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キャバクラの聖地でのデモの効果は? JPNews 10.04.05

 「給料をちゃんと払え!」「悪質な経営者は逃がさないぞ!」。

 キャバクラユニオン(桜井凛代表)は3月26日、日本で最大のキャバクラ街・新宿歌舞伎町をデモ行進しました。JR新宿駅前から歌舞伎町を通って、再び新宿駅まで戻ってくるルートをデモ行進したのは約190人。なかには歌舞伎町内だけを練り歩いた人もいたらしい。

 この日、「歌舞伎町をキャバクラ嬢がドレスを着て行進するのか?」という噂があったためか、マスコミが大量に押し寄せました。しかし、私服での参加が目立っていたためか、誰がキャバクラ嬢なのかははっきりとはわかりませんでした。その一方で、ユニオンを支援する男性の参加者は様々なコスプレをしていました。

 歌舞伎町にはどれだけのキャバクラがあるかは未知数だ。石原慎太郎・東京都知事が就任してから「歌舞伎町浄化作戦」が繰り広げられて、違法な営業を行っているキャバクラが摘発されるケースは増えました。そのため、看板を立てずに営業をする、いわゆる「白看板営業」もあります。空き店舗になっている場合は、看板には何も書かれておらず、「白」の状態になっているのです。そうした「白」の看板の状態で営業していることを指します。

 また、客引きやスカウト行為も都条例で禁止としました。そのため、一時は、客引きやスカウトは減ったものです。しかし、現在は、客引きもスカウトもあからさまに行われています。公然とやっているのに、指導も逮捕もされないケースも多いですが、他の店舗よりも悪質ではないのに、逮捕され、店も営業停止となってしまうことだってあります。

 そんな中でキャバクラの営業をしているわけですが、景気悪化の中で、キャバクラは、お客を捕まえるのに必死になっています。もちろん、キャバクラ嬢同士の競争も激しくなっています。競争によって淘汰され、辞めて行く女性たちも少なくありません。しかし、お店側が賃金を支払わない場合や、セクハラで辞めていく場合もあるのが現状です。

 私は、厚生労働科学研究のひとつ「日本の性娯楽施設・産業に係る人々への支援・予防対策の開発に関する学際的研究」(主任研究者、東優子・大阪府立大学人間社会学部教授)に協力しています。この研究班は性風俗などの「性娯楽施設・産業」にかかわっている女性たちの、HIV/AIDS対策について研究しています。研究班では、労働者としての意識に欠け、自身の労働環境を改善していく動きが弱いという意味では共通するのではないかと、キャバクラユニオンからヒアリングをしたこともあります。

 キャバクラユニオンの課題はいろいろあります。ひとつはキャバクラという業種への偏見です。裏稼業なのだから、権利を主張するな!といったものから、どうせ男を騙して稼いでいるのだろ!といったもの、税金を払っていないだろう、といった、ほとんど事情を知らない人たちからの中傷があります。そのため、正しい権利を主張している団体として認知されるのは、まだ時間がかかるのかもしれません。

 また、お店側との関係をどのようにしていくのかといった部分もあります。お店の中には、店長を「形式的」に置いているところがあります。なにかトラブルがああったり、刑事事件に発展した場合に、警察の窓口になり、時には逮捕されるための「要員」だったりします。そんな店側からすれば、始めから誠意がないこともあります。時には、ユニオンが争議を起こすと、バックに何かがいるのではないか、との不信感があったりします。そうした店の場合、どのような信頼関係をつくるのか、といったことです。

 労組の一義的な意義は、労働条件の改善を要求することです。賃金アップを要求したりするのです。そして、別の面としては、労働者としての質の向上です。研修などをすることで、質を高め、生産性を向上させることで、業界全体を盛り上げる役割もあるのです。だとすれば、未払い賃金やセクハラの問題解決を叫ぶのと同時に、キャバクラ嬢としてのサービスの質を高めることを学ぶ場を設定することも必要になるはずです。
 
 なりたい職業の上位にきたり、漫画やドラマでも取り上げられるようになったキャバクラ嬢。以前は裏社会のイメージから、完全に表舞台に出てきました。普通の女の子がキャバクラ嬢になっているのが当たり前なのです。そのため、きちんとしたルールの元で働くことができる環境が求められます。キャバクラユニオンのブログによると、未払いだった賃金を支払うようになった、とか。デモの効果があった、ということでしょう