3年間二人三脚で仕事をしてきた技術派遣社員のS君が辞めることになりました。

送別会の挨拶で、
「どんなに長時間残業したことより、はみ唐さんのスパルタ塾に耐えた自分に自信を持ちたいと思います」
と語ったS君。

そう、思えば随分厳しく「塾」で「指導」をしました。
真面目で努力家な反面抜けたところのあるS君は、大学で理科系の学科をでているのに、割り算を逆にしたり、「mol? なんですか、それ?」と言い出すトボケ屋。

その都度、お願いしたい作業の時間と同じくらい時間をかけて、数学、物理、化学教室を開いて徹底的に教えました。彼の言うスパルタ塾です。

高校でも大学でも相当勉強していなかったらしいS君ですが、素直に話を飲み込み、最後の1年は「塾」無しで仕事を頼めるくらいに成長し、何度も助けてもらいました。
しかし、この先もずっとうちでやっていくには、やはり基本的な思考力が足りないことは、彼自身が分かっていました。

辞める理由は、「長男なので地元に戻って就職しようと思って」

ところが話を聞くと、まだ地元での就職活動は始めてないとのこと。
「入りたい会社はあるんですが、募集がないんです。」
そんな彼の言葉を聞いて転職経験者として自分のノウハウを伝えたくなり、最後の「塾」を開きました。


こんなことを話しました。
募集がなくても諦める必要はない。募集していなくても自分を売り込む手段はいくらでもある。俺は募集の無い会社に対しては、履歴書とかの面接セットを全部用意してその会社の玄関まで行ってから人事部に電話したよ。
「うちはいま募集してないんだよ」と言われても「募集する時になったら見てもらえればいいんです」と言えばいい。「忙しいんだよなぁ。いつ来れるの?」と言われたらしめたもの。「いま入口に来ています」。
心ある人事マンだったら必ず会ってくれる。会ってくれたらこっちのものだ。実際俺はその手で内定をもらっている。


こんなことも話しました。
履歴書は文房具屋で買って手書きで書いてちゃだめだ。字がきれいな人なら自分の字を見せるのもアピールになるが、君は字がきれいではない。それに出来合いの履歴書は、アピールできる項目の欄が小さかったり、その逆だったりする。お勧めなのはエクセルで自分に一番合った履歴書フォーマットを作り、内容も打ち込んでおく方法。手書き履歴書よりずっと楽でアピールもしやすい。メールに添付して送ることもできる。


「面接が苦手なんです。緊張しまってハキハキ答えられないんです。」
確かに、何かを問われて即座に答えるのは彼の苦手とするところ。うつむいて目を逸らしながら考えてそのままの姿勢で答える姿を何度も見てきました。これについては、まさにコンサルのトークスキルが使えます。
「まず、必ずしも即答しなくてもよいと開き直ること。予想外のことを聞かれたら『少し考える時間を下さい』と言って目をつぶってもいい。目を合わせていると考えに集中できないからね。その代わり自分の答えがでたら、相手の目を見て話すこと。それだけで印象がまるで違う。最後に相手の目を見て答えられれば、考える時間をもらうことに心理的な負債感を持つ必要は全くない。」


他には、いままで一緒にやってきた仕事のうち、報告書が公開されているものは打ち出していつでも見せられるようにしておくこと等を伝えました。

どれだけ役に立つかは分かりませんが、せめてもの手向けです。

故郷での彼の新生活が、彼にとって幸せなものであることを。