「お父さん、お母さんにお願いしたいことがある。だから、ロウソクに火をつけて。」

居間にある妻の遺影と骨壺を置いた小さな祭壇。
妻ときちんと話をするときは、ロウソクに火をつけることにしています。

言われた通り火をつけると、息子は、ひとしきり何かを母親にお願いしていました。

「何をお願いしたんだ?」
「お父さんが67歳になっても、元気でいますようにって」

こいつ、そんなことを。

「ありがとう。でも、なんで67歳なんだ? 70歳とか80歳とか、もっと上の歳でもいいじゃないか」

息子は分かってないな、という顔をして、
「だって、洋子ばあばは、67歳で死んじゃったんだよ。だから、まずは67歳まで生きないと。」

「そっか。そうだな。ありがとう。」

目を閉じて、空を仰ぎたい気持ちになりました。
この子は7歳にして、母親と祖母の死を間近に見ている。
あまりにも、死が身近にあり過ぎる。

せめて俺くらいは長生きしなければ。
そう思った土曜日の夜。

私も、妻の遺影に手を合わせました。


※ 鉄道博物館にて。
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