この連休は、伊豆方面に小旅行に行ってきました。
その車中で読んだのが↓。
竹森俊平(2007年):「1997年-世界を変えた金融危機」
興味深かった部分をメモとして書き出します。
(1)結論
「97年から98年にかけての金融危機に対して採られた政策こそが07年のサブプライム問題を生むひとつの要因となった。」(p.18)
(2)97年の金融危機について
「こういう時(=金融システムの不安が信用収縮を生んだとき)には金融システムは本来の役割、すなわち実体経済が必要とする流動性の供給を果たす代わりにに、むしろ実体経済から流動性を吸収しようとする。」(p.35)
「そもそも金融危機は、債務の支払いが滞ることで起きる。なぜ滞るのか。『返済能力の問題』、もしくは『流動性の問題』のいずれかのためだ。」(p.37)
「銀行業は、債務と資産の期間構造の違いによる『流動性の問題』をつねに抱える。」(p.38)
「自国通貨を自由に発行することができる中央銀行は『最後の貸し手』の機能を十全に発揮できる。」
「(1997年の金融危機において)日本の金融機関の持つ債務は円建てであったから、危機に際して政府・日銀が望むなら金融機関を救済することは容易であった。」(p.39)
「他方で、97年に通貨危機に見舞われた5ヶ国を含めて、東アジアの新興工業国の抱えていた債務は、ドル建てが主体だった。したがって取り付け騒ぎが発生した場合、政府・中央銀行は『ドル準備』の範囲でしか救済に応じることができなかった。」(p.39)
「5ヶ国に危機が発生したのは、長期的な投資のための資金を短期的な債務によって、しかもドル建てで調達していたためである。」(p.53)
(3)ナイトの不確実性と金融危機
「客観的な事実を述べるならば、戦後において先進国が自国通貨建てで発行した国債のディフォルトをした事例もなければ、ある国の通貨が国際通貨としての地位を過剰な経常収支赤字によって喪失したという事例もない。だから、どちらも『不確実性』である。」(p.103)
「『不確実性』に対する合理的な判断は不可能というナイトの立場からすれば、『ディフォルト』や『通貨信用』について、これだけ堂々と議論できるというのは眉唾だ。経済学はそこまで強力ではない。」(p.104)
(4)流動性と金融危機
「『流動性』というのは、経済学者の議論でよく出てくる、分かったようで分からない言葉だが、とりあえず『現金』と考えていただきたい(厳密に言うと、現金化するのが容易な資産も『流動性』と呼ぶこともある)。」(p.134)
「現金は利子も配当もつかない収益性がゼロの資産だから、金融機関としてはできるだけ持ちたくない。それで、可能な限り現金の保有を減らそうとする。」(p.135)
「人々が『流動性への選好』を一気に強めることによって金融危機がさらに増幅する」(p.136)
「1998年において、LTCMは、非流動的な資産に集中した大きなポジションを持っていました。金融危機の結果、LTCMは資本市場において、それまでのように現金を供給する側から巨額の現金を需要する側に立場を変えなければいけなくなり、それで大損害をこうむって自己資本を喪失したのです。」(p.138、ショールズの2000年の講演から)
(5)貯蓄と投資のアンバランス
「『計画された貯蓄』が『計画された投資』を上回る状況では、経済は不況圧力に見舞われる。両者のギャップの分だけ、総需要(消費+投資)に結びつかない総供給が発生するからだ。」(p.146)
「97年から98年にかけての極東での金融危機は、まさにそのような傾向を発生させた。」(p.146)
(6)グリーンスパンの功績、その最終評価を困難にするもの
「第一は、『ITバブル』崩壊後の景気後退を防止するための連銀の攻撃的な金融緩和が、『住宅バブル』を発生させてしまったことが今後どれだけの問題を生むかである。」(p.157)
「この研究(ケネス・ロゴフ)は、『ITバブル』のような株式バブル崩壊の場合に経済が被る後遺症と、『住宅バブル』のような不動産バブルの崩壊後に経済が被る後遺症とを、過去の事例をもとに比較分析している。不動産バブルの崩壊による後遺症の方が長引き、かつ深刻なものだというのがその結論である。」(p.157)
「第二の不確定要素がある。すなわち、アメリカの住宅投資と消費の盛り上がりの副産物である経常収支赤字の拡大である。」(p.158)
「ドル価値が一応の安定を保っている背景には、中国や他の東アジアの国々などによるドル安を防ぐための為替介入も働いている。」(p.160)
