結婚式と披露宴も終わり、準備作業からも解放されたので、とうとう見に行くことができました。映画「黒帯 KURO-OBI」!
(夫婦最初の映画鑑賞となりました)
巷で言われているように、確かに、シナリオ面では「オイ!」と突っ込みたくなる部分もありました(憲兵隊が空手道場を潰す理由って、そ、それ?!とか、黒帯継承して道場開くだけじゃ問題は解決しなのでは?とか)が・・・
でも、そんなの関係ねえ!
圧倒的な本格空手アクションの前に、シナリオ上のツッコミポイントなど、もはやゴミ同然でした。
それに、シナリオも基本的にはいいストーリーでした。
清濁併せ呑み、ひたすら自分の道を進む大観と、自分の空手に迷い己を見つめる義龍の対照的な姿、そして対決。対決後の大観と義龍の語らいが泣けました。
1.「大観」に本土伝統空手の神髄を見た
メイキング映像を見て期待していた 通り、中達也師範演じる「大観」のアクションが凄い!
起こりが見えない凄まじい速さの追い突きや手刀!
見るからに強烈な前蹴りや中段逆突き!
相手の打撃を外し、即座に自分の距離にしてしまう運足の妙!
演じられているアクションのはずですが、本物の技の凄みがにじみ出ていました。
ええもん見せてもらった~と大満足です。
(「大観」の追い突き@メイキング )
大画面で見るあの追い突きは迫力がありました。
大観の技の凄さは、やはり“真っ直ぐ”の速さ。
道場破りで回し蹴りが得意な空手家に、カウンターの逆突きを入れるシーンに息を飲みました。あのシーン、回し蹴り中心に戦うスタイルの空手家は、誰もがゾッとしたはずです。
<「大観、回し蹴りにカウンター」@メイキング >
左が「大観」。後屈立ちです。
右が道場破りを受けた空手家。この右の空手家は、立ち退きを命じる憲兵隊を睨み返すシーンがあるのですが、なかなかいい面構えでした。
右の空手家が回し蹴りの動作に入った瞬間に、
「大観」は前屈立ちに移行。
(一つ前の画像と比べると、その反応の素晴らしさにため息が出ます)
カウンターとなる逆突きを顔面に。
極めの瞬間、後ろ足が浮いています。
最近流行りの「高速上段突き」みたいですね。
後方に倒れる相手。
飛び方から、「大観」の逆突きの容赦ないインパクトが伺われます。受ける側が空手家だからこそ、強い当てができたんでしょうね。
* * *
(参考)「映画「黒帯 KURO-OBI」メイキングを見る 」
2.「東郷」にフルコンタクト空手への愛を見た
武術監督・西冬彦氏演じる「東郷」との対決も良かったですね。
西さんはフルコンタクト空手の経験者。中師範の協会空手と西さんのフルコン空手の違いは、対決シーンの中できっちり出ていました。
フルコン空手有段者の鈴木ゆうじ(現在は神尾佑)さん演じる「長英」が、すぐにアクションシーンからは退場してしまい、「フルコン空手の出番は悪役くらいか・・・」と思っていたので、西さん演じる「東郷」の登場には、心中拍手喝采でした。
(大観、東郷のファーストコンタクト@予告編 )
若い腕自慢の憲兵がどうしても受けられなかった大観の手刀を、さっと受け止める東郷。めちゃくちゃカッコいいシーンでした。
まず、最初の礼法。
西さんはフルコン式の十字礼、中師範は頭を下げる礼。この違いには、思わずニヤリとさせられます。この映画は、伝統空手へのリスペクトに満ちていて、その技に焦点が当てられています。しかし、この部分では、西さんのフルコン空手への愛が感じられ、フルコンを習っている人間にも嬉しいシーンでした。
(西さんが見せるフルコン空手式の前蹴上げ@メイキング )
この一瞬の映像だけで、西さんの並々ならぬフルコン空手の実力が伺えます。
そして、戦い方。
中師範の協会空手は出入りが命。同じ場所に留まっての連打はあまりなく、突きにしても蹴りにしても、間合いを操る運足に伴って一撃が繰り出されます。対して西さんのフルコン空手は、同じ場に留まりながら、上下左右に打ち分ける連打で相手を幻惑する戦術を取ります。
こうしたスタイルの異なる戦闘方法がまるでスパーリングのようにぶつかりあったのが、この「大観」対「東郷」でした。微妙に噛み合わない技の交錯が、「大観」対「東郷」をより見応えあるものにしていたと思います。
<「大観」の運足@メイキング >
東郷の蹴り足が下りる前に踏み込み。
右の逆中段突き!
