分かっていたが、それでも動揺はした。

 3:報道で言われていたので、とても重いものになるとは思っていた。

 4:求刑自体は想定内。検察側の求刑が1時間半で重く感じた。

 5:検察から死刑求刑があったときに、あらためて深く考えた

 6:求刑されると思っていたので動揺はしていないが、検察から「死刑」と発せられたとき、死刑の重要さを考えた。

 ーー量刑のデータベースは参考にした?

 1:参考にしていない。過去の事件ではどうか?は聞いた。

 2:事件は一つ一つ違う、同じものはない。これはこれで判断するしかない。過去はどうかは気にしていなかった。

 3:データは見たが、事件ごとに判決は下すもの

 4:過去は参考にしていない。

 5:他の判例は参考にしていない。事件をみて判断

 6:この事件はこの事件。データは参考にしていない。

 ーー死刑がどう行われるかの説明はあったのか?形場の公開があったが、頭に浮かんだか?

 1:死刑がどう行われるのかは聞いた。

 2:刑を考える上で、死刑がどう行われるのかを知らないと判断できないので、確認した。

 3:死刑のことは聞いた。刑場のことは、インターネットの記事で見ていた。しかし、想像しながら判断はしていない

 4:頭に浮かぶことはあった

 5:死刑執行の方法は以前から知っていた。公開の報道も見ていた。思い浮かべたことはある。

 6:公開の報道は見ていた。頭に浮かんだことはない

 ーー死刑はどういうイメージ?

 1:人の命を奪うこと。これまでは漠然とした考えなかった。これからは、死刑、他の刑もかkん画得られるようになった。

 2:普段は事件はニュースで見る程度。今回は、人の命の重さについて考えた。みんなが深く考えたら犯罪がなくなると思う。

 3:死刑についてこれまでは深く考えなかった。今回は、死刑を宣告する重さを知り、簡単に死刑は出せないと思った。

 4:重さを実感した

 5:人が人をさばくこと自体が疑問に思っている。自分が今回はそうなった。死刑についても、人が人を殺すことには変わりはない。しかし、今回、死刑も選択にあり得るのだ、ということに気がついた。でも、生きる中で、方法を見つけ出すのも人間だ。


 6:死刑はこれまで身近ではない。人が人を殺したら、その人の命で償うものだと漠然とは思っていた。でも、人を殺したとき、その人の命を奪っても、罪を償うことができない。こういう事件が起きないことを願う。

 ーー精神的な重圧は?

 1:被告人の性格や心情を寝る前も考えていた。それだけ重大な事件。今振り返ると、重要な決断をした。

 2:2週間、事件のことを忘れることはなかった。遺族のことが頭に浮かび、心が安らがなかった。限られた時間のなかで考え尽くせた。気力で頑張った。

 3:遺族の意見陳述を聞き、写真を見て、涙が出た。帰宅すると、かえって疲れて寝てしまった。今は大丈夫だが、明日からは普通の生活になる。思い出すかもしれない。

 4:普段の仕事にはないプレッシャーだった。入浴中や就寝前も、事件のことが頭に浮かんだ。

 5:精神的に披露したと、表現していいのかな?その疲れは仕事や暮らしの中で感じるものとは違うもの。自分の中では、考えるべき、疲れるべきものと感じた。

 6:初日に被告人を見て現実味を感じたが、家でも思い返すこともあった。こういう経験はムダではないと思った。

 ーー裁判所からアドバイスや配慮は?

 1:「判決の責任は裁判官がとるから」と言ってくれた。それによって、安心した。

 2:休廷のときも、安らげる発言をしていただいた。休廷のときはリラックスしていいんだ、と思った。

 3:毎日のように「大丈夫ですか?」と気を遣ってもらった。

 4:「判決は裁判所が責任を負う」と言ってくれた

 5:裁判長も裁判官も気遣いしてくれた。どうしようもないときは、任を下りることもできると言われ、安心した

 6:すごく緊張していた。重い空気になっていた。その空気を察していただき、意見を言いやすい空間にしてくれた

 ーー判断を下す上で、どんな思いがあったのか?

 1:遺族の感情や証拠をみたが、遺族感情だけで判断してはいけない。第3者の立場に立ち返った。感情だけでは死刑は下せない。永山基準は裁判官裁判の基準であり、自分たちの気持ちを考慮しないのなら裁判員裁判の意味はない。

 2:自分の考えは偏っているので、いろんな角度から考えるようになった。本当に公正な判断をしたと思う。

 3:証拠をみると、冷静な判断ができなかった

 4:いろんな角度から自分が納得がいくことを考えた。

 5:固定概念を捨てて、自分の考えを捨てて考えるのは難しかった。議論する中で、自分の感情も出していた。

 6:今まで認識していた知識だけでなく、いろいろな方向から考えて、死刑と無期懲役のどちらが重いのか?という考えではなく、どちらも思い刑だと思った。

 ーー被告人は反省する保証はないが、葛藤はあった?

 1:確実に反省してくれる保証はない。死刑という選択もあったが、無期懲役ということで反省をすること、それは希望するしかない。今日の判決はしっかり受け止めていた

 2:判決に書いている通りに、反省することは願いでしかない。反省し続けてほしい。

 3:反省の保証はないが、一生、反省し続けてほしい。

 4:保証がなくても、反省し続けてほしい

 5:どういう気持ちにあるかはわからない。犯した行為を深く反省してほしい、という願いだ。

 6:保証は100%というのはできない。被告人は自分自身を深く見つめ、反省し、事件を忘れることなく、長い時間、反省してほしい。