「しかし、おそらくはほかの要因も働いている。そもそも経常収支赤字と通貨価値の間に理論的に明確な関係は存在せず、すべては『ナイトの不確実性』の霧に包まれている。」(p.160)
(7)通貨価値と経常収支赤字の関係
「そもそもドル価値を安定させるため、アメリカが経常収支を均衡させるべきだという議論は、ドルの発行主体が『収支均衡』を達成しなければならないという主張である。・・・(中略)・・・アメリカが『ドル』という紙切れを発行するだけで相手から『財・サービス』を受け取ることは許されないというのが、この議論の趣旨である。」(p.161)
「しかるに、一国内の政府・中央銀行を考えてみれば、『収支均衡』はまるで満たされていない。政府・日銀は『円』を発行し、『財・サービス』を購入する代金としてそれを民間に渡すだけであり、発行した『円』と同額の『財・サービス』を後から生産して、それと交換に先に発行した『円』を吸収するという作業は行っていない。」(p.161)
「経済理論の観点からは、『不換紙幣』とは『バブル』に他ならない。」(p.161)
「1997年以降には、パニックによって金融資産の信用が失われ、人々が『流動性』を求めて奔走した時期があったが、なぜかアメリカの経常収支赤字の膨張にも関わらず、『流動性』、すなわち『ドル』に対する信用が失われたことはなかった。」(p.164)
「その理由は、少なくとも二つ考えられる。第一は、通貨の信用崩壊のもっとも明らかな兆候である『インフレ』が起こっていないことである。また第二には、東アジアにおいて中国のように大量のドル買いを介入をする国があったり、日本のように低金利政策を取る国があったりするため、ドル安がおき難い状況になっていることである。」(p.164)
(8)東アジア諸国はなぜ為替介入したのか
「第一の理由はこうだ。97年に東アジア通貨危機に見舞われた国は、ひとつの教訓を得た。外貨準備が大切だということだ。あの当時、短期的な対外債務に見合うだけの外貨準備があったなら、IMFの軍門に下る屈辱を経験せずに済み、突然のマイナス成長ににも見舞われなかった。」(p.168)
「この教訓に従って、これらの国々の政府は積極的にドルを購入し、それを米国財務省債(TB)に運用して外貨準備を積み増したのである。」(p.168)
(第二の理由は)「日本や中国、さらに東アジア通貨危機の当事国は、輸出主導の景気回復や経済成長を目指した。そのために必要と考えて為替介入を実行したのである。」(p.169)
(日本の場合)「景気拡大の始まった2002年の総需要成長のうち、なんと80パーセントは輸出で、他の年も04年までは輸出の寄与は5割前後に上り、05年になってようやく内需が総需要成長の中心となっている。」(p.170)
「21世紀初めの世界経済を考えると、中国を含む多くの東アジアの新興工業国がドルに対する固定為替制度を取っており、それに加え日本までがドルに対する為替レートの安定化を図り、積極的な為替介入を行ったので、時ならず巨大な『ドル圏』が誕生することとなった。」(p.171)
「マーティン・ウォルフは、『連銀が世界の約半分の中央銀行になった』という言葉で表現している。」(p.171)
(9)そしてアメリカに資金が流れた
(東アジアの国々は)「先進国から借りるどころか、彼らは先進国への貸し手になった。それが世界的な『貯蓄過剰』を生んでグローバル・インバランスの原因となっている」(p.206)
「発展の見込みの高い新興工業国から、成熟を遂げた先進国へ資本が流れ続けているという現状は、やはり不自然なことは確かである。」(p.208)
「新興工業国の資本はもっとも完備されたアメリカの資本市場に向かうようになった。これが彼(カバレロ)の結論である。」(p.209)
「97年に姿を現した『不確実性』のブラックホールへの国際投資家の反応、つまり手堅い作戦への転換は、アメリカの資本主義の興隆をもたらした。他方で、国際投資家は、アメリカの対外債務の膨張という『不確実性』には、現在はさほど神経を使っていないのである。」(p.209)
「もし彼らがドル暴落という『不確実性』の方を気にしだして、別の手堅い作戦に転じたら、世界経済は揺さぶられる。一体、何が起こるだろうか。」(p.210)
■□■□■□■□■□
知的好奇心が刺激され、楽しめた本でした。
しかし、こうして面白かった部分を取り出して並べてみると、実は議論の流れがフラフラしているような気がします。
ムリヤリまとめてみると↓のようになりますでしょうか?