蹴りを受けてからの踏み込みの速さ、そして詰めた距離の長さが流石です。受け→反撃の間に必ず足運びがあります。まさに足運びで間合いを制する空手ですね。
<「東郷」のフルコン空手風連打@メイキング >
大観(左)の中段逆突きを、東郷は左手で下段払い、
返しの右ストレート。
映画ではこの右ストレート、充分伸び切っておらず、「大観」の運足で間合いを外されているように見えましたが、コマ送りすると、しっかり顔面を捉えていますね。
そして、右ストレートのタメを使って、
左上段回し蹴り!
きれいなフォームです。
フルコン空手でよく使われるワンツー→ハイキックの変形バージョンですね。受けの後、その場から直線の突きと曲線の蹴りを出すことで相手の虚を突こうとする空手です。
「大観」の空手と異質だとよく分かります。
<その他>
(東郷の下段蹴りに対する大観の上段蹴り@メイキング )
映画でもちゃんと出てきましたね。エグく決まっていました。
とにかく、見応えのある「大観」対「東郷」でした。
DVDが出たらまたじっくり見返したいものです。
3.「義龍」に生粋の剛柔流を見た
剛柔流の八木明人館長演じる「義龍」には、本場の生粋の剛柔流の動きを見ました。
①姿勢のこと
そもそも、「義龍」だけ、他の空手家と姿勢が違いましたね。
誤解を恐れず指摘すると、「義龍」は猫背でした。
(「義龍」対「大観」@メイキング )
上のシーンもそうですが、「義龍」は、やや猫背で顔を突き出している姿勢が多く見られました。
ピンと背筋を張った「大観」たちに比べ、「義龍」がやや猫背だったのは、自分の空手のあり方に自信を持てない心の現われだったのかもしれませんが、もしかしたら、剛柔流の型が生んだ姿勢だったのでは?
剣道の影響を受けて背筋を伸ばす本土の伝統空手と違い、沖縄の空手、とくに剛柔流には、動物的な屈んだ姿勢が型に多く残されています。剛柔流と技術的に近い上地流などは、その傾向はより顕著です(下画像)。動物的にやや背を丸めた姿勢は、剛柔流にとって自然な姿勢だったのかな、などと妄想してしまいました。
(型「三十六」 http://www.youtube.com/watch?v=EdVd4sYcXOE )
剛柔流にも上地流にもある型ですが、こうして背を丸める姿勢が特徴的です。
②歩み足の外入り身
「空手に先手無し」という師・柴原英賢の教えを守り、戦わなければならない局面でも受けに徹していた「義龍」。
剛柔流の多彩な受け技を披露して楽しませてくれましたが、その中でも何回か繰り返しだされ、印象に残った受けがありました。
それが、歩み足で前に出ながら相手のアウトサイドを取る受けです。
冒頭での剣を持った憲兵隊隊長との対決と、ラストの「大観」との対決の両方で出てきました。幸い、予告編とメイキングで映されているので紹介します。
<「義龍」、外入り身で剣を受ける@予告編 >
四股立ちとなり、下段払いで剣を持つ腕を叩き、剣を打ち落とします。
動き自体は、剛柔流の型でよく見るものです。
私の知っている範囲では、「セイエンチン」が代表的でしょうか。
<セイエンチンの外入り身>
http://www.youtube.com/watch?v=BB6dqhYIkY0
(動画は剛柔流ではなく、糸東流ですが・・・)
同じ動きは、ラストの「大観」との対決でも出てきます。
<「義龍」、外入り身で前蹴りを受ける@メイキング >
対峙する「義龍」(左)と「大観」(右)。
「大観」(右)の右前蹴りに対し、
「義龍」は右足で歩み足、
「大観」の右サイドに外入り身。
冒頭の「義龍」の腕前を見せる重要なシーンと、「義龍」対「大観」の流れを変える重要シーン。この2つで登場したこの運足を伴う受け、八木館長の得意な技なのかもしれないですね。
③突きを受けての「片足タックル」
