腰痛静養のため会社を休んでDVDを見ています。いま見ているのは、NHKスペシャルの「自動車革命」第二回。

話には聞いていましたが、中国の電気自動車開発はスゴいことになっていますね。10年後の自動車業界は勢力図が大きく変わっているのは間違いないでしょう。

番組を見ながら、思わずにはいられなかったのが、次世代のエコカーは燃料電池自動車だ、と莫大な開発費を燃料電池技術や水素貯蔵技術に費やしてきた2000年以降の日本の自動車業界。もちろん電気自動車に繋がる二次電池は燃料電池自動車や既存のハイブリッド自動車にも大きく関わるため、開発の手を抜くようなことはなかったはずですが、今思えば失われた10年だったのかもしれない、と。

燃料電池自動車は、その技術的困難性故に、既存の自動車企業が他業界からの参入障壁を維持できるエコカーでした。電気が動力になるため、電気自動車と同様、自動車が従来の「すり合わせ型」から「組み立て型」の清貧になってしまうという点では、電気自動車と同様、既存の自動車産業には大きなデメリットがあるわけですが、技術的な困難性を克服する際に生まれる幾多の技術的ブラックボックスが、それを特許で守った企業に大きな恩恵をもたらすことは明らかでした。また、その解決方法の多くは素材開発によるものであり、“素材力”に優位性を持つ日本の産業界にとっては将来の成長を期待させるものでした。環境対策と産業育成の両面から強く望まれてきたのが燃料電池自動車ですが、その後の開発の中で、製造コストも水素充填スタンド普及のための社会コストも十分には下がらず、新興国の中産階級を市場に伸びようとする電池自動車に“普及力”の面で全く及ばないことが分かってきました。

誤解を恐れずに言えば、電気自動車はあまりにも簡単です。
いくつかの性能面に目をつぶれば、それは誰にでも開発できるものであり、「組み立て型」で製造できてしkまうため、メーカーは“デル”になればよいのであり、“トヨタグループ”になる必要はありません。それは、究極のエコカーであっても、既存の自動車メーカーにとってすれば、開きたくないパンドラの箱。
しかし、そのパンドラの箱が開かれてしまった今、箱の存在を隠し、忘れたふりをして燃料電池自動車の開発に注力した10年間が、恨めしく思えます。

実は、私自身、少し前(2005年頃)までは、国プロや自動車メーカーから委託を受けて燃料電池自動車開発の技術動向調査をしていた身です。燃料電池自動車の商用化への道程について、「あのアプローチは袋小路」「あのアプローチは有望」と燃料電池内に閉じた技術の優勝劣敗じゃ報告しこそすれ、燃料電池自動車こそ次世代エコカーの本命という前提を疑うような視点を持ちえていませんでした。

ほんの数年先でも未来を読むのは難しい・・・。