●1● 97年の金融危機以降、アジアの新興工業国は、流動性への選好を強めて、膨大な外貨準備をドルで積み増すようになった。
●2● 一方、日中が輸出主導の景気拡大を目指す方針から、為替介入を行い、ドル高を維持しようとした。
●3● 両者が組み合わさり、アメリカとアジアが巨大なドル圏となり、ドル圏諸国の中で唯一ドルを発行できるアメリカが、ドル紙幣を刷るだけで財・サービスを得られる状況が生まれた。
●4● グリーンスパンによるITバブル崩壊対策である攻撃的な金融政策も、不動産バブルを生み、アメリカ国内の財・サービスの消費を促進した。
●5● こうしたアメリカにおける消費の促進が、輸出主導の景気拡大を目指す東アジアに反映をもたらした。特に、中国の興隆のエンジンとなった。
(不確実性の時代に利潤を生むのは、楽観的な行動であり、アメリカの不動産バブルによった消費の拡大は、その1つであった。)
●6● しかし、その結果、アメリカの経常収支赤字は大きく拡大。
●7● アメリカとアジア諸国の関係を、中央銀行と国民の関係に置き換えれば、中央銀行が、国民に対して経常収支赤字があるのは当然。理論的には、それを以って、ドルの通貨信用の収縮には結び付かない。
●8● ただし、不換紙幣がバブルであるという本質を考えれば、直接理論的に結びつかない根拠であっても、バブル崩壊の原因になる可能性は否定できない。既に
、ナイトの不確実性の領域に入っている。
●9● そうした根本的なドル=国際通貨時代の終焉とは別にしても、既にアメリカの不動産バブルは弾けた。不確実性の時代に利潤を生むのは、楽観的な行動であるが、不動産バブルの崩壊は、その担い手であったアメリカの失速を意味する。今後の世界経済への影響は大きい。
* * *
●3●と●7● が非常に面白い部分でしたが、それ以外は、実は普通?
「ナイトの不確実性」の議論も、(私の理解力がないためだと思いますが)なんだか仰々しく紹介されたわりには、当たり前のことの説明にばかり使われていたような気もします。
(●7●の面白さも、実は結論にはあまり影響が無いのがつまらないですね。)
でも、●3●と●7●
に気づかせてくれたという意味では、とても勉強になった一冊でした。
その車中で読んだのが↓。
竹森俊平(2007年):「1997年-世界を変えた金融危機」
興味深かった部分をメモとして書き出します。
(1)結論
「97年から98年にかけての金融危機に対して採られた政策こそが07年のサブプライム問題を生むひとつの要因となった。」(p.18)
(2)97年の金融危機について
「こういう時(=金融システムの不安が信用収縮を生んだとき)には金融システムは本来の役割、すなわち実体経済が必要とする流動性の供給を果たす代わりにに、むしろ実体経済から流動性を吸収しようとする。」(p.35)
「そもそも金融危機は、債務の支払いが滞ることで起きる。なぜ滞るのか。『返済能力の問題』、もしくは『流動性の問題』のいずれかのためだ。」(p.37)
「銀行業は、債務と資産の期間構造の違いによる『流動性の問題』をつねに抱える。」(p.38)
「自国通貨を自由に発行することができる中央銀行は『最後の貸し手』の機能を十全に発揮できる。」
「(1997年の金融危機において)日本の金融機関の持つ債務は円建てであったから、危機に際して政府・日銀が望むなら金融機関を救済することは容易であった。」(p.39)
「他方で、97年に通貨危機に見舞われた5ヶ国を含めて、東アジアの新興工業国の抱えていた債務は、ドル建てが主体だった。したがって取り付け騒ぎが発生した場合、政府・中央銀行は『ドル準備』の範囲でしか救済に応じることができなかった。」(p.39)
「5ヶ国に危機が発生したのは、長期的な投資のための資金を短期的な債務によって、しかもドル建てで調達していたためである。」(p.53)
(3)ナイトの不確実性と金融危機
「客観的な事実を述べるならば、戦後において先進国が自国通貨建てで発行した国債のディフォルトをした事例もなければ、ある国の通貨が国際通貨としての地位を過剰な経常収支赤字によって喪失したという事例もない。だから、どちらも『不確実性』である。」(p.103)
「『不確実性』に対する合理的な判断は不可能というナイトの立場からすれば、『ディフォルト』や『通貨信用』について、これだけ堂々と議論できるというのは眉唾だ。経済学はそこまで強力ではない。」(p.104)
(4)流動性と金融危機