もう一つ印象に残ったのは、ラストの「義龍」対「大観」で、「義龍」が見せた「片足タックル」。相手の突きを受け、その場で屈んで、手で相手の前足を払う技です。剛柔流における正式な呼び名を知らないので、便宜上「片足タックル」と呼びますが、最後の対決では、この技が頻繁に出てきました。
あの対決の大きな転換シーンの切っ掛けにもなった技ですから、八木館長にとって、ぜひともスクリーンに映したい剛柔流の重要な技なのかもしれないなあ、と思って見ていました。
この技は、予告編にもメイキングにもないため、「義龍」の動きを再確認することが出来ないのですが、ある大家が似た技を出している動画を発見したので、紹介します。
剛柔流の大家・東恩納盛男先生が1980年代にイギリスBBC放送のドキュメンタリー番組の中で、よく似た技を出していました。
<東恩納盛男氏の「片足タックル」>
http://www.youtube.com/watch?v=YObbrB7oA2E&mode=related&search=
後方に転倒させる。
とどめの踏みつけ!
(「義龍」はここまでしてません)
打撃が交差する間合いでの投げは、「大観」も多様していました。
しかしそれらは、足払いや、入り身投げのように、相手の上半身をこちらの上半身で、相手の下半身をこちらの下半身で崩す投げ。あるいは、相手が蹴りのために上げた足を掴んでの投げ。「義龍」や東恩納盛男先生のように、普通に踏ん張っている足を、屈んで手で払うという技はお目にかかりませんでした。
それ故、この技が飛び出したときは、目を奪われました。
この技をきっかけに、立ち技から寝技に移行する「義龍」と「大観」の対決。立ち技だけでなく、相手をテイクダウンさせる技、そして転がってからも戦う技が空手にはある。それは、総合格闘技の登場とともに空手最強神話が崩壊し、自信を喪失していった空手家たちに対する、この映画のメッセージだったのかも・・・なんて思ってしまいました。
そういや、この技、大山倍達の「What is Karate?」でも紹介されているんですよね。剛柔会高段者だった大山倍達にとっても、重要な技法だったということでしょうか。見たい方は、「拳聖 大山倍達神話」(「月刊フルコンタクトKARATE」編集部、2007年)のp27をご参照ください。
④突きを受けての手刀回し打ち
空手の代名詞でありながら、現在の空手組手競技では殆ど見られることのない手技「手刀」。
その「手刀」が、最後の見せ場に使われていたのも、この映画のいい所でした。
「義龍」が「大観」の突きを凌いで放った強烈な手刀。
突きを上段受けで弾き、即座に逆手で手刀回し打ちを決めるあの動きは、剛柔流の型「セーパイ」や、首里手系の「平安」シリーズや、「クーシャンクー(観空)」など、流派を越えて空手界全体で見られる技法です。
そういう技が重要な局面で、鮮やかに使われた最高でした。
<セーパイの手刀回し打ち>
http://www.youtube.com/watch?v=2Busqy0ye4U&mode=related&search=
(→「独習セーパイ(2) 」)
ちなみに、この技も、大山倍達の「What is Karate」に紹介されています。
「拳聖 大山倍達神話」(「月刊フルコンタクトKARATE」編集部、2007年)のp37をご参照ください。
■□■□■□■□■□
ちょっと長くなりすぎました(笑)。
とにかく、技術的に見所満載の映画でした。本土伝統空手、沖縄空手、フルコンタクト空手・・・それぞれの良さを鮮やかに見せてくれた、まさに傑作空手映画です。
大手配給会社の部長の地位を投げ打って、空手ファンに素晴らしいプレゼントをしてくださった西さんには、いくら感謝してもしたりません。
西さん、ありがとうございました。
(夫婦最初の映画鑑賞となりました)
巷で言われているように、確かに、シナリオ面では「オイ!」と突っ込みたくなる部分もありました(憲兵隊が空手道場を潰す理由って、そ、それ?!とか、黒帯継承して道場開くだけじゃ問題は解決しなのでは?とか)が・・・
でも、そんなの関係ねえ!
