現在、闇サイト問題を取材・執筆中の私としては、もっとも関心のある裁判がありました。名古屋のOL拉致殺害事件です。判決は、二人が死刑、一人が無期懲役という内容でした。 

 これまでの死刑基準、いわゆる永山基準から考えると、やや基準を逸脱している感じがします。ただ、永山基準を遵守する義務はなく、過去の判例をどのように解釈するかも、裁判官の自由です。その意味では、永山基準は絶対ではありません。 

 この事件を死刑の是非や死刑の相当だったのかどうか、など刑罰の観点から見ることもできます。その場合、やはり、そもそも死刑があるべきか、あるとしてどのようにあるべきか、死刑相当の犯罪とはなにか、などを考えることができます。mixiでもその観点でのコメントがほとんどです。 

 死刑の是非を保留し、死刑執行の一時停止ーーという私の現段階の考えからすると、現行法で死刑がある以上、判決は死刑があることが前提で考えられるべきでしょう。これまでの死刑相当の犯罪を考えてみると、3人ともに死刑となるべき事件かどうかは疑問が残るところでした。 

 もちろん、被害者遺族の立場を考えれば、この事件に限らず、殺害された被害者は帰ってこないために、極刑を望むことが多いことはわかります。しかし、法治国家ですし、殺人事件すべてを何の考慮もなしに、加害者を死刑にするのも、社会のありようとして問題があるとは思います。 

 その意味で、難しい判断が迫られます。裁判員制度の下で、この事件が裁かれた場合、今回と似たような結果になったのではないか、とも想像できます。 

 3人を裁いて終わりにするのは、ひとつの事件として見る場合は、どんな判決が出たとしても、それでよいでしょう。 

 しかし、この事件は、ネット関連の殺人事件で、殺人の報酬が安くなってきたことの象徴でした。かつては、数千万円の報酬額でしたが、それが数百万、数十万でも報酬をもらえれば殺人を請け負う流れになってきています。この事件では、結果としては62000円でした。 

 人の命が安くなってきている。数千万円なら、質素に暮らせば10年くらいは生活できます。しかし、数百万なら1年くらい。数十万なら1ヶ月。なぜそんなに安い報酬で殺人を請け負うのか。 

 それは、非正規雇用などの不安定労働が増えていることに関係しているのではないか、と思っています。こうした事件で請け負っているのは、恋愛関係をのぞけば、無職、非正規雇用、不安定雇用といった人たちです。また、自殺が多くなってきている状況との関連もありそうな感じをしています。 

 このあたりは、現在書いている原稿の中で整理していきたいと思います。 

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 闇サイト殺人 2人死刑1人無期 無慈悲かつ残虐 名古屋地裁判決
3月18日15時35分配信 産経新聞

 名古屋市の会社員、磯谷利恵さん=当時(31)=が平成19年8月に拉致、殺害された闇サイト事件で、強盗殺人などの罪に問われいずれも死刑を求刑された3被告の判決公判が18日、名古屋地裁で開かれた。近藤宏子裁判長は元新聞セールススタッフ、神田司被告(38)と無職、堀慶末被告(33)に死刑を、自首した無職、川岸健治被告(42)に無期懲役をそれぞれ言い渡した。(11面に関連記事)

 被害者が1人の事件で極刑が選択されるかが焦点。近藤裁判長は判決理由で、供述が異なる3被告の強盗殺人罪の共謀を認定したうえで、「3人がそれぞれ楽をして金もうけをしようと行ったもので、動機に酌量の余地がないことは明白」と指弾した。

 犯行態様についても「被害者の命ごいに耳を貸すことなく犯行を遂げた。無慈悲かつ残虐であり、戦慄(せんりつ)を覚える」と非難。一方で川岸被告の自首については「事件の解決、次の犯行阻止の大きな要素と認められる」と評価した。

 検察側は論告で、死刑適用の判断でこれまで特に重視されてきた被害者数について「要素の一つで絶対的基準ではない」と指摘。そのうえで「残虐極まりない鬼畜の所業」と非難した。

 これに対し、3被告側は事件の計画性や自身の主導的立場を否定。「被害者1人で死刑が確定した過去の事件ほど悪質ではない」と極刑回避を求めた。

 判決によると、3被告は携帯電話サイト「闇の職業安定所」で知り合い、19年8月24日深夜、名古屋市千種区の路上で磯谷さんを車内に拉致し、監禁。現金などを奪い、翌日未明に殺害した後、遺体を岐阜県内の山林に遺棄した。