「『流動性』というのは、経済学者の議論でよく出てくる、分かったようで分からない言葉だが、とりあえず『現金』と考えていただきたい(厳密に言うと、現金化するのが容易な資産も『流動性』と呼ぶこともある)。」(p.134)
「現金は利子も配当もつかない収益性がゼロの資産だから、金融機関としてはできるだけ持ちたくない。それで、可能な限り現金の保有を減らそうとする。」(p.135)
「人々が『流動性への選好』を一気に強めることによって金融危機がさらに増幅する」(p.136)
「1998年において、LTCMは、非流動的な資産に集中した大きなポジションを持っていました。金融危機の結果、LTCMは資本市場において、それまでのように現金を供給する側から巨額の現金を需要する側に立場を変えなければいけなくなり、それで大損害をこうむって自己資本を喪失したのです。」(p.138、ショールズの2000年の講演から)
(5)貯蓄と投資のアンバランス
「『計画された貯蓄』が『計画された投資』を上回る状況では、経済は不況圧力に見舞われる。両者のギャップの分だけ、総需要(消費+投資)に結びつかない総供給が発生するからだ。」(p.146)
「97年から98年にかけての極東での金融危機は、まさにそのような傾向を発生させた。」(p.146)
(6)グリーンスパンの功績、その最終評価を困難にするもの
「第一は、『ITバブル』崩壊後の景気後退を防止するための連銀の攻撃的な金融緩和が、『住宅バブル』を発生させてしまったことが今後どれだけの問題を生むかである。」(p.157)
「この研究(ケネス・ロゴフ)は、『ITバブル』のような株式バブル崩壊の場合に経済が被る後遺症と、『住宅バブル』のような不動産バブルの崩壊後に経済が被る後遺症とを、過去の事例をもとに比較分析している。不動産バブルの崩壊による後遺症の方が長引き、かつ深刻なものだというのがその結論である。」(p.157)
「第二の不確定要素がある。すなわち、アメリカの住宅投資と消費の盛り上がりの副産物である経常収支赤字の拡大である。」(p.158)
「ドル価値が一応の安定を保っている背景には、中国や他の東アジアの国々などによるドル安を防ぐための為替介入も働いている。」(p.160)
「しかし、おそらくはほかの要因も働いている。そもそも経常収支赤字と通貨価値の間に理論的に明確な関係は存在せず、すべては『ナイトの不確実性』の霧に包まれている。」(p.160)
(7)通貨価値と経常収支赤字の関係
「そもそもドル価値を安定させるため、アメリカが経常収支を均衡させるべきだという議論は、ドルの発行主体が『収支均衡』を達成しなければならないという主張である。・・・(中略)・・・アメリカが『ドル』という紙切れを発行するだけで相手から『財・サービス』を受け取ることは許されないというのが、この議論の趣旨である。」(p.161)
「しかるに、一国内の政府・中央銀行を考えてみれば、『収支均衡』はまるで満たされていない。政府・日銀は『円』を発行し、『財・サービス』を購入する代金としてそれを民間に渡すだけであり、発行した『円』と同額の『財・サービス』を後から生産して、それと交換に先に発行した『円』を吸収するという作業は行っていない。」(p.161)
「経済理論の観点からは、『不換紙幣』とは『バブル』に他ならない。」(p.161)
「1997年以降には、パニックによって金融資産の信用が失われ、人々が『流動性』を求めて奔走した時期があったが、なぜかアメリカの経常収支赤字の膨張にも関わらず、『流動性』、すなわち『ドル』に対する信用が失われたことはなかった。」(p.164)
「その理由は、少なくとも二つ考えられる。第一は、通貨の信用崩壊のもっとも明らかな兆候である『インフレ』が起こっていないことである。また第二には、東アジアにおいて中国のように大量のドル買いを介入をする国があったり、日本のように低金利政策を取る国があったりするため、ドル安がおき難い状況になっていることである。」(p.164)
(8)東アジア諸国はなぜ為替介入したのか
「第一の理由はこうだ。97年に東アジア通貨危機に見舞われた国は、ひとつの教訓を得た。外貨準備が大切だということだ。あの当時、短期的な対外債務に見合うだけの外貨準備があったなら、IMFの軍門に下る屈辱を経験せずに済み、突然のマイナス成長ににも見舞われなかった。」(p.168)
「この教訓に従って、これらの国々の政府は積極的にドルを購入し、それを米国財務省債(TB)に運用して外貨準備を積み増したのである。」(p.168)