圧倒的な本格空手アクションの前に、シナリオ上のツッコミポイントなど、もはやゴミ同然でした。
それに、シナリオも基本的にはいいストーリーでした。
清濁併せ呑み、ひたすら自分の道を進む大観と、自分の空手に迷い己を見つめる義龍の対照的な姿、そして対決。対決後の大観と義龍の語らいが泣けました。
1.「大観」に本土伝統空手の神髄を見た
メイキング映像を見て期待していた 通り、中達也師範演じる「大観」のアクションが凄い!
起こりが見えない凄まじい速さの追い突きや手刀!
見るからに強烈な前蹴りや中段逆突き!
相手の打撃を外し、即座に自分の距離にしてしまう運足の妙!
演じられているアクションのはずですが、本物の技の凄みがにじみ出ていました。
ええもん見せてもらった~と大満足です。
(「大観」の追い突き@メイキング )
大画面で見るあの追い突きは迫力がありました。
大観の技の凄さは、やはり“真っ直ぐ”の速さ。
道場破りで回し蹴りが得意な空手家に、カウンターの逆突きを入れるシーンに息を飲みました。あのシーン、回し蹴り中心に戦うスタイルの空手家は、誰もがゾッとしたはずです。
<「大観、回し蹴りにカウンター」@メイキング >
左が「大観」。後屈立ちです。
右が道場破りを受けた空手家。この右の空手家は、立ち退きを命じる憲兵隊を睨み返すシーンがあるのですが、なかなかいい面構えでした。
右の空手家が回し蹴りの動作に入った瞬間に、
「大観」は前屈立ちに移行。
(一つ前の画像と比べると、その反応の素晴らしさにため息が出ます)
極めの瞬間、後ろ足が浮いています。
最近流行りの「高速上段突き」みたいですね。
後方に倒れる相手。
飛び方から、「大観」の逆突きの容赦ないインパクトが伺われます。受ける側が空手家だからこそ、強い当てができたんでしょうね。
* * *
(参考)「映画「黒帯 KURO-OBI」メイキングを見る 」
2.「東郷」にフルコンタクト空手への愛を見た
武術監督・西冬彦氏演じる「東郷」との対決も良かったですね。
西さんはフルコンタクト空手の経験者。中師範の協会空手と西さんのフルコン空手の違いは、対決シーンの中できっちり出ていました。
フルコン空手有段者の鈴木ゆうじ(現在は神尾佑)さん演じる「長英」が、すぐにアクションシーンからは退場してしまい、「フルコン空手の出番は悪役くらいか・・・」と思っていたので、西さん演じる「東郷」の登場には、心中拍手喝采でした。
(大観、東郷のファーストコンタクト@予告編 )
若い腕自慢の憲兵がどうしても受けられなかった大観の手刀を、さっと受け止める東郷。めちゃくちゃカッコいいシーンでした。
まず、最初の礼法。
西さんはフルコン式の十字礼、中師範は頭を下げる礼。この違いには、思わずニヤリとさせられます。この映画は、伝統空手へのリスペクトに満ちていて、その技に焦点が当てられています。しかし、この部分では、西さんのフルコン空手への愛が感じられ、フルコンを習っている人間にも嬉しいシーンでした。
(西さんが見せるフルコン空手式の前蹴上げ@メイキング )
この一瞬の映像だけで、西さんの並々ならぬフルコン空手の実力が伺えます。
そして、戦い方。
中師範の協会空手は出入りが命。同じ場所に留まっての連打はあまりなく、突きにしても蹴りにしても、間合いを操る運足に伴って一撃が繰り出されます。対して西さんのフルコン空手は、同じ場に留まりながら、上下左右に打ち分ける連打で相手を幻惑する戦術を取ります。
こうしたスタイルの異なる戦闘方法がまるでスパーリングのようにぶつかりあったのが、この「大観」対「東郷」でした。微妙に噛み合わない技の交錯が、「大観」対「東郷」をより見応えあるものにしていたと思います。
<「大観」の運足@メイキング >
東郷の蹴り足が下りる前に踏み込み。
右の逆中段突き!
