6月18日、高知新聞、「声ひろば」です。
「チョキチョキ」と「バンバン」
森本 早智男 76 自営業(高知市小倉町)
日課である朝のウォーキングの途中で二つの驚きに出合った。
市道の横に、ほとんど利用されていない短い歩道がある。
雑草や低木で覆われたやぶになっていた。
ある男性が、片手で持つ剪定ばさみで伸びた草や小枝を丁寧にチョキチョキやっていた。
その姿は、子どもの頭を刈る昭和のお父ちゃんを連想させた。
1ヶ月後、たった一つの小さな剪定ばさみにより、歩道両側の草木はバランスよく切りそろえられ、すっかり景観が変わった。
まるで庭園だ。
その美的センスに驚いた。
堤防道路の端っこの草がひざまで伸びて歩きにくくなっていた。
ある男性が、いたずらっ子のように、つえの長さほどの棒きれを振り上げて、草の根元をバンバンたたいていた。
根張りの強いススキが魔法にかかったように掘り起こされ、路上に転がるのを見て驚いた。
1ヶ月後、棒きれ一本で約200メートル区間の草たちは行儀よく倒れていた。
お見事だ。
剪定ばさみの達人と、棒きれの魔術師。
2人の共通点は口数の少ないシャイな人。
そして偶然にも2人は「散歩中の道草よね」と同じことを言った。
しゃれたせりふである。
「チョキ」と「バンバン」は、このところ見掛けない。
きっとどこかの散歩コースで、出会った人を驚かせているに違いない。
面白~く、おシャレ~な文章です。
この文章で「出合う」と「出会う」の使い分けをいまさら教わりました。