麻生内閣の経済対策の目玉のひとつである、高速道路料金のETC利用者による休日割引が始まっています。ETC利用者に限っては、休日の高速道路料金は1000円となるのです。

 しかし、この政策について「待った!」をかけた人がいます。

 新党フリーウェイクラブの和合秀典さんです。和合さんは、高速道路の無料通行を実践し、裁判等を通じて闘っている人です。

 1)「生活対策」のために、「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」で定める「高速道路利便増進事業」としての高速道路料金の割引を行なうのは、同法の認めていないことである。

 2)いわゆる金融機関のブラックリストに載っている者、低所得者や収入の安定していない者など、クレジット会社がETCカードの
発行を認めず、かつ高額のデポジットを預託し高額の車載器を装着できない自動車運転者は、国の施策である高速道路料金の土日祝日割引などの恩恵を受けるこ
とができない。そのため、憲法14条の法の下の平等に反する。

 この二点で争うつもりのようです。

 5月1日に国土交通省の記者クラブで記者会見をしたようですが、ニュースになっていないですよね?私にも会見の案内がきましたが、1日は大阪でしたので、出席できませんでした。


 参考サイトとして、和合さんのサイトようこそ!和合党首の時事放談ページへ」 をリンクしておきます。訴状が載っています。
訴      状

平成21年5月1日



東京地方裁判所 御中



原告代理人 弁護士  吉  田     勧





原 告  和  合  秀  典



〒133-0056

東京都江戸川区南小岩7丁目26番21号―402

ペガサス・ステーション・プラザ小岩

吉田法律事務所(送達場所)

原告訴訟代理人

弁護士  吉  田     勧

TEL 03-3659-0480

FAX 03-5694-1344

〒100-0013

      東京都千代田区霞が関三丁目3番2号

            被 告  東日本高速道路株式会社

           代表者代表取締役  井  上  啓  一

〒100-8977

東京都千代田区霞が関一丁目1番1号

被 告    国

代表者法務大臣  森     英  介

高速道路通行料返還等請求事件

訴訟物の価額金150万3800円

貼用印紙額1万3000円





請 求 の 趣 旨



1 被告らは原告対し、連帯して、金150万3800円及びこれに対する平成21年4月27日から支払い済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告らの負担とする。



との判決並びに仮執行の宣言を求める。



請 求 の 原 因



第1 当事者の地位

1 被告東日本高速道路株式会社(以下、単に「被告会社」という。)は、関越自動車道を含む高速道路の維持及び管理その他の関連事業を行う者である。

2 被告国は、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)、道路整備に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和33年法律第34号)を制定、施行し、これを運用する者である。

3 原告和合秀典(以下、「原告和合」という)は、埼玉県戸田市に居住する者である。



第2 原告の関越自動車道の利用と通行料金の支払い

 原告和合は、所用のため、平成21年4月26日、その主として活動している東京都内から関越自動車道を利用して、普通乗用自動車で群馬県伊勢崎市付近ま
で往復し、その通行料として被告会社の伊勢崎料金所(往路)及び練馬料金所(復路)において、それぞれ現金で金2900円(合計金5800円)を支払った
(甲第1号証の1、2)。原告は、いわゆるETC(ノンストップ自動料金収受システム、以下「ETC」という。)を利用していない。



第3 被告国の政策による被告会社のETC搭載車に対する高速道路通行料金割引の実施

 被告国は、「新たな経済政策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議」において策定した「生活対策」の一環として高速道路の土日祝日の上限料
金を1,000円とする割引や平日の全時間帯に3割引を導入するなどETCを活用した高速道路の料金引き下げを実施することを決定し、これに基づき独立行
政法人日本高速道路保有・債務返済機構及び被告会社を含む高速道路株式会社6社が道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律第7条に基づき、国
土交通大臣の同意を得て、平成21年3月20日の本四及びアクアラインの休日特別割引を皮切りに、同年4月1日までに土日祝日に高速道路をETC搭載車で
通行する場合にはどこまで走っても通行料上限1,000円とするなどの割引事業を実施した(甲第2号証)。この事業は、ETCを利用する自動車に限って、
高速道路の通行料を割引くものである。



第4 ETC搭載車に限っての高速道路通行料割引の違憲性

 ETC搭載車に限って、土日祝日の高速道路の通行料を上限1000円に割引く上述の事業は、その根拠となる道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律に違反するものであるとともに、憲法第14条の「法の下の平等」に違反する違憲、違法な事業である。

1 第1に、この事業は道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律第7条により、「高速道路利便増進事業」として実施されているものであるが、
同法第2条第4項によれば、同事業による高速道路料金の割引は、「当該高速道路を含む道路の自動車交通の円滑化のため必要と認められるもの」と規定されて
いる(同条同項第2号)。「生活対策」のために、同法で定める「高速道路利便増進事業」としての高速道路料金の割引を行なうのは、同法の認めていないこと
である。

2 のみならず、この事業はETC搭載車に限って通行料を割引く事業である。ETCの搭載には原則としてクレジット会社の発行するETCカードの利用が不
可欠である(甲第3号証の3)。また、ETC利用のためには、自動車にETCの車載器を取り付ける必要があるが、その料金は1万5,000円近くかかる。
東京、大阪などの大都市圏は格別、地方によっては公共交通機関が十分に整備されておらず、自動車はもはや贅沢品ではなく、生活必需品である。そうでありな
がら、クレジット会社がETCカードの発行を認め、1万5,000円近い高額の車載器を搭載できる者でなければ料金割引制度を利用できないこととなる。

