東京駅の書店で水木しげるの「敗走記」が目に入り、ひとり出張のお友に購入。

「ゲゲゲの女房」で、名作「総員玉砕せよ」のプロトタイプとして登場した短編戦記マンガです。

収録作は、
・敗走記
・ダンピール海峡
・レーモン河畔
・KANDERE
・ごきぶり
・幽霊艦長

発表された時期がさまざまであったことも影響していると思いますが、戦争の描かれ方が作品ごとに異なっています。
思想・イデオロギーの左右を問わず、戦争を一面に評価する言説に触れることが多い今、そこに新鮮さを感じました。

戦地におけるかつての帝国陸海軍の理不尽さを描くだけでなく、戦地に赴いた日本人が胸に抱いた護国の想いも描く。祖国防衛のために命をかけた兵士が東京裁判で戦犯として裁かれる悲しさも。
しかし一方で「現地人のように殺してしまうか」という会話が普通に飛び出す日常に、異邦に展開された軍隊が現地において加害者となる現実をも隠さず描く。

思想によって歴史を裁くのではなく、思想以前の自らの体験が基盤にある点が、水木戦記の特徴なのだと思いました。

収録作全てが名作でしたが、今の私の印象に残ったのは「ダンピール海峡」でした。

日清日露から受け継がれた戦旗に込められた歴史に、戦前の日本人が背負っていた国家の重さを感じます。この重さを背負った人々がいたから、今があるのですよね。

敗走記 (講談社文庫 み 36-12)/水木 しげる

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