蹴りを受けてからの踏み込みの速さ、そして詰めた距離の長さが流石です。受け→反撃の間に必ず足運びがあります。まさに足運びで間合いを制する空手ですね。
<「東郷」のフルコン空手風連打@メイキング >
大観(左)の中段逆突きを、東郷は左手で下段払い、
返しの右ストレート。
映画ではこの右ストレート、充分伸び切っておらず、「大観」の運足で間合いを外されているように見えましたが、コマ送りすると、しっかり顔面を捉えていますね。
左上段回し蹴り!
きれいなフォームです。
フルコン空手でよく使われるワンツー→ハイキックの変形バージョンですね。受けの後、その場から直線の突きと曲線の蹴りを出すことで相手の虚を突こうとする空手です。
「大観」の空手と異質だとよく分かります。
<その他>
(東郷の下段蹴りに対する大観の上段蹴り@メイキング )
映画でもちゃんと出てきましたね。エグく決まっていました。
とにかく、見応えのある「大観」対「東郷」でした。
DVDが出たらまたじっくり見返したいものです。
3.「義龍」に生粋の剛柔流を見た
剛柔流の八木明人館長演じる「義龍」には、本場の生粋の剛柔流の動きを見ました。
①姿勢のこと
そもそも、「義龍」だけ、他の空手家と姿勢が違いましたね。
誤解を恐れず指摘すると、「義龍」は猫背でした。
(「義龍」対「大観」@メイキング )
上のシーンもそうですが、「義龍」は、やや猫背で顔を突き出している姿勢が多く見られました。
ピンと背筋を張った「大観」たちに比べ、「義龍」がやや猫背だったのは、自分の空手のあり方に自信を持てない心の現われだったのかもしれませんが、もしかしたら、剛柔流の型が生んだ姿勢だったのでは?
剣道の影響を受けて背筋を伸ばす本土の伝統空手と違い、沖縄の空手、とくに剛柔流には、動物的な屈んだ姿勢が型に多く残されています。剛柔流と技術的に近い上地流などは、その傾向はより顕著です(下画像)。動物的にやや背を丸めた姿勢は、剛柔流にとって自然な姿勢だったのかな、などと妄想してしまいました。
(型「三十六」 http://www.youtube.com/watch?v=EdVd4sYcXOE )
剛柔流にも上地流にもある型ですが、こうして背を丸める姿勢が特徴的です。
②歩み足の外入り身
「空手に先手無し」という師・柴原英賢の教えを守り、戦わなければならない局面でも受けに徹していた「義龍」。
剛柔流の多彩な受け技を披露して楽しませてくれましたが、その中でも何回か繰り返しだされ、印象に残った受けがありました。
それが、歩み足で前に出ながら相手のアウトサイドを取る受けです。
冒頭での剣を持った憲兵隊隊長との対決と、ラストの「大観」との対決の両方で出てきました。幸い、予告編とメイキングで映されているので紹介します。
<「義龍」、外入り身で剣を受ける@予告編 >
四股立ちとなり、下段払いで剣を持つ腕を叩き、剣を打ち落とします。
動き自体は、剛柔流の型でよく見るものです。
私の知っている範囲では、「セイエンチン」が代表的でしょうか。
<セイエンチンの外入り身>
http://www.youtube.com/watch?v=BB6dqhYIkY0
(動画は剛柔流ではなく、糸東流ですが・・・)
同じ動きは、ラストの「大観」との対決でも出てきます。
<「義龍」、外入り身で前蹴りを受ける@メイキング >
対峙する「義龍」(左)と「大観」(右)。
「大観」(右)の右前蹴りに対し、
「義龍」は右足で歩み足、
「大観」の右サイドに外入り身。
冒頭の「義龍」の腕前を見せる重要なシーンと、「義龍」対「大観」の流れを変える重要シーン。この2つで登場したこの運足を伴う受け、八木館長の得意な技なのかもしれないですね。
③突きを受けての「片足タックル」