(第二の理由は)「日本や中国、さらに東アジア通貨危機の当事国は、輸出主導の景気回復や経済成長を目指した。そのために必要と考えて為替介入を実行したのである。」(p.169)
(日本の場合)「景気拡大の始まった2002年の総需要成長のうち、なんと80パーセントは輸出で、他の年も04年までは輸出の寄与は5割前後に上り、05年になってようやく内需が総需要成長の中心となっている。」(p.170)
「21世紀初めの世界経済を考えると、中国を含む多くの東アジアの新興工業国がドルに対する固定為替制度を取っており、それに加え日本までがドルに対する為替レートの安定化を図り、積極的な為替介入を行ったので、時ならず巨大な『ドル圏』が誕生することとなった。」(p.171)
「マーティン・ウォルフは、『連銀が世界の約半分の中央銀行になった』という言葉で表現している。」(p.171)
(9)そしてアメリカに資金が流れた
(東アジアの国々は)「先進国から借りるどころか、彼らは先進国への貸し手になった。それが世界的な『貯蓄過剰』を生んでグローバル・インバランスの原因となっている」(p.206)
「発展の見込みの高い新興工業国から、成熟を遂げた先進国へ資本が流れ続けているという現状は、やはり不自然なことは確かである。」(p.208)
「新興工業国の資本はもっとも完備されたアメリカの資本市場に向かうようになった。これが彼(カバレロ)の結論である。」(p.209)
「97年に姿を現した『不確実性』のブラックホールへの国際投資家の反応、つまり手堅い作戦への転換は、アメリカの資本主義の興隆をもたらした。他方で、国際投資家は、アメリカの対外債務の膨張という『不確実性』には、現在はさほど神経を使っていないのである。」(p.209)
「もし彼らがドル暴落という『不確実性』の方を気にしだして、別の手堅い作戦に転じたら、世界経済は揺さぶられる。一体、何が起こるだろうか。」(p.210)
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知的好奇心が刺激され、楽しめた本でした。
しかし、こうして面白かった部分を取り出して並べてみると、実は議論の流れがフラフラしているような気がします。
ムリヤリまとめてみると↓のようになりますでしょうか?
●1● 97年の金融危機以降、アジアの新興工業国は、流動性への選好を強めて、膨大な外貨準備をドルで積み増すようになった。
●2● 一方、日中が輸出主導の景気拡大を目指す方針から、為替介入を行い、ドル高を維持しようとした。
●3● 両者が組み合わさり、アメリカとアジアが巨大なドル圏となり、ドル圏諸国の中で唯一ドルを発行できるアメリカが、ドル紙幣を刷るだけで財・サービスを得られる状況が生まれた。
●4● グリーンスパンによるITバブル崩壊対策である攻撃的な金融政策も、不動産バブルを生み、アメリカ国内の財・サービスの消費を促進した。
●5● こうしたアメリカにおける消費の促進が、輸出主導の景気拡大を目指す東アジアに反映をもたらした。特に、中国の興隆のエンジンとなった。
(不確実性の時代に利潤を生むのは、楽観的な行動であり、アメリカの不動産バブルによった消費の拡大は、その1つであった。)
●6● しかし、その結果、アメリカの経常収支赤字は大きく拡大。
●7● アメリカとアジア諸国の関係を、中央銀行と国民の関係に置き換えれば、中央銀行が、国民に対して経常収支赤字があるのは当然。理論的には、それを以って、ドルの通貨信用の収縮には結び付かない。
●8● ただし、不換紙幣がバブルであるという本質を考えれば、直接理論的に結びつかない根拠であっても、バブル崩壊の原因になる可能性は否定できない。既に
、ナイトの不確実性の領域に入っている。
●9● そうした根本的なドル=国際通貨時代の終焉とは別にしても、既にアメリカの不動産バブルは弾けた。不確実性の時代に利潤を生むのは、楽観的な行動であるが、不動産バブルの崩壊は、その担い手であったアメリカの失速を意味する。今後の世界経済への影響は大きい。
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●3●と●7● が非常に面白い部分でしたが、それ以外は、実は普通?
「ナイトの不確実性」の議論も、(私の理解力がないためだと思いますが)なんだか仰々しく紹介されたわりには、当たり前のことの説明にばかり使われていたような気もします。
(●7●の面白さも、実は結論にはあまり影響が無いのがつまらないですね。)
でも、●3●と●7●
に気づかせてくれたという意味では、とても勉強になった一冊でした。