インフルエンザ休暇も後半になると、本人も徐々に元気になり、次第に他人にうつさないための休暇という意味合いが強くなります。

私の場合は、昨日の夕方からがそんな状態でした。

気持ちと体に余裕ができ、しかも仕事のことも一時忘れていられる時間。それは即ち、久しぶりに武術のことを考える時間ができた、ということ。

もちろん、そんな風に論理立てて考えていたわけではありませんが(笑)、ふと思い立ち、休会中の合気道会派の最近の稽古風景をネットでチラチラ見てしまいました。

懐かしいですね。
私が休会する直前に茶帯になった先輩が黒帯になっていたり、当時入会したばかりの方が茶帯になっていたり、浦島太郎気分を味わいながら、組手動画を見て「自分ならどう動くか」を考えていました。

この会派の面白いところは、(以前にも何度か書きましたが)養神館合気道の流れを組んでいながら、打撃ありの自由組手を行うところ。フルコン空手打撃に首相撲と、伝統的流れを合気道の投げ技・関節技を出してよいルールで自由攻防を行います。
見た目にはモゾモゾしているのですが、首相撲も認めていること(どうやら会派方針ではなく私が通っていたこの道場のみの特例のようです)で、結構実践的になっていると感じます。

突き・蹴りの距離から始まり、モゾモゾと組み合い、絡み合って暫くしてから決まるやや地味な投げ。その攻防は、見映えはいまいちなのですが、護身で使える技法が多く含まれています。

この会派所属時の私は、
1.自らが打撃を捌いての投げを修得する
2.打撃を捌いての掴み・投げを試みる相手に、それでも打撃を入れるコツを掴む
の2つを目標に稽古をしていました。

久しぶりに、会派の自由組手を見ながら2つ思ったことがあります。

一つは、攻防する両者が打撃を捨てる距離でも「まだ打撃で行ける」ということ。
一方が片手を浅く首に引っかけられた段階で、完全な組みの攻防に移行することが多い(私の所属時もそうでした)のですが、あそこから出せる打撃はまだあります。
少々嫌らしい技ですが、拳を肩の高さから斜め下に打ち下ろして相手臍下を打つ下段突き(沖縄剛柔流の久場戦勢に教えていただいた技)。一撃必倒の突きではありませんが、あまりない打ち方&あまりない衝撃なので相手があるので戸惑い、動きが一瞬止まります。

相手が左手でこちらの首右側を引っかけた時に、こちらは体をやや時計回りに転体して左の下段突きを出すと決まりそうです(妄想)。
相手が嫌がって体を前傾させたら、右拳で相手の左肋部を下から突き上げるように打てそうです(さらに妄想)。
そこまで打撃が入れば、サバキ風に、相手前足をインローで刈って前に引き摺り倒したいですね。(さらにさらに妄想ですが、これの出来損ないは何度か成功したことがあります)


思ったことの2つ目は、上段受けの重要性。
伝統的な合気道の投げ・関節に首相撲を加えて自由攻防を行うこの会派の組手ですが、最後の決め技は合気道的であっても、打撃から組みに移行する最初の展開は、首取りであることがほとんどです。

突きにくる手を空中で捉えて、合気道演武的に投げる場面は、私はまだ見たことがありません。
突き蹴り距離を首取り(まずは片手から)です潰し、打撃で攻めたい相手にも「これは打撃を出している場合ではない」と思わせてから組みの攻防が始まり、その結果として合気道的な投げ・関節が決まる、という展開がほとんどです。

伝統的な合気道の入り方だけでは(よほど実力差がなければ)引きの早い本気の打撃を捉えることは困難(この理由を議論すると長くなりますが、端的に言えば合気道が想定する相手の攻撃は剣・短剣による突き・斬りであり、それは体重移動を伴い“引き”が無いものだから、だと私は考えています)。その課題を克服するために首取り・首相撲を取り入れたのは、うちの先生の英断だったのだと思います。

さてその首取りですが、実はそれを捌くための型稽古がありません。伝統的な合気道の型に無い技法なため、型としての対処方法を教えられていないのです。
そのため、首取りは“早い者勝ち”的な側面があり、常に先の取り合いの様相を呈します。加えて、一旦取られてからは“首を取られた、然らばこちらも首を取り、首取り対首取りだ”という攻防になり勝ちです。

今回思ったのは、「でも、首取りの攻防も受け返しの型があれば、後の先の攻防もできるのでは?」ということ。

首を取りにくる手を払い、往なし、自分の攻め(打撃でも、投げでも)に繋げる型をちゃんと作っておけば、錬成次第で後の先もあるはず。首を取られた、然らばこちらも首を取り、首取り対首取りだ、ではない攻防もあるはずです。

ここで悲しいのは、合気道に首取りの型が無いことに加え、私のかつてのフルコン経験絡もう頭部にくるフック的な動き(首取りは掌底フックのようなものです)に反応する脳内回路が作られていないこと。

しかし、考えてみれば、空手の型には、
首取りに対処する後の先技法と取れる動作がたくさん含まれています。

平安二段(ピンアン初段)の初手や、観空(クーサンクー)の初手などはその代表でしょう。
前者は、相手の首取りを後ろ手で外に払いながら前手でアイテム顔面を裏当て、とするのが自然な解釈でしょうか? 顔面を打たないこの、理由を会派の組手ルールで使うには、前手をくちら主導の首取りとするのが穏当かもしれません。

観空のそれは、挙げた両受け手を下ろし、下で合わせるのが深いところ。合気道を少しかじった者には、これが四方投げの入り口に見えます。

相手の左手による首取りを、こちらは右手で上段に払いつつ下に下げ、そこを左手で下から上に迎えに行って持ち替える。この体勢から繋げるのはまずは四方投げでしょう。
錬成すれば、できそうな気がします(妄想です)。

相手が四方投げには行かせない、と左手を引いた時には、その左手首を掴んでいるこちらの左手を引かれるには任せて右足を一歩踏み出し(歩み足)、右縦拳を左手の上を滑らすよう突き出すのも、良さそうな気がします(妄想)。
平安二段(ピンアン初段)や観空(クーサンクー)の貫手(突き手の肘下に逆手を添えた形)の心持ちで。

妄想度がどんどん高まるので、今日はこのくらいで留めますが、一人稽古で反復し、錬成しておけば、首取りを、巡る後の先の義方として使えそうな気がするところです。

・・・でも、やはり、検証しないことには前に進めませんよね。

条件がある程度揃ったら、またこの会派に復帰したいものです。