自分がやっているのは、最悪の子育てなのかもしれない。
父子家庭時代に、ウソで誤魔化せるという成功体験を積ませてしまい、再婚によって新しい価値観を持ち込んだ継母がウソを次々暴いていくことに、彼はどこかで憤慨を覚えてしまっている。
正しいことを言われても、心の深いところでは受け入れていない。
死んだ母のぬくもりのあった父子家庭時代の思い出は、バレぬウソを付けば「まあ辻褄はあっているな」と引き下がる父親との日々。
それも含めて、彼にとっては懐かしいぬくもりになっている。
死んだ母の残り香の中での生活を取り上げられた息子には、ウソはダメだという父の厳しい態度も、裏切りに思えているのではないか。
それでも、ウソはダメだと言うのが親の務め。
1ヶ月やそこら、向き合ったくらいでは解決しない心の闇がある。
挫けてはいけない。
愛をもって、厳しくあらねば。