闇の子らの軍勢、
すなわちベリアルの眷属に対して、
光の子らは
戦いを仕掛けるであろう。
死海文書「戦いの巻物」
(第1洞窟出土。第1欄1行目)
どーも
ハミでやす
みなさま
ご機嫌よろしゅう
お盆でやす
2年前に逝った
ウチの父さんは
もどってきてるかな
無口な人ゆえ
こっそり
実家のリビングの隅っこに
鎮座しているかもな
生前から
あまり動かず
地蔵さまみたいに
じっと座っている人だった
おかえり父さん
ゆっくりしていってね
えー
話は変わるが
あっしは最近
死海のことが気になって
仕方ありませんのです
死海文書の存在も然ることながら
あっしは昔から
単純な欲求がありまして
死海に身を浸し
プカプカと
浮かんで
どざえもん、みたいに
漂ってみたいのです
ご存じでしょうが
死海はイスラエルとヨルダンにまたがる
湖でありますが
死海は塩分濃度が約30%
海水の10倍ほどの
強烈な濃度でありまして
ほぼ生物が生息できないのであります
そんな塩湖で
あっしは
塩にまみれて
上から下までしょっぱい女となる
塩で洗浄され
いままでの自分とは違った
ある意味、生まれ変わったような
なにかをそぎ落とした
清廉な何かに変身するのです
うふふ
塩漬けになったあっしは
お酒のあてにいいかもしれませんね
味見してくれ
1946年 切り立った崖にある洞窟から
壺に入った文書を発見したのは
三人のベドウィンの若者
群れからはぐれた山羊を捜していた
この事実
もうすでに
すばらしいストーリィである
まるで聖書の一篇のようだ
冒頭に引用した
闇の子、光の子の一文は
じつに興味深いです
神の意図した
40年にわたる
最終戦争を表していると言われています
文書をなぞるように
現実が追いかける
ああ、
あっしは
2000年の年月を超えて
不毛の大地に
憧憬を抱かざるを得ない
死海よ
ずいぶん遠いが
あっしを招いてはくれないか