先日買った、佐々木譲の『天下城』。
一気に読んでしまわないよう、少しずつ、味わいながら読んでいます。
城を攻め落とされ、家が滅ぶ。
戦乱の中、ひとりで放り出された若者は、金山で奴碑として働き、やがて自由を得て、漂白の軍師の従者として諸国を放浪する。
次第に芽生える“落ちぬ城”への思いを胸を抱きながら。
師の死によって再びひとりとなった若者は、不思議な縁に導かれ、石積の一族・穴太衆と邂逅する。
開花し始める才、それに対する嫉妬、心惹かれる女性との出会い、そして自分は軍師等にはなれないのだ、という諦めの中で気づく、己の生き方。
後に、安土城を築くこととなる城造りの匠の生涯。上巻三分の二程のところで、彼が己の生き方を定めるシーンで、最初のクライマックスが訪れます。
穴太衆の親方の娘を、腹に父親のわからぬ子がいることを知りつつ娶ると決める主人公、市郎太。その直後に堺から西洋式の石積みの城を作る話が。
生き方を決めた男は、最初の大仕事に向います。
※
主人公・市郎太が、己の生き方を決める場面。そしてその後の堺行き。ここから彼は、時代の大舞台に踊り出すことになるはずです。
このあたりの展開は、鳥肌ゾワゾワものでした。
『獅子の城塞』を読んだ時も思いましたが、佐々木譲という人は、男の人生を描く作家ですね。
この後訪れるのは、今や覇王となった織田信長との再開、いよいよ花開くであろう城造りの才、穴太衆の跡取りを巡るいざこざや、己の血ではない息子との相克・・・。
男の人生は、青年期が終わったここからが本番です。
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