もう一つ印象に残ったのは、ラストの「義龍」対「大観」で、「義龍」が見せた「片足タックル」。相手の突きを受け、その場で屈んで、手で相手の前足を払う技です。剛柔流における正式な呼び名を知らないので、便宜上「片足タックル」と呼びますが、最後の対決では、この技が頻繁に出てきました。
あの対決の大きな転換シーンの切っ掛けにもなった技ですから、八木館長にとって、ぜひともスクリーンに映したい剛柔流の重要な技なのかもしれないなあ、と思って見ていました。
この技は、予告編にもメイキングにもないため、「義龍」の動きを再確認することが出来ないのですが、ある大家が似た技を出している動画を発見したので、紹介します。
剛柔流の大家・東恩納盛男先生が1980年代にイギリスBBC放送のドキュメンタリー番組の中で、よく似た技を出していました。
<東恩納盛男氏の「片足タックル」>
http://www.youtube.com/watch?v=YObbrB7oA2E&mode=related&search=
後方に転倒させる。
とどめの踏みつけ!
(「義龍」はここまでしてません)
打撃が交差する間合いでの投げは、「大観」も多様していました。
しかしそれらは、足払いや、入り身投げのように、相手の上半身をこちらの上半身で、相手の下半身をこちらの下半身で崩す投げ。あるいは、相手が蹴りのために上げた足を掴んでの投げ。「義龍」や東恩納盛男先生のように、普通に踏ん張っている足を、屈んで手で払うという技はお目にかかりませんでした。
それ故、この技が飛び出したときは、目を奪われました。
この技をきっかけに、立ち技から寝技に移行する「義龍」と「大観」の対決。立ち技だけでなく、相手をテイクダウンさせる技、そして転がってからも戦う技が空手にはある。それは、総合格闘技の登場とともに空手最強神話が崩壊し、自信を喪失していった空手家たちに対する、この映画のメッセージだったのかも・・・なんて思ってしまいました。
そういや、この技、大山倍達の「What is Karate?」でも紹介されているんですよね。剛柔会高段者だった大山倍達にとっても、重要な技法だったということでしょうか。見たい方は、「拳聖 大山倍達神話」(「月刊フルコンタクトKARATE」編集部、2007年)のp27をご参照ください。
④突きを受けての手刀回し打ち
空手の代名詞でありながら、現在の空手組手競技では殆ど見られることのない手技「手刀」。
その「手刀」が、最後の見せ場に使われていたのも、この映画のいい所でした。
「義龍」が「大観」の突きを凌いで放った強烈な手刀。
突きを上段受けで弾き、即座に逆手で手刀回し打ちを決めるあの動きは、剛柔流の型「セーパイ」や、首里手系の「平安」シリーズや、「クーシャンクー(観空)」など、流派を越えて空手界全体で見られる技法です。
そういう技が重要な局面で、鮮やかに使われた最高でした。
<セーパイの手刀回し打ち>
http://www.youtube.com/watch?v=2Busqy0ye4U&mode=related&search=
(→「独習セーパイ(2) 」)
ちなみに、この技も、大山倍達の「What is Karate」に紹介されています。
「拳聖 大山倍達神話」(「月刊フルコンタクトKARATE」編集部、2007年)のp37をご参照ください。
■□■□■□■□■□
ちょっと長くなりすぎました(笑)。
とにかく、技術的に見所満載の映画でした。本土伝統空手、沖縄空手、フルコンタクト空手・・・それぞれの良さを鮮やかに見せてくれた、まさに傑作空手映画です。
大手配給会社の部長の地位を投げ打って、空手ファンに素晴らしいプレゼントをしてくださった西さんには、いくら感謝してもしたりません。
西さん、ありがとうございました。
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