母方の祖母は

母が小学生のころに

夭折した

 

四番目の子を産んだあと

産後の肥立ちが悪く

元来、蒲柳の質だったこともあり

そのまま床につき

帰らぬ人となった

 

長女だった母は

産まれたばかりの妹の

世話をすることになった

オンブしたまま

小学校に登校し

見かねた担任から

帰れや、トシ

と帰宅をうながされた

なんども聞かされた昔ばなしだ

 

亡くなった祖母の顔は

色褪せた一枚の写真に遺されている

どんな人だったのか

知ることはない

 

これまで

興味を持つこともなかった

私は大人になり家をでて

母の生家を訪ねることもなくなった

 

ただどこで暮らしても

子供のころに見せられた

祖母の一枚の古い写真は

記憶に刻まれていた

 

故郷と遠く離れて

暮らしていたが

人生とは奇妙なもので

なにかに引き寄せられるように

この街に戻ってきた

 

まるで決められて

いたかのようだった

 

仕事の関係で偶然

母の生家ちかくに

通うことが多くなった

そこは

山の麓の集落で

どこか懐かしいものがあった

すっかり遠ざかっていた場所に

呼ばれた気がした

 

ある日、お墓詣りの機会を得た

こうなることは予測できた

夏の日

祖母や先祖らのねむる墓に参った

なんだか

とても安心した

私のなかの

何かが得心した

言葉ではうまくいえないが

泡立ちが収まるように

内臓が穏やかになった