  クレジット会社がETCカードの発行を認めない者であってもETCパーソナルカードを作り、ETCを利用することは可能である。しかし、このカードを
利用するには有料道路の平均利用月額の4倍の額、または年間最高利用月額を2万円単位で切り上げた額のいずれか高い額を、デポジットとして高速道路会社に
預託する必要がある。この預託金は高速道路料金不払いに備えての担保であり、これを利用して高速道路を通行することはできず、毎月の利用料を口座引落しさ
れることとなる。その上、未払いの(口座引落しの終了していない)高速道路料金がデポジット額の80%を超える場合や、利用実績によるデポジット額の増額
に応じない場合には利用停止となる。このデポジットは、解約時に無利息で返還されることになる(甲第3号証の4)。

  これらのことからすれば、いわゆる金融機関のブラックリストに載っている者、低所得者や収入の安定していない者など、クレジット会社がETCカードの
発行を認めず、かつ高額のデポジットを預託し高額の車載器を装着できない自動車運転者は、国の施策である高速道路料金の土日祝日割引などの恩恵を受けるこ
とができない。

  憲法14条は、法の下の平等を定めるが、この平等原則は当然に、低所得者など生活困窮者を不利益取扱いしないことを含むものである。高速道路等の利用
料徴収は、道路整備特別措置法第3条に基づき国土交通大臣の許可を受けて各高速道路会社が定めているものであり、今回の割引事業も道路整備事業に係る国の
財政上の特別措置に関する法律第7条により、国土交通大臣と協議し、その同意を得て実施されている。以上のように生活困窮者などが利用できない高速道路通
行料の割引事業が、国民の所得の多寡などにより、生活困窮者などを不当に差別する事業であることは明らかであり、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置
に関する法律第7条に基づく国土交通大臣の同意が憲法14条に違反する違憲、違法なものであること、その同意に基づくETC搭載車に限っての高速道路通行
料の割引が違憲、違法であることは明らかである。



第5 被告らの法的責任

1 被告会社が定めたETC搭載車に限って土日祝日の高速道路通行料の上限を1000円と定める事業が、憲法14条に違反する違憲、違法なものであること
は上述のとおりである。高速道路の通行料は、道路整備特別措置法、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律に基づいて国土交通大臣の許可、同
意を得て被告会社が一方的に定めるものであり、高速道路利用者はその定めた通行料を支払わなければならない。このような関係は、会社が一般国民から優越し
た地位に立って、その定めた通行料の支払いを義務付けるものであり、憲法が直接に適用される関係にあるというべきである。また、憲法14条に違反する違
憲、違法な高速道路通行料の割引は、公の秩序に違反し、民法90条により無効となるべき違法な定めである。したがって、そのような違憲、違法、無効な通行
料の定めによって、高速道路利用者に損害を与えた場合には、民法709条により不法行為として損害を賠償する責任がある。

2 ETC搭載車に限っての高速道路通行料の土日祝日割引などの事業は、上述のとおり、被告国の、「新たな経済政策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚
会議合同会議」において策定した「生活対策」の一環として行なわれているものであり、この事業の実施に対しては国土交通大臣が平成21年3月31日までに
は同意していることが明らかである。しかし、ETC搭載車に限って高速道路通行料の割引を行なうことは、憲法第14条に違反する違憲、違法なものであり、
そのような違憲、違法な事業に同意を与える国土交通大臣の行為もまた、違憲、違法なものである。したがって、これによって国民に損害を与えた場合には、国
家賠償法1条により、その損害を賠償する責任がある。

3 国の施策によって、ETC
搭載車に限って、高速道路の通行料を土日祝日の上限を1000円とする事業は、憲法14条に違反する違憲、違法なものであり、そのETC搭載車に限って割
引くという定めは無効であって、ETC搭載車でなくてもその上限は1000円とされるべきである。

  したがって、被告会社がETC搭載車でないことを理由として、土日祝日に高速道路を現金で通行する者から1000円を超える金額を受領したときは、被告国と被告会社の共同不法行為というべきであり、被告らは連帯してその損害を賠償すべき法的責任がある。



第6 原告の損害

1 原告は、上述のとおり、日曜日に被告会社の管理する高速道路である関越自動車道を東京都内から群馬県伊勢崎市付近まで往復し、片道1000円を超える
2900円(往復5800円)を現金で支払っている。その片道1000円を超える1900円は、被告会社が違憲、違法に収受した通行料であり、その過払い
額往復3800円は原告が受けた損害に当たる。

2 原告は、自身がETCを利用していないことにより、ETC搭載車から不当に差別されて高額な通行料を支払わされており、その精神的損害を慰藉するには、金150万円をもってするのが相当である。



第7 結語

  よって原告は、被告会社に対しては民法709条に基づき、被告国に対しては国家賠償法第1条に基づき、連帯して、その過払い通行料である金3800円
の返還と原告の慰謝料金150万円の合計金150万3800円の支払い、及びこれに対する原告の関越自動車道で通行料を過払いした翌日である平成21年4
月27日から支払済みまで、民事法定利率年5分の割合による遅延損害金を請求するため、本訴に及んだ次第である。

以上

証  拠  方  法



甲第1号証の1、2 領収書

甲第2号証 高速道路の料金引下げ(全国版)

甲第3号証の1 「ETC総合情報ポータルサイト」ホームページのトップページ

甲第3号証の2 同「このサイトについて」

甲第3号証の3 同「導入手続きの流れ」

甲第3号証の4 同「ETCパーソナルカード」

甲第4号証の1 「財団法人道路システム高度化推進機構」ホームページのトップページ

甲第4号証の2 同「設立趣旨」

甲第4号証の3 同「ETCとは」

甲第4号証の4 同「機構の役割」



添  付  書  類



1 訴訟委任状  1通

2 現在事項全部証明書  1通

3 甲号証写し 各1通